世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) トルコより 2008

土日基金文化センター
横野 登代子

 トルコの5月19日は若者の祝日。風薫る新緑の中、ピクニックをする家族連れが行き交う。だが、この日は歴史的に見れば建国の父アタチュルクの主導するKultur Sabas(文化闘争1919年)が始まった日でもある。大統領になってから断行した数々の改革の一つに文字改革(1928年)があるが、読み書きの難しいアラビア文字から簡単なアルファベット表記へ変えたのは識字率を上げ教育を浸透させるためであったと言う。大統領自らが村々を回り、街角で黒板にラテン文字による表記法を説明している写真(Wikipedia)からは、その情熱が伝わってくる。現在殆どのトルコ人が新聞を読めるようになったのはこの改革のおかげといわれている。

土日基金文化センター日本語講座

 土日基金文化センター(以下、センターとする)はアンカラの南の高台、開発が進むOran地区にある。この5月で開館10周年を迎え、日本語日本文化の発信地として地元アンカラはもとよりトルコ各地からの問い合わせも増え、知名度は定着して来たようだ。さらに 2008年度の国際交流基金日本語教育ネットワーク機関に選定されたことで、ますます重要な拠点となることが期待されている。
 日本語講座のコースは年間3ターム(1タームは試験週を含め12週)で、初級入門から中級まで7レベルのクラスが開かれている。市の中心から30分以上もかかるため、土曜日4時間の週1回コースにしか受講者が集まらないという問題はあるが、大学生、高校生、会社員、技術者、医者、大学教員、軍人、主婦等、70名程度が日本語学習を楽しんでいる。学習の歩みとして年に1,2回発行される文集『オラン通信』には、創作ファンタジーあり、トルコの民話紹介ありと、彼らの視点が興味深い。
 現在、センターの日本語教員は総勢6名。トルコ人教師3名はチャナッカレ大学日本語教育学科卒業で、国際交流基金の長期研修も終了、経験を重ね、もう安心して授業を任せられる教師に育ってきた。
 トルコ人教師3名ともまだ20代であるが、学生からはHocam!(ホジャム!)と声をかけられる。因みにトルコの昔話に『ナスレッティンホジャ』というのがあるが、ホジャは「先生」という意味で、mは「私の」、一人称所有格である。かくして若いホジャ達3名と日本人教師3名のチームティーチングは続く。

派遣先での活動

俄か茶室の教室でお茶を体験する受講生達の写真
俄か茶室の教室でお茶を体験する受講生達

 センターでの通常の授業、日本語能力試験対策クラス、講座講師のための勉強会、地元アンカラ大学での漢字補習授業等日本語教師としての業務の他、秋は日本語能力試験や日本語弁論大会実施のために大使館の文化担当官と共に準備に当る。
 これとは別にイベント屋さんになることもある。日本語だけでなく日本文化にも興味を持っている受講生の為に、時には体験できる場を企画したりする。今年はアンカラ在住のJICAシニアボランティアの奥様にご協力いただきミニ茶会を開くことにした。『みんなの日本語』の会話ビデオに茶碗を回す箇所があり、その理由をしばしば質問されるからである。茶碗を回したり、「お先に頂戴します」というメンタリティーを感じとってもらうのに、お茶会はいい場であった。

ヨーロッパ日本語教育シンポジウムの開催に向けて

 2008年8月27日から3日間、第13回大会が『多文化共生の時代と日本語教育』をテーマに、ダーダネルス海峡に面した小さな町チャナッカレで開かれる。この開催に向け、会場となるチャナッカレ・オンセキズマルト大学日本語教育学科の教員やトルコ教師会代表からなる実行委員会が準備に追われている。トルコでの開催は初めてとあって、多くの参加が見込まれる。http://www.eaje.eu

私が見たトルコ2008

自分達が書いた漢字の前でポーズをとる学生達の後方の上部に見える4点セットの写真
自分達が書いた漢字の前でポーズをとる学生達の後方の上部に見える4点セット

 トルコ人は熱い。「恐れるな!」で始まるトルコ国歌をサッカーの試合等で聞くと、気持ちの高揚を感じる人も多いだろう。
 この国では公教育機関のみならず、あらゆる教育機関の全ての教室に必ず掲げられている4点セットがある。アタチュルクの写真を挟んで左に若者に向けてのメッセージ、右に国歌の歌詞、その上にトルコの旗。
 若者に向けたアタチュルクからのメッセージは“自分達に流れている血を信じよ”との激である。全ての高校生はこれを暗記しなければならないそうだが、男女、年齢を問わず熱く熱くトルコを語る人が多いのは、この4点セットの賜物かもしれない。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
トルコに於ける日本文化紹介、文化交流の中心となるべく設立された機関で、2008年度交流基金日本語教育ネットワーク機関にも選ばれている。日本語講座は一般に開放され、図書室は1万冊の蔵書と視聴覚ビデオも多数揃えている。内部業務は日本語講座のクラス担当、現地講師のための勉強会、コース整備の他、センターで開催の文化行事への参加協力がある。外部業務としては国内日本語教育機関との連携協力、教師会サポート、日本語能力試験実施協力、弁論大会審査協力、その他交流基金プログラムに関する案内等。
ロ.派遣先機関名称 土日基金文化センター
The Turkish-Japanese Foundation Culture Center
ハ.所在地 Ferit Recai Ertugrul, Cad. No.2 Oran, 06450 Ankara
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
土日基金文化センター 日本語講座
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2000年10月
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2000年
(ロ)コース種別
一般市民講座
(ハ)現地教授スタッフ
常勤3名(うち 邦人1名) 非常勤2名(うち 邦人1名)
基金派遣専門家1名
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   初級前半40名、初級後半17名、中級 6名
(2) 学習の主な動機 日本への興味  文科省留学試験のため
(3) 卒業後の主な進路 受講生の所属する教育機関ではないので、資料なし。
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
4級 または3級まで続ける学生が増えている。
(5) 日本への留学人数 -

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