世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 待望の第2期生入学!

ダマスカス大学
中堂暁美(日本語教育専門家)、 
内藤真理子(ジュニア専門家)

第2期生2006年春の写真
第2期生 2006年春

 2005年度はダマスカス大学日本語学科にとって、学科を開講した2002年度に次ぐ記念すべき年となりました。当学科は2002年9月に開講されましたが、教員・教室不足のため、第2期生の募集を2年間見送らねばなりませんでした。しかし、2005年秋に2名の教員を迎えて教員4名体制となり、その上大学から学科専用の教室も新たに一つもらうことができたため、開講以来の懸案であり、悲願でもあった待望の第2期生を受け入れることができました。そして、今秋にはシリア日本語教育界の金の卵である日本語学科卒業生をいよいよ送り出すことになりました。増えたといっても、教員数4名、教室2つだけであり、前途洋々とはいえない状況ではありますが、着実に一歩一歩前進しているところです。

 ダマスカス大学人文学部には、日本語学科以外に英語学科・フランス語学科などがあるのですが、学生の話によると、これらの学科の学生は大学の授業にあまり出なくとも卒業ができるそうです。一方、日本語学科の学生は出欠・遅刻・早退を厳しくチェックされ、宿題は毎日出され、テストも毎週あるので、人文学部の他学科の学生生活とは全く異なった生活を送っています。このため、学生から「先生、他の学科の学生はもっと楽です」という話を学生からよく言われます。「何をしに大学に入ったんですか?4年間在籍して、日本人と意思疎通ができなかったら恥ずかしいでしょう?」と諌めていますが、それでも、「本当にこれでいいのだろうか。日本語を使う仕事がほとんどない国なのだから、こんなに厳しくする必要はないのではないだろうか。」と自問することもありました。しかし、卒業を目前に控えた学生から、「日本語が大好きなので、これからも勉強を続けたい」「日本語学科ではいろいろな行事に参加することができて、とても楽しかった。」「日本語学科は人数が少なく、毎日来なければならなかったので、同級生みんなと兄弟姉妹のように仲良くなれてよかった。」「日本人と話をすることで、異文サを体験することができた。」などの話を聞き、胸のつかえをおろすことができました。

 日本語学科では、青年海外協力隊やゴラン高原に駐留している自衛官の方などをお招きしてお話を聞いたり、遠足に行ったり、日本フェアに参加したりなどの行事を行っていますが、最大の行事は何といっても弁論大会です。通常は日本語学科という狭い世界でしか日本語を使うことがない学生が、家族・友人・在留邦人に日頃の努力の成果を披露し、そして他機関の日本語学習者とスピーチを競い合うとても良い機会です。シリアには、当学科以外に、ダマスカス大学日本研究センター、アレッポ大学学術交流日本センターの2つの日本語教育機関があります。弁論大会では、この3機関の日本語学習者が集まり、初級朗読部門・初級弁論部門・中級弁論部門に分かれて発表をしました。アレッポの学生はバスで片道5時間の距離を移動しなければならず、また、仕事のある在留邦人に審査員をお願いすることなどから、弁論大会は夕方に行われます。このため、時間の制限があり、そして必然的に参加できる人数も限られてきてしまいます。在シリア日本語教師会の教員全員で、計算機を片手にできるだけ学生を参加させようと時間配分を工夫したのですが、それでも参加希望者全員を出場させることができず、涙を呑んだ学生烽「ました。

弁論大会にて2005年冬の写真
弁論大会にて 2005年冬

 弁論大会本番では、出場者の緊張した顔を見て、我々教員も緊張してしまいました。ステージに上がってスピーチをする学生の一人が、いつも上手に発音できない部分をうまく言えたとき、我々が客席から彼に向かって大きくうなずくと、その学生がスピーチ中にもかかわらず、思わず「はい」と言ってしまうという椿事もありました。後日、入賞した学生から、4年間で一番心に残っていることは、授賞式でとても嬉しそうな顔をしている我々教員とご両親の顔を見たことだという話を聞き、開催してよかったと心から思うことができました。

 今年の秋には第1期生が卒業します。しかし、シリアの日本語教育を背負って立つにはまだまだ日本語能力が不足していると言わざるを得ません。道のりは長いですが、いつか1~4年の全ての学年が揃い、そしてシリア人日本語教師だけで学科運営ができる日が来ることを目標に、今後は学科の学生指導のみならず、日本語教師を目指す卒業生の指導、そして学科在籍の学生たちが高い動機を持ち続けられるように、日本語を使った就職先の開拓などもしていきたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
2002年9月、シリア最大の総合国立大学に国内初の日本語専攻学科として開設された。日本語を使って仕事ができる人材の育成のみでなく、将来的にはシリアの日本語教育を担う人材を育てることを期待されている。専門家は、授業担当、学科事務等、学科長(工学部助教授)と協議しつつ、実質的な学科運営を行う。
ロ.派遣先機関名称 ダマスカス大学
Damascus University
ハ.所在地 Mezzeh, Damascus, Syrian Arab Republic
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家1名
ジュニア専門家1名
指導助手:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
ダマスカス大学人文学部日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2002年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2002年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人4名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   4年生:18名
1年生:19名
(2) 学習の主な動機 「日系企業への就職希望」「日本語教師希望」「留学」
(3) 卒業後の主な進路 卒業生なし
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
「日本語能力試験2級合格」が目標
(5) 日本への留学人数 1名

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