世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ひろーーいブラジルの、これからの日本語教育を考える

国際交流基金サン・パウロ日本語センター
派遣専門家 三浦多佳史

緑豊かな、早朝のマリンガの町の写真
緑豊かな、早朝のマリンガの町

パラナ州マリンガはサンパウロから飛行機で約1時間、緑が豊かな静かな町である。ここに毎月1回、パラナ州内の各地から、CELEMと呼ばれるパラナ州の公教育で、課外外国語科目として日本語を教える先生方が、勉強会に集まってくる。バスで1時間程度の町から、遠くは4時間も5時間もかかる地域から、朝早く出発してやってくる。勉強会に取り組む姿勢は真剣だ。日本語文法の細かい疑問から講座運営上のアドバイスまで、若い先生はベテランの先生方の話にじっと耳を傾ける。

ブラジルの日本語教育の歴史は古い。1908年に最初の日系移民を乗せた「笠戸丸」がサントス港に入港してから今年で95年。ブラジルの日本語教育は、この日系移民の歴史と切り離して考えることは出来ないからだ。それは日本語教育というよりも、日系人子弟を対象にした国語教育という側面が強かった。近年減少傾向にはあるが、ブラジルの公教育以外の場で、こういった日系子弟向けの国語教育は、いまでも盛んに行われている。

そういった中で1989年にサンパウロ州(CEL)で、翌年パラナ州(CELEM)ではじめられた課外外国語講座は、少しずつではあるが、受講生も増加しており、これまでとは違った形の日本語教育の試みとして、当地の国際交流基金日本語センターも支援に力を入れている。

熱心な勉強会の様子の写真
熱心な勉強会の様子

 筆者はここブラジル、サンパウロ日本語センターに4月に着任した。着任後まだ日が浅いが、当地の日本語教育事情や国際交流基金の支援体制については、これからさまざまな局面で関わっていくことになると思う。その最初の仕事として、5月も終わりの先日、冒頭で紹介した静かな町、マリンガを訪れてきたのである。直接の仕事は毎月1回の勉強会のお手伝いということだが、ブラジルの中等教育で、実際に教壇にたっておられる先生方と会い、直にお話を聞いてこられるよいチャンスということで、非常に楽しみにしていた。若い先生方は、今度の専門家は一体どんな人だろう、と、特別緊張しているとのことだったが、「私が一番緊張しています。」というと、緊張もほぐれたようだ。勉強会は非常に熱心に行われた。先生方はこのときとばかりに日ごろの悩みを打ち明ける。先輩の先生がやさしくこたえる。日本語教授法に関する私の話にも熱心に耳を傾ける。矢継ぎ早に出てくる質問。朝早くから時間をかけて出てきたのだから、一時も無駄にすまいとの思いが伝わる。こういう現場にいると、「きてよかったな」という気持ちになる。

ベテランの先生の一人は「私たちは恵まれていると思います。国際交流基金からさまざまな形の支援をしていただき、こうして勉強会にも先生がきてくださる。90年に講座をはじめた当初は、右も左もわからず、相談する相手もなく、孤軍奮闘でした。それに比べれば今は天国です。」と、しみじみ語っておられた。物をあげたり、イベントを開催するのも支援の重要な側面であるかもしれないが、ネットワーク作りや継続的な側面支援も、もうひとつの柱であることを感じさせられた。

さて、これから2年間の活動はどうなるでしょうか。周りの意見によく耳を傾けながらすすめていきたいと思います。ブラジルは広いから、先生方のネットワーク作りなども大切かもしれません。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
 国際交流基金サンパウロ日本語センターでは、ブラジルの公教育における日本語教育であるCEL(サンパウロ州外国語教育プログラム)、CELEM(パラナ州外国語教育プログラム)を中心に支援事業を展開している。具体的には、CEL/CELEMプログラムにおける教師研修、巡回指導、各種学習奨励事業などを実施している。また、初・中・高等教育段階における日本語教育や学校教育外の日本語教育の連携・協力体制を強化する目的で、関係諸機関が参加する「日本語協議会」を2001年度に発足させた。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation Sao Paulo Language Center
ハ.所在地 Av. Paulista 37, 2o. andar, CEP01311-902, Sao Paulo, SP, Brazil
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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