世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ケニア発日本語教育に向けて

ケニヤッタ大学
蟻末 淳

 ケニアの国立大学で唯一日本語が教えられているケニヤッタ大学は、首都ナイロビの郊外約20キロメートルにあります。発展が続くナイロビは交通渋滞がひどく、街中からの通勤には、普通でも1時間、時には2時間以上かかります。

ケニヤッタ大学のキャンパスは広大で緑が多いの写真
ケニヤッタ大学のキャンパスは広大で緑が多い

 サブサハラ地区では唯一の日本語能力試験の実施が2006年から始まるなど、ケニアは、アフリカ大陸では日本語教育が進んでいる国ではありますが、それでも学習者は1000名ほど。そのほとんどが入門から初級レベルです。高等教育10校、初・中等教育8校を含めた28の学校で日本語が教えられており、高等教育の一部を除き、ほとんどが現地ケニア人教員が教鞭をとっています。

 日本語専門家の第一の任務は、ケニヤッタ大学での日本語の授業です。授業開始時には100名を越える学習者で、教室は満員になりますが、大学の管理体制が十分ではなく、授業時間が他の授業と重なることが度々あります。そのため、学生数はどんどん減少し、最終的に試験を受ける学生は半分ほどになります。何とか、学生と授業時間を交渉しながら空き時間を見付けようとするのですが、全員の希望を聞くことは難しい状態です。

 ケニアでは成績が進路に大きな影響を及ぼします。学校教育はまだまだ詰め込み式のようで、主に日本語のみで進めていく直接法をベースとした授業には、初めは学生も戸惑いを覚えているようでした。また、控え目な彼らの性格も影響しているのか、受け身の大人しい時間が続きました。しかし、慣れてくると、学生の発言も増え、時々授業が脱線するほど。特に恋愛の話題になると、みんな、わいわいとケニアの恋愛事情を教えてくれました。クラスの中のうわさ話から、ケニアでの恋愛のテクニックまで。女性を誘うときの、バラの花束とチョコレートの贈り物、ワインつきのディナーはわかるのですが、呪術師(?)の惚れ薬を紹介されたときには驚きました。

 街を走る車のほとんどが日本車だということもあるのか、日本への興味は主に経済成長期を思わせるものが多いのですが、少しずつアニメなどのポップカルチャーもインターネットを通じて入ってきているようです。ある女子学生はキラキラ目を輝かせながら日本のアイドルのことを話してくれました。続いて、日本に行って素敵な男性と結婚する夢を熱く語ってくれたのですが……彼女の幸運を祈っています。

料理を楽しむ学生達の写真
料理を楽しむ学生達

 ケニア人は一般的に保守的と言われています。食事なども、民族によっては全く魚を食べなかったりするようです。しかし、日本語を学習する学生は好奇心旺盛。学生の要望によって開いた料理会では、納豆やタコなどもぺろりと美味しそうに食べていました。ナイロビは日本食レストランもいくつかある都会ですが、学生にとってはやはり中々行くことができません。こういった機会を作ることも日本語教師としての重要な役割の一つです。

 また、ケニアでの専門家の任務はケニヤッタ大学のみならず、ケニア全体の日本語教育を支援することです。2001年に創立された、ケニア日本語教師会(JALTAK)が、ケニアの日本語教育の中核を担っています。今年度は、例年行われている日本語弁論大会、日本語能力試験に加え、日本から講師を招き、セミナーを開催しました。ケニアではこのような機会があまりなく、ケニア人、日本人教員共に大変いい勉強になりました。また、情報交換、情報発信のため、メーリングリストの作成、簡易サイトの開設に加え、会報第一号を三月に発行しました。

 ケニアの日本語教育も、これからはアウトプットの時代。大学の制度など色々な問題もありますが、どんどん現地教員、ITやポップカルチャーに親しんでいる若い世代と共に、サブサハラの日本語教育の中心の役割を、ケニアが担っていくことを期待しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Kenyatta University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ケニヤッタ大学は現在、ケニアで日本語クラスのある唯一の国立大学である。2004年から日本語の授業が開講、現在は自由選択科目であるが、将来の学士課程の創設が予定されている。専門家は同大学の日本語講座の日本語教授の他、ケニア全体の日本語教育に関する様々な業務を担当する。具体的には、日本大使館広報文化センターでの給費留学生に対する特別講座、カリキュラム・教材作成などに関する助言、上級日本語講座や教授法講座、セミナーなどの現地教師の育成・支援の他、弁論大会、日本語能力試験、などを運営するケニア日本語教師会の支援や、その広報など、業務は多岐に渡る。
所在地 P.O.Box 43844-00100 Nairobi Kenya
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
ケニヤッタ大学人文社会学部外国語学科
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2004年から
国際交流基金からの派遣開始年 2006年
コース種別
選択
現地教授スタッフ
常勤3名(うち邦人1名)
学生の履修状況
履修者の内訳   選択で150名
学習の主な動機 日本への憧れ・就職に有利なため
卒業後の主な進路 教員・企業他
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定試験N5受験程度
日本への留学人数 毎年1名程度

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