世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本とイラン:両国を結ぶ若者たち

テヘラン大学外国語学部日本語・日本文学科
近藤正憲

茶道デモンストレーションを手伝う学生たちの写真
茶道デモンストレーションを手伝う学生たち

 日本人の中にはイランが「常夏の国」だと誤解している人も多いと思う。現に私自身が日本から来たときテヘランは冬に雪が降ると聞いて驚いたことを憶えている。テヘランは東京より冬は寒く、夏は暑い。冬の雪は東京より回数・量共にはるかに多く降る。砂漠の国と思われがちなイランもカスピ海沿岸は湿潤気候で、ペルシャ湾岸は高温多湿である。考えてみれば国土が日本の4倍もあるイランが多様な気候を有するのは当たり前であるのだが、つい日本人は「イラン→砂漠の国→暑い国」と考えてしまう。

 国土の自然と同じようにイラン人も多様だ。宗教はイスラム教のシーア派が多数派だが、そればかりではなく、スンニー派もいるしキリスト教徒(アルメニア人)もいる。むかし中学や高校で習ったゾロアスター教の信徒もいる。民族、言語はさらに多様で肌が浅黒い人も白い人も、顔立ちが東洋人っぽい人もヨーロッパ人っぽい人も、トルコ語を話す人も、クルド語を話す人もいる。このような多様性を感じることができるのは、ある一定の時間その国に身を置くことのできるものならではの特権であるように思う。

最後の授業のあと羊かんの試食会の写真
最後の授業のあと羊かんの試食会

 日本にも地理的、文化的に同様な多様性がある。しかし、イランでも日本に関する情報は少なく、そのような多様性を理解してもらえるようになるにはまだまだ時間がかかるだろう。テヘランで行われる日本語関係の催しはまだ数少ない。学生たちもテヘランで行われる日本の文化的な催しをとても楽しみにしている。今後このような催しが増えることを期待したい。

 さて、日本についての情報が少ない中、テヘラン大学の日本語・日本文学科の学生たちは日々日本語学習に取り組んでいる。前回紹介した「星空」(2007年度「世界の日本語教育の現場から」イラン参照)の学生たちも活発に活動している。これまでに「星空」は5号を数え、編集メンバーたちは、今年はこれをウェブ上に載せることを考えている。内容はイランの地理や自然、話題の人物などを日本語で、日本の様々な情報をペルシャ語で紹介するというものだ。構想が大きく、自分たちが中心となって作ろうという姿勢が頼もしい。

 彼らがいつの日か、イランの多様性も、日本の多様性もわきまえた、日本とイランの架け橋になってくれる日を楽しみにしている。そして彼らが卒業した後も、「星空」が長く続くことを祈っている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
イラン・イスラム共和国唯一の主専攻コース。学生は全国各地から集まっており、かなり質の高い学生が多く見受けられる。しかし、専攻コース設立が1994年といまだに日も浅く、卒業生が日本語教育者や日本研究の分野で活躍するようになるには、今少し時間がかかるようである。日本教育専門家の主な業務は日常の授業を担当するほか、他の教師に対する教授法の指導、カリキュラム、シラバスの作成、日本での新しい教材、基金のプログラムなどに関する情報の提供、申請の補助等である。
ロ.派遣先機関名称 テヘラン大学
University of Teheran
ハ.所在地 North Kargar, between St. No.15 & 16. Tehran
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.テヘラン大学外国語学部
日本語・日本文学科
外国語学部 日本語・日本文学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1989年より選択科目。1994年より正規の学科。
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1995年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤2名(うち専門家1名)、非常勤8名(うち邦人2名)。
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生14、2年生15、3年生22、4年生22。計73名
(2) 学習の主な動機 日本への興味 留学希望 日本企業への就職
(3) 卒業後の主な進路 大学院進学、通訳、ガイド、放送局、一般企業など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級受験可能な程度
(5) 日本への留学人数 年1~3名程度

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