世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)アインシャムス大学の日本語教育事情

アインシャムス大学
崖高延 足立健治

エジプト人女性講師活躍中!

アインシャムス大学では日本人講師の他にエジプト人講師も活躍中です。その数なんと16名!博士課程を修了した人もいますが、ほとんどの人は大学院で研究もしながら、アインシャムス大学で教えています。日本語教育だけなく、自らの専門を生かして、日本の歴史、政治、文学を教える人もいます。明治維新で活躍した人はだれ?尾崎紅葉が書いた小説の名前は?日本人でも難しいようなことも教えています。そして、日本語学科の講師はみんな若い!そして女性だけ。(男性は日本人だけです)講師の中には結婚して、子どもがいる人もいます。となると、家事、子育て、大学院での勉強、日本語学科での授業、日本語学科の事務仕事と本当に忙しいです。二足のわらじどころではありません。また、出産、子育てで長期休暇をとる人もいます。長期で休むとやっぱり日本語を忘れてしまい、日本語のブラッシュアップをしてから仕事に復帰する人もいます。

頑張っているエジプト人女性教師の写真
がんばっているエジプト人教師

私たち日本語専門家はそんな忙しく大変なエジプト人講師を全面的にサポートするのではなく、後ろから支える存在であろうとしています。修士論文の日本語をチェックをしたり、授業の進め方の相談に乗ったりしています。将来はエジプト人講師だけで日本語学科を運営していかなくてはならないのです。

エジプト人女性講師には本当に頭が下がります。これからも日本語を教えるだけでなくいろいろと大変ですが、がんばってください!

文化紹介/ビジターセッション

アインシャムス大学の日本語学科の学生は、大学入学試験の成績で学科を決めた人が多く、そもそも日本に興味がないという人も多いのです。そんな学生にできるだけ日本への興味を持ってもらうべく、今年度から1年生の授業に「書道」、「アニメ・マンガの日本語」など文化紹介の時間を設けました。アニメなんて見たことがないというまじめな学生には「日本語の勉強のためにアニメを見よう」というのは驚きだったようですが、学科では数少ないアニメ好きの学生からお勧めのアニメを紹介してもらい、少しずつ「アニメ」の世界に入っていく学生もいるようです。

日本人ゲストと学生たちと交流している写真
ビジターセッションの様子

また、最近ではFacebook、スマートフォンのアプリなどで、日本人の友達を作りやすくはなったものの、やはり海外の日本語学習者の不満として「教師以外の日本人と話す機会がない」というものがあります。そこで、1、2年生を対象に日本人ゲストを招いてのビジターセッションを授業に取り入れました。普段の授業では静かな学生が張り切って話して大成功するグループもあれば、準備していた内容が早々に終わってしまい、何とか知っている日本語で会話をしようと四苦八苦しているグループもありましたが、生の日本語に触れる経験は学習のモチベーション向上にもつながったようです。

楽しいビジターセッションなのですが、ふり返りの時間に「うまくいかなかったことはあるか」と尋ねても、「ありません」と即答されてしまうのが、悩みの種です。客観的に振り返るというのはやはり難しいようです。もちろん成功体験から学ぶことも多いのですが、失敗に気付かず同じ失敗を繰り返すことも多いので、たくさん失敗して、「失敗から学ぶ」ことを学んでほしいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 アインシャムス大学
Ain Shams University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
アインシャムス大学言語学部日本語学科は2000年に設立された。当大学は外国語教育としては国内で高い評価を受けており、その中でも日本語学科は優秀な学生が集まっている。日本語専門家はカリキュラム作成や現地スタッフへの指導、助言を行っている。
所在地 Abbaseiya, Cairo, Arab Republic of Egypt
国際交流基金からの派遣者数 専門家:2名
日本語講座の所属学部、
学科名称
アインシャムス大学言語学部日本語学科
日本語講座の概要
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