世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 「教育は力」を目指して

ケニヤッタ大学外国語学部
中込達哉

ケニヤッタ大学正門付近の写真
ケニヤッタ大学 正門付近

 ナイロビから北東に20キロほど行くと、広大なケニヤッタ大学が現れる。正門をくぐると “ELIMU NI NGUVU” の文字が見える。大学のモットー「教育は力」である。

 ケニヤッタ大学の日本語コースは選択科目であり、様々な学部の学生が履修している。期間は二学期間、一年完結の初級コースである。赴任してからの二年間、「教科書シラバスに沿って、担当授業間のシラバス連携を深め、ケニアについて日本語で発信できる」コースを三名のケニア人教師と共に策定してきた。2006年12月からナイロビで始まった日本語能力試験(以下、能検)では、少数ではあるが、4級や3級に合格する学生も出始めている。

 2007年からは、市内のストラスモア大学でもカリキュラムデザインを担当し、邦人教師と共に授業も受け持っている。ICTと商業という二学部からなる小さな私大であるが、2008年5月には、ホスピタリティー学部も新設された。現在、新学部での日本語教育も検討中である。同大学では、日本政府の文化無償資金協力で設置されたコンピュータラボを活用し、ワードやパワーポイントでのケニア紹介も授業に取り入れている。

 ケニアでは、2008年5月現在、四つの高等教育機関、そして六つの民間観光専門学校で初級日本語が教えられている。高等教育機関では、邦人日本語教師とケニア人教師がチームを組んで教える場合が多いが、民間観光専門学校では一校を除き、すべてがケニア人教師により教えられている。

 日本語教師たちの連携と協働を促進するため、2001年にケニア日本語教師会(JALTAK : Japanese Language Teacher Association - Kenya)が組織された。2008年5月現在、二十名ほどの教師がメンバーとなっており、スピーチコンテストや能検の実施に向けて検討を重ねている。組織としての教師会の課題は、企画やイベントを実施していく組織力の獲得である。月例会では、具体的に実行するためのプロセスの確認、TO DOリスト作成、責任の所在確認など、一歩一歩ではあるが、協働・支援体制を整えている。

JALTAK教師セミナー(上級)(在ケニア日本大使館広報文化センター)の写真
JALTAK教師セミナー(上級) 
在ケニア日本大使館広報文化センター

ケニア日本語教育の喫緊の課題は、何よりも「教師の日本語運用力と教授力」の向上である。その支援策として、赴任時の2006年から週に一度、在ケニア日本大使館広報文化センターで教師セミナーを開催している。2008年4月からは、1級を目指す教師のための教師セミナー(上級)も実施している。同セミナーには、海外青年協力隊日本語教師や在留邦人ボランティア教師にも参加して頂き、双方が学べる良い機会となっている。

 ケニアの学習者たちは、就職の一助になればという「夢」や「希望」を抱き、日本語を始めるものが多い。しかし、現実は甘くはない。それでも、少しでもチャンスに繋がるのなら、希望を持ってやってみるのが彼らの流儀である。彼らが希求する「夢」や「希望」を育み、彼らの未来に「光」を当て、「教育は力」に繋がる日本語教育を、ケニアの日本語教師たちと共に築いていきたい。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
国立ケニヤッタ大学は、ケニア唯一の教員養成のための国立大学である。その外国語学部が提供する選択外国語科目の一つとして日本語コースが存在する。(フランス語、ドイツ語はディグリーコースとして専門科目)専門家に期待される業務は、コースデザイン、現地教師への指導、授業。(ケニヤッタ大学以外にストラスモア大学でもコース担当)
ロ.派遣先機関名称 国立ケニヤッタ大学 外国語学部
Kenyatta University Foreign Languages Department
ハ.所在地 P.O.Box 43844 00100 Nairobi Kenya
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
国立ケニヤッタ大学 外国語学部
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2004年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2006年
(ロ)コース種別
選択
(ハ)現地教授スタッフ
常勤2名、非常勤1名(全員ケニア人講師)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   選択科目 初級I30名・初級II10名
(2) 学習の主な動機 日本への憧れ・就職活動の際のアピール・無償提供コースのため
(3) 卒業後の主な進路 小中高教職員、企業等
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
能力試験4級受験レベル程度
(5) 日本への留学人数 1名(国際交流基金 大学生研修)

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