世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) トルコダンスの衣装を着た小学生と

土日基金文化センター
横野 登代子

 買い物中に突然聞こえた「ごきげんよう」の声に振り返ると、小学校1,2年生ぐらいの女の子が立っていた。次いで「日本人の方ですか」と聞く。あまりにきれいなイントネーションに、どこで日本語を勉強しているか尋ねてみた。すると「インテルネッテン」(トルコ語でインターネット)との答え。昨今はインターネットでアニメをダウンロードし、直接ことばを丸ごと覚えてしまう子供が増えているらしい。

トルコの日本語教育

 この国の日本語教育機関は主専攻大学が3校でそれぞれ特徴を持つ。アンカラ大学(1978年から選択科目として日本語教育開始)は博士課程を併設。チャナッカレ大学(1993年~)は日本語教育学科という珍しい学科で、9名の日本人教員が流暢な日本語を話す学生を育てている。エルジェス大学(1993年~)は有名な観光地カッパドキアのそばにあり、卒業後ガイドを目指す学生も多い。その他 外国語として単位認定のある大学が10数校、高校が2校。そして市民講座はどの地区でも大勢の受講生を集めている。

 トルコの日本語学習者の特徴を言うなら 初級が強いことであろう。
 トルコ語と日本語はウラルアルタイグループであるため、文法構造が似ている。
 例えばきのう、私は友達と映画を見に行きました。
のように きれいに対応する。そのためか、初級文法は非常に習得が早い。2006年アンカラでの日本語能力試験の3級合格者が88名(合格率72.7%)と多ことでも裏付けられる。

土日基金文化センターでの業務

のりまきに挑戦の写真
のりまきに挑戦

 ここに日本語講座が始まってから7年目。現在60数名が週に4時間のコースで勉強している。受講生は70%が大学生、その他高校生、社会人、主婦、軍人と様々である。
殆どがゼロからの日本語学習であるが、冒頭の少女のようにネットで日本語を耳から独習し、日本の若者言葉を普通に話す受講生もいる。

 日本語を教える以外に、寿司パーティーを開き海苔巻き作り体験の機会を設けたり、アンカラ在住の日本人大学生の協力を得てビジターセッションを開くこと等も大切な仕事の一つである。海外はどこでもそうであるが、日本文化に触れたり日本語を話す機会は限られているからである。
また、市内の学校で日本文化紹介の催し物がある時、招待されることもある。先日はフランス語教育の小中高一環私立校に出かけた。千羽鶴を折った原爆少女貞子の物語が映像で流れ、初等部の子供達による朗読は胸に迫るものがあった。日本文化紹介というより平和教育がしっかりなされていることに感動した。

この1年の動向

(1) 観光日本語に関する会議
 トルコは日本人だけでも年間約10万人余りが訪れるという観光国である。日本人ガイドは500人もいると言われている(観光会議資料)が、習慣の違いや敬語の使い方の不慣れからトラブルが起きることも間々あるという。元添乗員経験の長いJICAシニアボランティアの発案をもとに、彼らのための再日本語教育支援について考える「観光日本語第一回会議(JICA主催)」が3月イスタンブールで開かれた。

(2) トルコ諸語国の連携プロジェクト
 トルコ語を教える語学学校に行くとクラスによっては カザフスタン、ウズベキスタン、新彊ウイグル自治区等からの学習者が半数以上いることがある。これらトゥルク諸語の学習者にとってトルコ語の習得は易しい。
これまで この地域では中東という地理的枠組で日本語会議が開かれることが多かったが、言語の近さで日本語教育の方法を話し合おうという提案がアンカラ大学から出され、トルコ語圏のグループが動き出そうとしている。

(3) 2008年ヨーロッパ日本語教育シンポジュウムのトルコ開催決定
 ヨーロッパと名のつく国際大会が2008年8月トルコ日本語教師会との共催でチャナッカレオンセキズマルト大学にて開かれることが決まった。質の高い発表が国内で聴けることは若いトルコ人教師にとっては刺激となり、今後のトルコ日本語教育にいい影響を残すことが期待される。

私が見たトルコ2007

トルコダンスの衣装を着た小学生との写真
トルコダンスの衣装を着た小学生と

 トルコは空も人も明るい。誰にでも「メルハバ」と声をかけ、知り合いならば女同士だけでなく男同士も頬をくっつけ抱き合って挨拶する。5月になれば空は抜けるように青いし、湿気のない空気は快適である。突き刺すような太陽光線があってもそれがこの国らしさである。

 人々は概して日本好きである。日本人だとわかると日本が大好きだと笑顔で話しかける。どうしてと聞いても明確な答えが返ってくるわけではない。モンゴルから西に来たのがトルコで東に行ったのが日本人で、だから昔は兄弟だったとか。
 答えがどんなに曖昧であれ、嬉しいことには違いない。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
トルコに於ける日本文化紹介の中心となるべく設立された機関。日本語講座は一般に開放されているが、国内様々な地域から日本語教育に関する質問も届く。内部業務としては日本語講座のクラス担当、現地講師の日本語力向上支援、コース整備の他、センターで行われる文化行事への参加協力がある。対外的にはトルコ日本語教育機関との連携、教師会のサポート、日本語能力試験の実施協力、スピーチコンテストの企画実施協力等が含まれる。
ロ.派遣先機関名称 土日基金文化センター
The Turkish-Japanese Foundation Culture Center
ハ.所在地 Ferit Recai Ertugrul, Cad. No.2 Oran, 06450 Ankara
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
土日基金日本語講座
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2000年10月
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2000年10月~
(ロ)コース種別
一般市民講座
(ハ)現地教授スタッフ
トルコ人教師3名 日本人教師1名 基金派遣日本語教育専門家1名
常勤4名 非常勤1名(トルコ人教師)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   60名程度 (2007年4月)大学生 高校生 社会人 主婦
(2) 学習の主な動機 日本への興味、関心。文部省研究留学生試験社会人の場合は日本への渡航予定
(3) 卒業後の主な進路
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
簡単な日常会話ができる。3級試験合格者6名(2006)
(5) 日本への留学人数 大学生の場合はそれぞれの専攻科目で日本留学。主に理系の学生が大学院留学を目指す。(受講生のうち2名文科省研究生留学中 2007)

ページトップへ戻る