世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) トルコと日本が出会ったら・・・

土日基金文化センター
村木 佳子

 みなさんはトルコと聞いて、何を想像しますか。日本にも店が並ぶケバブ、アジアとヨーロッパの入り口であるイスタンブール、大自然の壮大さに圧倒されるカッパドキアなどなど。今回は、そんなトルコの日本語教育の現場からトルコの人々の日本語や日本に関するお話を3つお届けします。

1. 漢字の勉強とマンガのコラボレーション

「第1回まんがで漢字コンテスト」入賞作品(1位~3位と特別賞)の写真
「第1回まんがで漢字コンテスト」入賞作品
(1位~3位と特別賞)

 非漢字圏のトルコの人々が日本語を学ぶ時、まず壁になるのが漢字です。私が派遣されている土日基金文化センターの日本語講座でも、初級クラスから少しずつ教えているのですが、漢字大好き!という学習者がいる一方で、漢字と聞くと顔をしかめる学習者も少なくありません。そこで、今年から講座受講生を対象に、「まんがで漢字コンテスト」を始めました。審査基準は、「漢字が覚えやすい絵であること」「印象に残りやすい絵であること」の2点で、絵の上手下手は審査の対象外です。参加者にはこの審査基準に合うように漢字を選び、その絵を描き、その絵と漢字に関するストーリーを書いてもらいます。さらに、日本語学習の要素として、漢字の意味と音読み、訓読みも書いてもらいます。審査員は当センター日本語講座の講師陣です。第1回の優勝者は、なんと日本語学習を始めてまだ半年の高校生。「内」という漢字を、何かの中(内)から人が出てくるイメージで描いてくれました。日本のアニメやマンガが大好きな当センターの日本語学習者。ひとつの絵を描くだけでマンガとは呼べないのかもしれませんが、漢字に対する苦手意識が少しでも薄れてくれればいいなという講師たちの思いが詰まった企画です。

2. 弁論大会をアンカラから世界へ発信

 日本語専門家としての私の仕事は、土日基金文化センター内だけではなく、トルコ国内の日本語教育に関係する事業の実施や支援、協力などもあります。例えば、トルコでは全国的な日本語弁論大会が、秋にアンカラ、春にイスタンブールと年2回開催されており、すでに19回を迎えました。大会当日は各地から弁士とそのご家族や友人をはじめとする応援団が会場に集まるのですが、去年10月に開催されたアンカラ日本語弁論大会は、会場の様子をUstreamというインターネットサイトを利用して世界へ向けて生中継しました。弁士たちも大会前からいろいろな知人にお知らせし、当日は田舎の両親がネットで見てくれているんです!と嬉しそうに話してくれました。インターネットのおかげでトルコや日本だけでなく、世界中の人々からの注目を浴びて、今まで以上に気合が入っていたのではないでしょうか。企画側としては、世界初の海外日本語弁論大会の生中継とあってドキドキしていたのですが、瞬間最高視聴者数が1000人を超え、ぜひ来年もという声をいただいた時には企画してよかったと嬉しくなりました。大会の様子はこちらからご覧いただくことができます。また今年の秋の「第20回アンカラ日本語弁論大会」もUstream中継を予定していますので、ぜひトルコの学習者たちのスピーチをご覧ください。

3. 日本文化を広める

チャナッカレ・オンセキズ・マルト大学の日本デーにての写真
チャナッカレ・オンセキズ・マルト大学の日本デーにて

 トルコでは日本語を教えている機関が40ヶ所以上あると把握しています。それらの機関、特に大学の文化祭や文化デーなどで学習者たちが日本文化を紹介する様子を見に行くこともあります。書道、生け花、風呂敷などの伝統文化紹介から、茶道や琴、剣道のデモンストレーション、折り紙、駒、だるま落とし、けん玉などの遊びまで、ここがトルコだと忘れてしまうほど日本が溢れています。よさこい、日本語劇、浴衣を着て写真撮影、ミニ日本語講座、焼きそばや巻き寿司、天ぷらなどの日本食などなど、まだまだ尽きません。私もそこへ入っていき、着物の女性の美しさは襟足にあるのよ、などと普段の授業ではあまり触れないだろう日本を伝えたり、懐かしいけん玉で学生と競ったりしたりして一緒に時を過ごします。

 今年4月におじゃましたチャナッカレにあるチャナッカレ・オンセキズ・マルト大学では、こちらは日本のカレンダー展と折り紙展、あちらでは書道展、そのまた向こうでは生け花・風呂敷展など、キャンパス内の至る所を展示会場にした大変賑やかな日本デーでした。その風呂敷展では、日本の伝統的な風呂敷を使うだけでなく、オヤと呼ばれるトルコの伝統的なレース刺繍で縁どられたスカーフも一緒に使って、いろいろな包み方を紹介しており、日本の伝統的な文化がトルコ人の手によって新しく生まれ変わった姿に感動しました。

 いかがでしたでしょうか。これからもトルコの日本語の先生方と学習者たちと、トルコと日本が出会う瞬間を一緒に楽しみ、一緒に作りあげていきたいと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Turkish-Japanese Foundation Culture Center
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
トルコに於ける日本文化紹介、文化交流の中心となるべく設立された機関。センター内図書館には1万冊以上の蔵書と視聴覚ビデオが多数揃っている。大きなホールもあり、アンカラ弁論大会や各種文化事業が行われている。専門家は、内部業務として一般市民向け日本語講座の授業担当、コース設定の改善、現地講師のための勉強会の他、センターで開催される文化行事への参加協力を行う。外部業務としては、トルコ国内の日本語教育機関、日本語教育関係者、日本語学習者に対する支援・協力、教師会サポート、日本語能力試験や弁論大会の実施協力、その他交流基金プログラムに関する案内等を行い、トルコ全体の日本語教育の発展に努めている。  
所在地 Ferit Recai Ertugrul, Cad. No.2 Oran, 06450 Ankara
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
土日基金文化センター 日本語講座
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2000年
国際交流基金からの派遣開始年 2000年
コース種別
一般市民講座
現地教授スタッフ
常勤 4名(うち邦人1名)、非常勤 0名
学生の履修状況
履修者の内訳   計83名(初級前半50名、初級後半26名、中級7名)
学習の主な動機 日本への興味、日本留学
卒業後の主な進路 受講生の所属する教育機関ではないので、資料なし。
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
初級終了時、日本語能力試験N4(旧3級)を受験可能な程度。
日本への留学人数 1~2名程度

ページトップへ戻る