世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) イランからこんにちは

テヘラン大学 外国語学部 日本語日本文学科
松島幸男

1年前期の男子学生の写真
1年前期の男子学生

 イランに来て3年たちました。赴任したときは両隣のイラクとアフガニスタンの問題があって大丈夫だろうかと思いましたが、実際来てみて見ると聞くとでは大違いでした(今でも両隣の問題は解決したとは言えませんが)。こちらに来て生活を始めてから治安も悪くなく、ごく普通の生活ができて安心しました。

 この写真に写っているのは1年生前期の男子学生です。男子学生は卒業すると兵役が待っています。徴兵制ですからごく例外を除いては全員兵役につきます。この学生たちも卒業したら兵役につきますが、どんな気持ちになるかときくと、やはり本音はできたら行きたくないということのようです。実際兵役は2年近くかかりますから、せっかく日本語の勉強をしても忘れてしまうのが実情です。でもこれは日本語教育上の問題というより、制度的な問題ですから解決は難しいですが、イランに合った何か良い方法、兵役という義務を経ても日本語のレベルを落とさない方法はないものかと模索中です。

 イラン人は楽天的で陽気です。感情を素直に現します。車に乗っていると、けんかもよく見ます(もちろん口げんかで殴りあいではありません)し、女子学生がよく泣くのも見ます。

3年前期の女子学生の写真
3年前期の女子学生

 先々学期の期末試験のとき、どういうわけか女子学生が入れかわり立ちかわり学科室に来てはいろいろな問題を先生に訴えて泣く姿が見られました。あまりよく泣くので途中から数えてしまいましたが、試験期間の2週間で6人の学生が泣きました。6人!一日おきです。問題はさまざまです。試験の結果がわるい、先生にカンニングを疑われた、家庭の事情などなど。この写真に写っているのは3年生前期の女子学生ですが、この内の何人かは期末試験のとき、試験日を間違えて泣きながらやってきたことがあります。

 日本語教育専門家は学生に日本語を教え、教師の日本語上の問題の相談にのり、教材、カリキュラム、シラバスなどを作るということのほかに、それ以外の面でも期待され頼られることが多いです。専門家だけでなくイラン人の先生も日本人の先生も学生から問題を持ちかけられると親身になって一緒に考えます。就職先、アルバイト先(ガイドや通訳、翻訳など)を探したり、個人的な問題の相談にのったりします。こういう経験の中から教師自身も勉強し、学ぶことがあります。もう一ヶ月ほどで任期を終えますが、この期間を学生や先生たちと残された問題が一つでも解決されるようがんばりたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
イランイスラム共和国唯一の主専攻コース。学生は全国各地から集まっており、かなり質の高い学生が多く見受けられる。専攻コース設立は1994年。卒業生が日本語教育者や日本研究の分野で活躍するようになるには、もう少し時間がかかると思われる。日本語教育専門家の主な業務としては日常の授業を担当するほか、他の先生方に対して教授法の指導、カリキュラム、シラバスの作成、教材などの情報、大使館や基金のプログラムへの参加や申請手続支援などである。
ロ.派遣先機関名称 テヘラン大学
University of Teheran
ハ.所在地 North Kargar, between St. No.15 & 16. Tehran
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.テヘラン大学外国語学部
日本語・日本文学科
外国語学部 日本語日本文学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   必修選択 1989年
専攻 1994年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1995年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤1名 非常勤6名(内邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年前24名 2年前19名 3年前14名 3年後14名
(2) 学習の主な動機 日本への興味 留学希望 日本企業への就職など
(3) 卒業後の主な進路 通訳 翻訳 旅行ガイド 放送局 大使館 一般企業など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度
(5) 日本への留学人数 毎年2~3名

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