世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 「お~ ヤバーニ!」

キング・サウード大学
水谷梢太

 サウジアラビアと聞いて誰もが思い浮かべるもの… それは、おそらく石油、砂漠、そして、ラクダだろう。 また、イスラーム教の聖地メッカのあるこの国は、イスラーム教の戒律が厳格に守られていることでもよく知られている。 イスラーム教の戒律がとても厳しいと聞いていたので、赴任前は心のどこかで“厳しい人“がたくさんいるイメージを抱いていた。リヤドの空港に到着すると、そこは真っ白なトーブ(サウジアラビアの男性用民族衣装)に白と赤のシュマーグ(スカーフ)をかぶった男性と真っ黒なアバヤ(女性用の民族衣装)に身を包んだ女性であふれている。 一見しただけでは、この国と日本は全く結びつかないように思われるかもしれない。 しかし、出身を聞かれ、「日本人」と答えると、「お~ ヤバーニ(日本人)!」と満面の笑みで迎えられる。 そして、「日本の車は最高だ!」、「日本の電気製品は本当にいい!」とすごい勢いで褒めたたえられる。 想像とは全く違うサウジアラビアがここにはあるのだ。

日本の伝統玩具を紹介の写真
日本の伝統玩具を紹介
(ジャパン・デーにて)

 在サウジアラビア日本国大使館主催の日本を紹介するイベント、「ジャパン・デー」には毎回大変多くの人々が訪れ、本当に驚いた。 独学で日本語を勉強していて、日本語であいさつしてくれる人も数多くいた。 大学の研究室にいても、ときどき他学科の学生が「この表現をアニメで聞いたんですが、英語で言うと何ですか。」といったような質問にやってくる。 また、昨年のラマダーン中に日本の文化を紹介する番組が放送され、それも大きな話題になった。 学生たちから話を聞いても、家族や親せきを大切にすること、目上の人を敬うことなど、イスラームと日本の伝統的な考え方の共通点は数多くある。 番組内では、それをしっかり実践しながら発展を遂げた国として日本が紹介され、日本人気がさらに高まったように感じる。 日本に対する人気がこのように高い一方で、湾岸諸国において日本語を専攻できる大学は、ここキング・サウード大学一つだけである。 ここ数年、大学の方針で縮小傾向にあった日本語専攻課程も来年度から新入生の入学再開が決定し、さらなる飛躍が期待されている。

キングサウード大学の学生たちの写真
漢字は難しい…
(キングサウード大学の学生たち)

 この国には大学の専攻に限らず、まだまだ多くの日本語学習希望者がいるのだが、それを受け入れるだけの体制が整っていないとも言える。 教師不足もその一因であり、サウジ人日本語教師を育てていくことが、日本語専攻課程における大きな使命の一つである。 現在、在学中に日本に留学していた卒業生の一人が助手として採用されており、サウジ人日本語教師の卵として経験を積み、力をつけていっている。 今後も引き続き大学における日本語教育のさらなる充実を図るとともに、将来的にサウジアラビアの日本語教育を支えていけるような人材の育成を行い、広がりつつある日本語教育のニーズに応えていける環境作りに努めていきたい。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 キング・サウード大学
King Saud University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
キング・サウード大学は、1994年に言語翻訳学部に日本語講座が開設された。今のところ湾岸諸国の中で唯一、日本語専攻の学士号が取得できる教育機関であることから、湾岸諸国、ひいてはアラブ諸国における日本語教育の中核を担う役割を期待されている。また、同大学日本語講座は、言語翻訳学部の中に位置づけられていることから、日本語を通して全般的な日本理解を深めるというよりは、翻訳や通訳など実務的な人材育成を主眼としていることも特徴のひとつである。日本語教育専門家は日本語講座での日本語授業担当、カリキュラム・教材作成に対する助言を行う。
所在地 P.O.Box 87907, Riyadh 11652, Kingdom of Saudi Arabia
国際交流基金からの派遣者数 専門家: 1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
言語翻訳学部 アジア言語学科 日本語専攻課程
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   日本語コース: 1994年 / 専攻: 1993年
国際交流基金からの派遣開始年 1993年
コース種別
専攻(学士号5年、ディプロマ3年)
現地教授スタッフ
常勤2名(邦人1名、エジプト人1名) 助手1名(サウジ人)
学生の履修状況
履修者の内訳   第1-第10レベル 全8名
学習の主な動機 日本への憧れ、アニメ、留学、日系企業への就職
卒業後の主な進路 日系企業就職、一般企業就職
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級ー3級程度
日本への留学人数 1名

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