世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) イランの印象

テヘラン大学
松島幸男

テヘラン大学の学生とジャムシディ公園での写真
テヘラン大学の学生とジャムシディ公園で

 イランに来て1年になりました。以前もっていた中近東のイメージがだいぶ修正されて、イランについてのイメージもだいぶ変わりました。今はありのままのイランが感じられて、学生が時々もらす本音に思わずうなずいています。
 今回はそんなイランの普通の姿を書いてみたいとおもいます。
 以前私が抱いていた中近東のイメージはあやふやなもので、イランとイラクの区別もあまりつかず、やたらイスラムのイメージだけが先行した、いってみればアクのつよいものでした。
 私は授業で作文をもっていまして、なるべく学生の本音が出るようなテーマを与えてきました。あたりさわりのない作文もあれば、本音をはっきり書いてくる作文もあって興味深かったです。
 ある授業で思い切って聞いてみたことがあります。
 「みなさんは、アメリカが嫌いですか。」嫌いですと答えた学生は少数で、多くは自由で進んだ国として憧れを持っているようでした。
 「毎日お祈りをしますか。」と聞くと、なんとなく苦笑いをして、「いいえ、しません」という答えが返ってきます。特に若い人には宗教離れが進んでいるようで、昼休みにお祈りに行く学生はあまり見られません。
 先月イランでは総選挙がありましたが、選挙に行きましたかと聞くと、行きませんでした、という答えがほとんどでした。卒業してからも就職が難しいという厳しい現実に直面しなければならない学生には政治にも宗教にも興味を持てないのだろうかと考えさせられました。
 イラン人は概して親日的です。バスに乗ると外国人が珍しいのかじろじろ見られますが、
好奇心からの目で決して差別的な目ではありません。時々街頭で突然日本語で話しかけられることがあり、そういう人は以前日本で働いたことがある人です。みなさん日本は良かったと言います。機会があればまた行きたいが今は難しいとも言います。イランでは日本の柔道や空手も盛んで大きい町にはほとんど道場が開かれていると聞きます。日本は進んでいる、歴史がある、親切だ、などとよく言われます。面映い面もありますが、こういう親日的な人々の中で生活していますので、安全という点からするととても安全で、隣国と比べて格段に違います。
 日本語教育という点から見ると、卒業後の就職の問題が大きく、日系企業に就職できる学生はほとんど見られません。ですからなぜ日本語を勉強するかという動機づけが難しいのです。唯一大きな動機づけとなっているのが日本への留学です。今年は文部科学省の選別試験で3名が合格するかもしれません(現時点ではまだ結果が出ていません)。国際交流基金のプログラムでも短期の研修があり、また来年から大阪外国語大学との協定によって短期留学が始まる予定です。何とか日本とイランの関係がもっと幅広くなり、学生の日本語学習が大いに役に立つ日が来るのを願ってやみません。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
イランイスラム共和国唯一の日本語専攻コース。学生は全国各地から集まっており、優秀な学生が多い。専攻コース設立が1994年とまだ日も浅く、卒業生が日本語教育の分野で活躍するにじゅは今少し時間がかかると思われる。専門家の主な業務は通常の授業のほか、他の先生方の教授指導、カリキュラム、シラバスの作成、教材の情報、基金や大使館との連絡などである。
ロ.派遣先機関名称 テヘラン大学
University of Teheran
ハ.所在地 Jalale Ale Ahmad Ave. Tehran
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.テヘラン大学外国語学部日本語・日本文学科 外国語学部 日本語日本文学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   必修選択:1989年 専攻:1995年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1995年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
非常勤5名(内邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年32名 3年19名 4年18名
(2) 学習の主な動機 日本への興味 留学 日系企業への就職など
(3) 卒業後の主な進路 通訳 ガイド 放送局 一般企業
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度
(5) 日本への留学人数 毎年2名~3名

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