世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 土日基金文化センター日本語講座の概要

土日基金文化センター
杉山純子

1.土日基金文化センター日本語講座の受講生

TJVビルの写真
TJVビル

トルコでは外国語講座が花盛りです。最も学習者が多いのは英語ですが、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロシア語など欧州の言語も人気があります。そんな中で日本語はマイナーな言語と言えますが、それでも、土日基金文化センター日本語講座(以下、「TJV」と略す)のような一般講座で日本語を学ぼうとする学習者は増加傾向にあります。TJVの受講生は日本への興味や憧れが強く、合気道や剣道などの道場に通っている人、アニメのCDやフィギュアを収集している人、Jポップが大好きな人が大勢います。

2.授業方針

TJVの授業は主に週末に行われます。受講生は、社会人、大学生、高校生です。2005年春学期(4月-6月)には、入門Aクラス、初級前半Bクラス、初級前半Cクラス、初級後半Eクラス、初級後半Fクラス、中級会話クラス、ワープロ演習が開講されました。当講座の基本方針は以下のとおりです。

1) 1つのクラスをトルコ人教師と日本人教師の2名が担当する。
2) 受講生が「日本語でコミュニケーションができる」ことを第一目標にする。
3) 教科書中心型の授業にせず、様々な手法を用いて、インプットの方法を工夫する。
4) 多様な教室活動を取り入れ、アウトプットの機会を増やす。
5) 受講生がリラックスし、楽しんで学べるようなクラスにする。

3.TJVスペシャル 2004年~2005年

3.1 『オラン通信』発行

2003年秋学期にワープロ演習が始まり、受講生の「書く」ことへの意欲も高まってきました。「書く」ことが好きになった受講生が執筆・編集・校正などを担当し、2004年4月にTJV初のジャーナル『オラン通信第1号』を発行しました。その後、さらに内容を深めて、2004年12月に『オラン通信第2号』を発行。現在は『オラン通信第3号』発行のため、多くの受講生がワープロ演習に参加しています。会社を休んで作文執筆に専念する人や、次々と新しいイラストを描いて持ってくる人や、学校が終わるとすぐにTJVに直行して校正・編集を行う人もいて、TJVコンピューター室はさながら小さな出版社の編集室のような様相を呈してきました。

3.2 ビジター・セッション

ビジター・セッションの写真
ビジター・セッション

受講生は教室外で日本語を使うチャンスがほとんどなく、日本人と実際に接触する機会を切望しています。受講生の要望に応えるために、2004年秋学期に初級後半クラスと中級クラスの受講生を対象にした「ビジター・セッション」(以下、「VS」と略す)を開始しました。当講座のVSは日本人学生にクラスに参加してもらい、日本人学生と受講生がグループになって活動を行うという形をとっています。これまでに、すでに7回のVSを実施しています。VSは教室内に日本語コミュニケーションの現場を作り上げるという点で意義深いものです。セッション中の主な活動はインタビュー、ディスカッション、ロールプレイですが、セッションの最後に受講生とビジターに一人ずつ当日の成果を発表してもらうことが慣例となりました。

4.専門家の業務

4.1 土日基金での業務

TJVでの主な業務は、1)カリキュラム・シラバス作成、2)授業の準備・授業の担当、3)教材作成、4)教師ミーティングの実施、5)現地教師の日本語力増強への支援および教授法指導、6)特別イベントおよびVSの企画と実施、7)『オラン通信』の発行と編集委員・執筆者(受講生)への作文・校正・編集指導、8)日本語・日本関連相談者への対応、などです。

4.2 外部での日本語関連業務

TJV以外の仕事としては、1)日本語能力試験の準備・実施、2)アンカラ日本語弁論大会およびイスタンブール日本語弁論大会の審査員、3)トルコ日本語教師会への協力・参加、4)他機関および他機関教員への支援・協力、5)日本語・日本研究分野での研究者への支援・協力、などがあります。

4.3 第17回日本語教育連絡会議の実施

2004年8月18日・19日にTJVで初めて日本語教育関連の国際会議「第17回日本語教育連絡会議」が開かれました。有料参加であったにもかかわらず、トルコ国内から19名、国外から26名の参加者があり、日本語教育関係者の自己研鑽への意欲を改めて認識しました。トルコ国内の6機関が機関報告、国外参加者が19件の発表を行いましたが、国内外の日本語教育関係者が交流し、情報交換をしたという点で大変有意義な会議となりました。

5.今後の課題

今後の課題は二つあります。第一の課題は現地教師の日本語力の向上です。専任教師2名は日本語能力試験2級合格者ですが、現在は1級合格をめざして、日々地道な学習を続けています。第二の課題は「継続と改善」です。コミュニカティブな授業、VSの実施、『オラン通信』の発行を今後も継続し、さらに改善していくことが目標です。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
土日基金文化センターは土日文化交流の拠点として1998年にオラン地区に建てられ、2000年10月にセンター内に一般向けの日本語講座が開講される。開講当初、受講生は20名程度だったが、現在では中学生から社会人まで70名ほどの受講生がここで日本語を学んでいる。日本語学習の主な動機は、日本への憧れ、日本人・日本文化への興味であり、ほとんどの受講生が日本語コミュニケーション能力の向上を望んでいる。専門家は日本語講座のコースデザイン、教材作成、授業担当、現地教師の育成、教師ミーティングの実施、特別イベントの企画と実施、ジャーナルの発行、他機関との連絡、などの業務を担当している。
ロ.派遣先機関名称 土日基金文化センター
The Turkish-Japanese Foundation Culture Center
ハ.所在地 Ferit Recai Ertugrul Cad. No:2 Oran Ankara
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
土日基金文化センター日本語講座
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2000年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2000年
(ロ)コース種別
一般講座
(ハ)現地教授スタッフ
常勤2名、非常勤1名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   合計70名
(2) 学習の主な動機 日本への興味、趣味
(3) 卒業後の主な進路 不明(卒業制度なし。コース修了のみ。)
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日常会話ができる。日本語能力試験3級を受験可能な程度。
(5) 日本への留学人数 5名程度

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