世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 初のシリア人日本語教官誕生!

ダマスカス大学人文学部
中堂暁美(日本語教育専門家)、内藤真理子(ジュニア専門家)

初のシリア人教官を囲む学生たちの写真
初のシリア人教官を囲む学生たち

 日本語学科は2002年秋、シリア初の専門日本語教育機関として設立されました。1期生募集後、スタッフ不足で2年間新入生の募集ができませんでしたが、2004年秋2期生が募集され、その後は順調に新入生募集を行っています。

 2006―07年度は、2期生を募集した昨年度同様、日本語学科にとって記念すべき年になりました。2006年夏卒業の1期生の中から、待望のシリア人日本語教官が誕生したのです。大学の制度上複数名を採用することができず、1名のみの採用ではありましたが、外国人教官だけが教えている学科から、シリア人教官が活躍する学科に一歩近づくことになりました。

 初のシリア人教官は、卒業したばかりの若い女性教官。しかも、彼女は国際交流基金国際関西センターで6週間の日本語研修(日本語学習者訪日研修-大学生)を受けたのみで、長期日本留学の経験はありません。9月半ば、初めての授業に臨む彼女に付き添って教室に向かう途中、「間違えずに全て日本語で教えることができるだろうか」「きちんとクラスコントロールができるだろうか」「質問に上手に答えられなかった場合、動揺しないだろうか」「どうやって助け船を出そうか」「学生達は、ついこの間まで先輩学生にすぎなかった彼女の授業を真剣に聞いてくれるだろうか」等々、様々な不安がよぎりました。そして、いよいよ授業開始・・・。でも幸いな事に、それまでの私たちの心配は全て杞憂に終わりました。彼女は既に何年も教壇に立っているかのように教師然として堂々と授業を続け、一方学生達はおしゃべりもせず、寧ろ尊敬のまなざしで彼女の授業を受けています。それを見て、シリア人教官が誕生してよかったと本当に安堵しました。彼女には現在「読解」と「翻訳(日亜、亜日)」を中心に授業を担当してもらっていますが、将来的には文法や会話等も教えられるように指導していきたいと考えています。母校で教えるのは、彼女自身にとっても4年間の勉学が報われた大きな結果となりましたが、在校生たちにとっても一生懸命頑張れば彼女のようになれるという明確な目標ができ、大きな励みとなっているようです。更に今年の秋には、1期生の中から3人の助手が採用されることになっています。後輩たちが彼女たちを目指して教師となり、学科に残ってくれればスタッフ不足も次第に解消していくことでしょう。

「たこ焼き」に挑戦の写真
「たこ焼き」に挑戦

 日本語学科では、できるだけ機会を作って在留邦人にお願いして講演や学生との交流をしていただいています。その交流の場では、普段は宿題、小試験に追われて「人文学部内で一番忙しい、大変な学科」の学生たちも、思い切り羽目を外して大騒ぎします。また、毎年春には学生たちが自主的に企画して学科の遠足を数回しますが、そのときも移動するバスの車内で歌や踊りが始まり、学生たちの普段目にすることがない意外な面も知ることができます。無邪気に屈託なく楽しそうに騒ぐ学生たちを見ていると、普段は学生以上に忙しい教師業の苦労も吹き飛び、彼らからお返しの「元気」をもらうことができます。

 今後の学科の課題としては、毎年順調に新入生を募集し、1年生から4年生まで揃った学科とすること、シリア人教官をできるだけ多く早く育成すること、卒業生が在学中に学んだ日本語を生かせる場を、シリア国内だけでなく国外でも開拓していくことだと考えています。日本人教官としては、シリア人スタッフが中心となって学科運営ができる日が、できるだけ早く実現するよう今後も尽力していきたいと思っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
2002年9月、シリア最大の総合国立大学に国内初の日本語専攻学科として開設された。日本語を使って仕事ができる人材の育成のみでなく、将来的にはシリアの日本語教育を担う人材を育てることを期待されている。専門家、ジュニア専門家は、授業担当、学科事務、教室管理等、学科長と協議しつつ、実質的な学科運営を任されている。
ロ.派遣先機関名称 ダマスカス大学
Damascus University
ハ.所在地 Autostrade Al-Mezzeh, Damascus, Syrian Arab Republic
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名、ジュニア専門家:1名、日本語教育指導助手:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
ダマスカス大学人文学部日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2002年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2002年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人3名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生:23名 2年生:19名
(2) 学習の主な動機 「日系企業への就職希望」「日本語教師希望」「日本文化、経済等への憧れ」「留学」
(3) 卒業後の主な進路 「母校に就職」「シリア企業に就職」
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
「日本語能力試験2級合格」が目標
(5) 日本への留学人数 2名

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