世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) トルコの日本語ネットワークの成果

土日基金文化センター
建木千佳

日本語能力試験の年2回実施

トルコ国内で実施されている外国語試験は多々ありますが、日本語は公務員試験しか認可を得ていません。認可を得るための条件として年2回以上の実施を複数年継続したという実績が必要です。トルコでは、毎年12月に日本語能力試験(以下JLPT)を実施してきましたが、JLPTはまだ認可を受けていません。 

2014年からJLPTのオンライン受付を導入しました。当時は願書受付と併用でしたが、翌年からはオンラインのみとしたところ、応募者が急増。毎回使用させていただいている会場も狭く感じるようになってきました。

そこで、JLPTの認可取得と受験者の分散という2つの目的から、トルコでは年2回JLPTを実施することになりました。まだアンカラのみの実施ですが、受験者はイスタンブールの方が圧倒的に多いです。次の課題は、トルコ国内の複数会場でのJLPT実施です。

新規日本語教育

アタユルト学校での書道パフォーマンスの画像
アタユルト学校での書道パフォーマンス

昨年10月、トルコの日本語教育界に、新しいニュースが入りました。新たに2つの中等教育機関で日本語指導が始まりました。エスキシェヒルにあるアタユルト学校では、中高生の必修クラブとして日本語が始まりました。地中海沿岸にあるアランヤのヤシャム・タシャルム高校では、正規の授業として日本語が導入されました。両校の日本語立ち上げに、筆者も微力ながら関わっております。

アタユルト学校では、昨年10月、先生に見ていただくためにデモ授業を行いました。その日出席した23名の生徒たちは、1人もやめることなく、1学期間日本語を勉強し続けたそうです。先生の頑張りを心からたたえたいと思います。

ヤサル・タシャルム高校では、日本語教師が見つからないという相談を受けていたので、こちらにも伺って、スペシャル授業をしました。日本人を初めて見るという生徒達ばかりで、皆、大興奮。日本語の歌を1つ紹介して授業を終えました。ところが、その後生徒達からの日本語リクエストがやまず、校長先生は日本語の先生を探し続け、昨年10月半ばから日本語指導が始まりました。

日本文化体験イベント

日本人が1人もいない地域でも日本、日本語への興味が深まっています。トルコでは、日本語専修課程を設けている大学もありますが、まだ3校です。今年9月からもう1校、学生の受け入れをする見込みです。JLPTの受験者を見てもわかるように、今後もトルコにおける日本語需要は高まることが予測できます。そんなトルコの日本語教育界を応援するために、10日間で5都市6機関を回る書道のパフォーマンスとワークショップを行いました。

TJVでの書道ワークショップの画像
TJVでの書道ワークショップ

昨年6月、日本から書家の鈴木猛利先生がアンカラにいらっしゃり、土日基金文化センター(以下TJV)にて書道イベントを行いました。ワークショップに参加するためにバスで10時間もかけてきたという人もいました。また、ワークショップの参加希望者があまりにも多く、皆さんの期待にお答えできませんでした。それで、今年3月にも、再度鈴木先生にお越しいただく運びとなりました。今回のテーマは、大都市から離れたところもターゲットに入れ、日本語を学んでいる人達、日本と関連ある人達との書道を通しての交流です。到着したその日からイベントが始まり、長距離バスでの移動もあって、大変な行程でしたが、鈴木先生は、行く先々でおいしいトルコ料理に活力を得て、始終笑顔で交流に臨んでくださいました。初めて筆を持つ人もいれば、自己流で書道に取り組んでいる人、日本語も日本人も初めてという人も、鈴木先生のダイナミックなパフォーマンスに息をのみ、ワークショップでは、緊張しながら半紙の上に筆を走らせていました。このイベントの後、先生方に日本語学習令が出された学校もあります。日本とトルコの書道交流は、行く先々で大盛況でした。

このように、土日基金文化センター(以下、TJV)は、トルコの潜在的な日本語需要を掘り起こすべく、いろんなことに取り組んでいます。一般向け日本語講座、日本語弁論大会の改革、JLPTの年2回実施、日本関連イベントの実施など、規模の大小にかかわらず、限られた人数で果敢に取り組んでいます。もちろん、TJVだけでできたことではありません。日本語というキーワードでつながった人の協力があったからです。アンカラをはじめ、トルコ国内はもとより、海外にも広がる日本語ネットワークを使って、TJVはこれからもトルコにおける日本語教育を支援していきます。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Turkish Japanese Foundation Culture Center
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
トルコにおける日本文化紹介、文化交流の中心となるべく設立された機関。設立時に日本からの支援で、視聴覚機材が寄贈され、多目的ホール、セミナーホールにて各種文化事業が行われている。
専門家は土日基金文化センター内の日本語講座、日本語能力試験、弁論大会等の日本語関連イベント企画・運営、及び日本語教育機関への支援を行う。
所在地 Ferit Recai Ertugrul 2 Oran Ankara 06450 Turkey
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
土日基金文化センター 日本語講座
日本語講座の概要
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