世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) シリアアラブ共和国 ダマスカス大学文学部日本語学科(2004)

ダマスカス大学
小部玲子

教室
文部省試験風景

ダマスカス大学日本語学科は2002年9月に開講し、二年目がそろそろ終わろうとしています。

 

シリアには今まで日本語学科を持つ大学がありませんでしたから、この国で
最初のそして唯一の日本語学科ということで人々の関心も高く、入学希望者からの問い合わせや相談も頻繁にあります。しかし、当学科のスタッフは教員は私一人、他に助手が一人いるだけですから、週20時間の日本語の授業を複数学年開講することは不可能で、今年度は新入生を入学させることはできませんでした。今年度は2年生一学年だけという、四年制大学の学部の学科としては変則的な状態になってしまいました。

文学部の建物に教員室や教室がもらえないため、大学からの連絡が届かなかったり、外から来た方々に学科なのか一般講座なのかをなかなか理解してもらえなかったりといった不便もあります。私が赴任してから1年の間に学科責任者(授業は担当しない)が次々と代わり、現在は三代目ですが、この方が日本語学科の運営に関して大変に意欲的で、大学と積極的に交渉してくれるので、赴任当初の「専門家一人で何もかもやる」といった状況からは抜け出すことができました。学科責任者は別の学部の教授なので、連絡をとった時にしか学科に来ませんが、学科責任者・助手・派遣専門家の三人で協力し合って学科を運営しています。

シリアの日本語教師は国際交流基金から派遣されている私の派遣の私のほかに、JICAの青年協力隊員が3名、専門は違いますがボランティアで日本語を教えている日本人の方が2名一般講座で教えているだけで、シリア人の教師は一人もいません。ですから、それぞれの授業以外の活動は弁論大会が精一杯といった状態で、しかも、本来は現地の先生の支援という立場であるはずですが、大使館の担当官をはじめとし日本人だけで運営しているという状況です。

日本語学科のカリキュラムは高等教育省の認可を受けたものであり、それは変更不可能ですが、実際には学生の要望や私自身の意図で柔軟に授業をしています。しかし、なにぶんにも国内にはほかに日本語学科はなく、当学科に教員は私一人という状況では他を参考にしたり相談したりすることもできないので、授業内容や進度、方法ははたしてこれでいいのだろうか、「柔軟」過ぎるのではないだろうかと不安になることもあります。

学生は大変意欲的で、教える立場としてはやりがいのある機関です。授業の準備や教材作成に追われて、学生が誘ってくれるピクニックなどにも行く余裕はありませんが、明るく楽しく、そして熱心に勉強する学生のために、できるだけの努力をしています。

 

日本語に対する関心や入学希望者の要望に応えるためにも、教員を増やし、学生を受け入れられる体制を整え、学科を充実させていくことが今後の課題だと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
シリアで最初の、また唯一の高等日本語教育機関。本大学の日本語の一般講座が無期限休止となっていたが、今年2月にJICAから教員が1名派遣され、再開した。専門家は授業、学科事務等の運営全般を担当するほか、外部から持ち込まれる日本・日本語関係の要求・質問に対応することが要求される。手に余るものは大使館や理工系で日本に留学経験のある人にお願いしているが、だれでも入ってこられる、気軽に行けるという大学の性質上、「日本の窓口」の役割はこれからも続くものと思われる。
ロ.派遣先機関名称 ダマスカス大学
Damascus University
ハ.所在地 Mezzeh, Damascu
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
Department of Japanese Language, Faculty of Literature
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2002年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 2002年
(ロ)コース種別
日本語専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤0名、非常勤0名
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   2年生 22名
(2) 学習の主な動機 日本への憧れ、日本語教師・翻訳者・通訳希望
(3) 卒業後の主な進路 昨年開講したので卒業生なし
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
不明
(5) 日本への留学人数 0名

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