世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) サウジアラビアと日本をつなぐ人材育成

キング・サウード大学
水谷梢太

 キング・サウード大学の日本語専攻は1993年に始まり、現在でも日本語専攻の学士号が取得できる湾岸諸国唯一の教育機関です。 しかしながら、サウジアラビアで日本語を教えていると聞いても、ピンと来る人はおそらく少ないでしょう。 世界のだいたいどこの国にでも行ける日本人でさえ基本的に観光で入国できないこともあって、「この前サウジアラビアに行ってきたけど、写真見る?」というような会話を普段聞くことはありません。 また、イスラーム教の戒律が厳しいということは知っていても、実際はどんな国なのか、サウジアラビアの人たちがどんな人たちなのかということまで知っている人は、少ないのではないでしょうか。 また、知らないだけではなく、イスラーム教とテロリストを結び付けて考えているような人も残念ながら世界にはいます。 このようなイメージを打ち砕いていくためにも、サウジアラビアの本当の姿をサウジアラビア人自らが伝えていく必要があると思うのです。

国立博物館を案内しようの写真
国立博物館を案内しよう!

 初めて会った外国人が日本語で挨拶をしてくれただけでも何だかうれしくなるものですが、流暢に日本語を話す外国人に出身地を尋ね、「サウジアラビアです。」という答えが返ってきたら、どうでしょうか。 その人が自国のさまざまなことを日本語で説明できたら、どうでしょうか。 それだけでサウジアラビアに対するイメージが少し変わるのではないでしょうか。

 「つまらないものですが…」と言っても、本当につまらないものを贈り物として持っていくことはないように、背景にある文化や習慣を知らなければ、その言語を本当に理解し、使用することはできません。ある言語を理解するためには、その国の文化や習慣を同時に学ぶ必要があるのです。 日本語専攻課程のカリキュラムの中には「日本語文化読解」という科目があり、その授業の中では、日本人の「ちょっと…」の使い方やどちらとも取れるような曖昧な返事についてなどを取り扱い、日本人がなぜそのような言い方をするのかも話し合ったりしました。 このように相手の国の文化や習慣を知ったうえで、自分の国のことを日本語で伝えられるようになれば、さらに深い人間関係を築いていくことができるでしょう。

ジャナドリーア祭の会場にての写真
みんな日本が大好き!
ジャナドリーア祭の会場にて

 4月に開催されたジャナドリーア祭(サウジアラビアの伝統・文化を引き継いでいくために年に一度開催されている唯一の国民的文化祭典)では、今回日本がゲスト国に選ばれ、日本館では日本語専攻課程の学生や卒業生たちが日本語や日本に関する知識を生かし活躍していました。 また、駐日サウジアラビア王国大使館で働いている卒業生もいます。 このようにサウジアラビアと日本をつないでいく人材を育てていくことが、キング・サウード大学・日本語専攻課程の大きな役割の一つだと私は考えています。 私たちの次の目標は、サウジアラビア人日本語教師を育てていくことです。 現地人の日本語教師が育っていけば、この国の日本語教育はさらに大きく変わっていくことでしょう。大学の意向で5年間停止していた新入生の入学も来セメスターから再開される予定で、現在はカリキュラム再編も行っています。 これからさらに充実した環境で日本語教育を行い、サウジアラビアと日本の距離を縮めていってくれるような人材をより多く育てていくことができれば何よりです。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
King Saud University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
キング・サウード大学では、1994年に言語翻訳学部に日本語専攻課程が開設された。今のところ湾岸諸国の中で唯一、日本語専攻の学士号が取得できる教育機関であることから、湾岸諸国、ひいてはアラブ諸国における日本語教育の中核を担う役割を期待されている。また、同大学日本語専攻は、言語翻訳学部の中に位置づけられていることから、日本語を通して全般的な日本理解を深めるというよりは、翻訳や通訳など実務的な人材育成を主眼としていることも特徴のひとつである。日本語教育専門家は日本語講座での日本語授業担当、カリキュラム・教材作成に対する助言を行う。
所在地 P.O.Box 87907, Riyadh 11652, Kingdom of Saudi Arabia
国際交流基金からの派遣者数 専門家: 1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
言語翻訳学部 アジア言語学科 日本語専攻課程
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   専攻:1993年から
コース:1994年から
国際交流基金からの派遣開始年 1993年
コース種別
専攻(学士号5年、ディプロマ3年)
現地教授スタッフ
常勤2名(邦人1名、エジプト人1名)
学生の履修状況
履修者の内訳   第1-第10レベル 全3名
学習の主な動機 日本への憧れ、アニメ、留学、日系企業への就職
卒業後の主な進路 日系企業就職、一般企業就職 大使館勤務等
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験 N2~N4
日本への留学人数 1名

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