世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 土日基金文化センターから - トルコの一般向け日本語講座 -

土日基金文化センター
杉山純子

1.トルコの一般向け外国語講座

土日基金文化センターの写真
土日基金文化センター

トルコには一般向けの外国語講座を開講している語学学校が多く、英語、ドイツ語をはじめとして、様々な外国語を学ぶ人がいます。英語、ドイツ語の場合は「必要に迫られて」学ぶ人が多いのですが、日本語の場合は「日本に興味がある」「日本人の友達がいる」「新しい外国語を学んでみたい」「将来何かの役に立つかもしれない」という動機がほとんどで、「趣味」の日本語と言えるでしょう。概して、トルコ人は外国語学習が大好きなようです。しかし、語学教室の現場を観察した限りでは、コミュニカティブな外国語教授法が確立しているとは言いがたく、机上学習型がまだ主流のようです。また、経済的理由によるものでしょうが、語学学校では外国語教師のほとんどがトルコ人であり、ネイティブ・スピーカーが教えている機関は極めて少ないというのが現状です。

2.日本への関心

トルコでは子どもから大人にいたるまで日本人に対して無条件の好意を示してくれます。「ナカタ」「オノ」など欧州で活躍する日本人サッカー選手の名前を知っている人も多く、空手・合気道・剣道などの武術はトルコでも大人気です。また、上映される機会が極めて少ないにもかかわらず、日本映画が好きだという人もいますし、囲碁や将棋や折り紙を趣味とする人もいます。トルコ人は食事に関しては保守的でトルコ料理以外は認めないと聞いていましたが、土日基金の受講生は日本料理に強い関心を示し、箸が上手に使える人もいます。若い人はやはりアニメが大好きです。「ポケモン」「セーラームーン」などはトルコのテレビでも放映されています。みんな口々に「機会があったら、日本へ行きたい」と言います。なぜ行ったこともない日本がそんなに好きなのか、いろいろな説がありますが、はっきりした理由はいまだによくわかりません。

3.土日基金文化センターの日本語講座

3.1.土日の授業

初級後半クラスの教室風景の写真
初級後半クラスの教室風景

日本語講座は土曜日と日曜日に開講されています。文字通り、「土日(とにち)」は「土日(どにち)」が一番忙しくなるのです。受講生は、社会人、大学生、中高生です。2003年春学期(4月中旬-7月上旬)には、入門Aクラス、初級前半Bクラス、初級後半Eクラス、初級前半Cクラス、初級後半Fクラス、入門子どもクラスの5クラスが開講されました。授業の基本方針は以下の通りです。
1)1つのクラスをトルコ人教師と日本人教師の2名が担当する。日本人教師からは正確な発音・表現、日本の文化・習慣を学ぶことができ、トルコ人教師には疑問点をトルコ語で質問できるというメリットがある。
2)受講生が「日本語を話せるようになる」ことを第一目標にする。
3)教科書中心型の授業にせず、様々な副教材、視聴覚教材を使い、インプットの方法と範囲を拡大する。
4)受講生が楽しみながら学習できるように多様な教室活動を取り入れ、アウトプットの機会を増やし、机上学習型から脱却する。

3.2.今後の課題

まず必要とされるのは、トルコ人教師の日本語力レベルアップです。現在の教師は3級レベルですので、日本語能力試験2級に合格することがとりあえずの目標です。また、当然のことながら、教授法の学習も必要です。次に、受講生にふさわしい日本語教育という観点から、一般講座用のオリジナル

会話教材、読解教材、子どもクラス用テキストを開発したいと考えています。さらに、一般講座の宿命とでも言いましょうか、中級以上に進む学習者がほとんどいないという現実があります。今後は、一人でも多くの中・上級学習者を増やしたいと望んでいます。

4.専門家の業務

4.1.土日基金での業務

土日基金日本語講座での主な業務は、1)授業の担当、2)授業の準備、3)教材作成、4)他教師との打ち合わせ、5)日本語・日本関連相談者(受講生も外部の人も含む)への対応です。日本語講座以外に土日基金から依頼される仕事として、日本語文書(パンフレット類、手紙、各種申請書類など)の翻訳修正があります。

4.2.外部での日本語関連業務

土日基金日本語講座以外の仕事としては、1)日本語能力試験の準備・実施、2)アンカラ日本語弁論大会およびイスタンブール日本語弁論大会の審査員、3)日本語教師会への協力・参加、4)日本語教師会部会への協力・参加、4)日本語能力試験2級および1級対策勉強会、5)他の日本語教育機関訪問、などがあります。
そんなこんなで、毎日あちらこちらを飛び回る日々が続いています。トルコに来て、日本より忙しい生活になるとは想像もしていませんでしたが、受講生の意欲と周囲のみなさんの暖かさを支えに、今後も精一杯の努力を続けるつもりです。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
専門家、日本語講座のコースデザイン、教材作成、授業担当、教員への指導などを行う。その他、日本語・日本関連相談者への対応、土日基金で必要とされる日本語文書の翻訳修正もしている。土日基金文化センターは土日の文化交流の拠点として、1998年に建設された。当該日本語講座は、a)趣味としての日本語学習の場を提供する、b)会話中心の日本語教育を行う、c)日本語学習を通して土日友好に貢献する、という点で独自性を示している。また、質の良い日本語教育の実践により、土日基金への評価を高めたいという目的もある。
ロ.派遣先機関名称 土日基金文化センター
The Turkish-Japanese Foundation Culture Center
ハ.所在地 Ferit Recai Ertugrul Cad. No:2 Oran, Ankara, Turkey
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
土日基金文化センター日本語講座
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2000年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 2000年
(ロ)コース種別
一般講座
(ハ)現地教授スタッフ
常勤2名、非常勤2名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   合計56名
(2) 学習の主な動機 趣味、日本への憧れ
(3) 卒業後の主な進路 不明(卒業なし、コース修了のみ)
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
基本的な日常会話ができる程度
(5) 日本への留学人数 なし

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