世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) はるか遠い東アフリカの日本語教育のために

ケニア国立ケニヤッタ大学
蟻末 淳

 ケニアでの日本語専門家の業務は多岐に渡ります。派遣先のケニヤッタ大学での講義の他にも、日本国大使館日本広報文化センター並びにJALTAK(ケニア日本語教師会)との協力による業務が多数あります。従来の日本語弁論大会やJLPT(日本語能力試験)に加え2012年から始まったケニア日本語教育会議の運営も重要な業務の一つです。それに伴ない、ケニアのみならず、東アフリカ全体の日本語教育のネットワーク作りやアドバイザー業務も行っています。

東アフリカ日本語教育視察

マダガスカルの先生のケニア出張授業の写真マダガスカルの先生のケニア出張授業

 2012年5月末から7月中旬にかけて、東アフリカで日本語教育を実施しているタンザニア・エチオピア・マダガスカル・ウガンダに出張し、現地視察及び関係者との打ち合わせを行いました。

 ほとんどの国では、国外の日本語教育関係者が来るのは初めてであり、大変有意義な訪問となりました。日本語教育に関する現状や問題点に関する教員からのヒアリングや授業見学のみならず、大学関係者及び在外公館文化担当の方との面談なども行い、今後の国境を越えた相互協力を約束いたしました。また、授業に参加し学習者と交流する他、マダガスカルでは日本語教授法セミナーなども行いました。

 ウガンダでは、その後、日本語教育の休止という残念な結果になりましたが、マダガスカルでは今年度から、サブサハラアフリカではケニアに次いで二国目の日本語能力試験が開始されるなど、今後の東アフリカの日本語教育の益々の発展が期待されます。

ケニア日本語教育会議開催

第一回ケニア日本語教育会議参加者の写真第一回ケニア日本語教育会議参加者

 東アフリカ日本語教育視察の目的の一つが、同年8月に開催された第一回ケニア日本語教育会議の準備でした。

 東アフリカでは、各国の現地教員、JICA派遣の邦人教員、日本からその他の形で来ている邦人教員、現地に長期間滞在している邦人教員など、様々な教員が教鞭をとっています。ケニアやマダガスカルのように複数の機関で日本語が教えられている国には教師会は存在しているのですが、東アフリカにおいて、教師会同士、もしくは、個人を繋ぐ広域なネットワークはこれまで存在していませんでした。また、日本やその他日本語教育が盛んな国々から遠く離れているため、情報も少なく、セミナーなどに参加することも日本から専門家を呼ぶこともなかなかできないという孤立した状況が続いていました。

 そのような環境で試行錯誤する日本語教師が、年に一度だけでも顔を合わせ、日本他の一流の専門家を交えて交流するために、ケニア日本語教育会議が企画されました。

 何人が参加してくれるのだろう、という不安の中で準備を進めていきましたが、視察の効果もあり、マダガスカル、エチオピア、ウガンダ、そして、ケニアの参加者に日本、エジプトからの邦人講師を加え、参加人数は総勢24名を数えました。

 二日に渡る会議は、基調講演の他にワークショップが一つ、八本の研究・実践発表に加え、各国の日本語教育事情では上述の参加各国の報告の他、タンザニア・スーダンの代読での報告もあり、大変充実した内容になりました。特に、会議の最後を締め括る討論会では、様々な各国の状況を踏まえて東アフリカの日本語教育をどう考えていくか、が熱く議論されました。

 これらの講演、発表、討論会の内容は、近く、報告集として発行する予定ですが、今後の東アフリカ、ひいては日本語教育「発展途上国」の日本語教育に大いに寄与するものと期待しています。

東アフリカ日本語教育会議

 私は、この原稿を書きながら、2013年7月開催の第一回東アフリカ日本語教育会議(第二回ケニア日本語教育会議)を準備しています。ケニア以外の東アフリカの国にも、将来はこの会議を開催して欲しい、そんな思いを込めて、「東アフリカ」という名前を付けました。

 既に前回を越える25名の参加申し込みがあり、ケニア、マダガスカル、エチオピア、タンザニア、スーダンの東アフリカ諸国の他、日本、アメリカ、エジプト、スイスと、様々な国の方が参加してくださいます。参加者の皆さんが、東アフリカの日本語教育にたくさんのものをもたらし、そして、それと同じだけのものを自分の国に持って帰ってくれる、そんな三日間にしたいと思っています。

はるか遠いアフリカで

 これを書いている今、日本ではTICAD(アフリカ開発会議)が開催されています。これを機会に、日本とアフリカの距離がもう少し縮まってほしいと切に願っています。日本から見てアフリカが遠いように、アフリカから日本は遠いのです。でも、はるか遠いアフリカで、日本に憧れて日本語を勉強し、日本のマンガやアニメを楽しんで、たこ焼きを食べたい、富士山を見てみたい、と笑いながら、日本語で話す人がいる。そんな、私にとってのごく「普通の日常」がケニア、東アフリカでずっと続いてほしい。それがこの地で日本語教育に携わった者のささやかな願いです。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Kenyatta University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国立ケニヤッタ大学では2004年から日本語の授業が開始、現在は自由選択科目とCertificateコースが開講されている。主専攻・副専攻のカリキュラムが承認され、副専攻の学生を募集、来期からの開講が期待されている他、将来は主専攻の創設も予定されている。専門家は同大学の日本語講座の他、ケニアの日本語教育に関する様々な業務を担当する。日本国大使館広報文化センターでの国費留学生への特別講座、カリキュラム・教材作成などに関する助言、上級日本語講座や教授法講座などの他、弁論大会、日本語能力試験、ケニア日本語教育会議などを運営するケニア日本語教師会の支援や広報など、業務は多岐に渡る。
所在地 P.O.Box 43844-00100 Nairobi Kenya
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
ケニヤッタ大学人文社会学部外国語学科
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2004年
国際交流基金からの派遣開始年 2006年
コース種別
選択・Certificate・副専攻(未開講)
現地教授スタッフ
常勤2名(うち邦人0名)
学生の履修状況
履修者の内訳   選択約40名・Certificate1名
学習の主な動機 就職への期待・日本語への興味・日本の技術・経済・文化への関心
卒業後の主な進路 教員・企業他
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定試験N5を受験可能な程度
日本への留学人数 毎年2名程度

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