世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 人と人とのつながりを大切に、人に喜ばれる仕事を目指して

国際交流基金サンパウロ日本文化センター
派遣専門家 三浦多佳史

サミュエル・オリヴェイラ君はサンパウロの大学で学ぶ17歳の学生だ。日本語は昨年このページで紹介したCELと呼ばれる、高校の課外外国語講座で学んだ。アニメや日本のポップスが好きで、これからも日本語を勉強していきたいと思っている。わたしは彼には会ったことがない。でも、わたしたちは最近流行りのメル友である。「みんなの教材サイト」のメンバー情報からわたしのメールアドレスを見つけ、メールを送ってきた。もちろん完璧な日本語ではないけれど、日本語のこと、アニメのセイント聖矢のこと、ミスターチルドレンや松任谷由美のうたのこと、いろんなことを日本語で話す。文法についての質問があったり、冬休みの日本語講座情報を求めてきたりもする。メールで、日本語で話ができてうれしいという。わたしもくすぐったいような嬉しさがある。

サンパウロでの日本語教育現場の写真

 サンパウロへ赴任して半年立った頃、わたしは以前からの念願だったサーカス学校へ通い始めた。趣味のジャグリングを習うためだ。一人ではなかなか上達しないが、仲間がいると自然と練習にも身が入り、少しずつ上手になった。教師研修会の講師で招かれると、わたしは必ず会場でこのジャグリングを披露する。参加者にも挑戦してもらう。文型の基本練習の大切さを実感してもらうためだ。「やり方が頭で分かっていても、なかなかできませんよね。練習が大切なんです。日本語も同じです。頭で文法がわかっていてもなかなか話せるようにならないのは、練習が足りないからです。」というわけだ。このジャグリング説法をはじめてから、とてもたくさんの先生方と仲良くなれたように思う。日本から来た偉い先生(本とは偉くも何ともない)から、隣の面白いおじさんにイメージが変わったのかもしれない。
 「人に喜ばれる仕事」が私のモットーである。喜ばれるためにはブラジルの人々が何を必要としているのか、自分は何ができるのか、一生懸命考えることが重要だ。そのためにも人と人とのつながりは、わたしのここでの仕事の中でも最も大切なことのひとつであると思う。日ごろから話しやすい雰囲気、人の話をよく聞く姿勢を心がけている。

「メルマガこうししつ」の画面キャプチャ

人と人との大きなつながりがあればいい、という話を耳にする。日本語教師間のネットワークのことだ。小さい地域での教師会はあるが、まだ全国的な広がりのものはない。「人と人とのつながり」を大切にしながら「人に喜ばれる仕事」をして、何とかこのネットワークにつながらないか、を考えてはじめたのが「メルマガこうししつ」である。(このメルマガのバックナンバーはhttp://homepage3.nifty.com/miuratakashi/でみることができる)

 

40人程度の「つながり」で第1号を発行したのが昨年の11月、2004年の5月現在で13号、登録者は320名を越えるまでになった。このメルマガ発刊にあたっては、読んでもらえるメルマガとはどういうものか、喜んでもらえる内容はどんなものか、ここ日本語センターの講師室で充分に検討した。内容は、すぐに現場で役に立つ授業のテクニックや耳寄りなお知らせ、最新の日本語教育事情などを1200字程度にコンパクトにまとめたものだ。しかも日本語とポルトガル語の2言語対応である。まだメールを受け取る環境にない方のために郵送でも送っている。

 

反響は上々で、毎回様々な意見、質問、コメントが返ってくる。それらには講師室からこまめに返事を出す。大きい問題は次のメルマガで取り上げる。一方的に送りつけるだけのメルマガが、既にそれ以上の力を発揮しているといえるかもしれない。

 

ネットワーク作りは結構大変な事業である。仕事が特定の人に集中してしまうネットワーク、参加者に義務が生じるネットワーク、やりたい人だけのネットワークなど、なかなかうまくいかない経験をした人も多いと思う。この「メルマガこうししつ」のつながりは既に300名を越えている立派なネットワークである。しかも非常にゆるい連帯の、しかし必要なときには力になる、頼もしいネットワークである。登録者数の増加は一段落したが、まだ少しずつ増えている。地味だがねばり強く続けて、大きなネットワークに育つことを願っている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
 国際交流基金サンパウロ日本語センターでは、ブラジルの公教育における日本語教育を中心に支援事業を展開している。語学教育の3要素といわれる「教師」「学習者」「教材」それぞれについてバランスのとれた支援を目指しているが、本年度は「教師」向けに情報を提供する「国際交流基金日本語セミナー」、「学習者」向けとして日本語講座を有する全国22の大学に対象を拡大した「全国大学生サンパウロ研修」を開始した。また「教材」支援として日本語国際センター制作の「教科書を作ろう」のポルトガル語版開発プロジェクトがはじまっている。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation Sao Paulo Language Center
ハ.所在地 Av. Paulista 37, 2o. andar, CEP01311-902, S?o Paulo, SP, Brazil
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

ページトップへ戻る