世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) チリの日本語教育支援します

サンチャゴ大学
今枝亜紀

サンチャゴ大学の日本祭り2005年12月の写真
サンチャゴ大学の日本祭り 2005年12月

チリでの派遣専門家の業務は、派遣受け入れ機関であるサンチャゴ大学での仕事と、それ以外での仕事との二つに大きく分けられます。

大学での仕事の一つは、現地の先生方と一緒に人文学部言語文学科翻訳課程での授業を行うことです。学生は2年生までは英語、ポルトガル語、日本語の3外国語を学習し、3年生から英語・ポルトガル語コースか、英語・日本語コースに分かれます。日本語に関する科目は3年生までで基礎を学習し、4年生、5年生では翻訳関係の科目が増えます。

先生方は専任、非常勤、日本語を母語とする人、自身も日本語を外国語として勉強した人と様々です。いずれも熱心な先生方ばかりですが、日本から遠く離れたチリでは、日本語教育の研修を受ける機会はなかなかありませんし、日本語教育に関する情報の入手手段も限られています。そんな先生方のサポートをするのが二つ目の仕事です。教材や教授法を紹介したり、授業準備やテスト問題作成のお手伝いをしたり、授業参観をしてアドバイスをしたりもします。よく似た文型の使い分けについて学生にどう説明したらいいか、学生が作ったこの文はどこをどう直したらいいかといった相談に答えることもあります。また学生同様チリ人の先生方にとっても大学以外で日本語を使う機会はほとんどありませんので、先生自身の日本語運用能力維持のためのお手伝いもします。

翻訳課程は1995年に英語・日本語コースだけでスタートしましたが、2000年入学の6期生からは現在のように英語・ポルトガル語コースと英語・日本語コースが併設されるようになりました。現行カリキュラムも7年目を迎え、再度の見直しの時期が来ています。専門家派遣が開始された2002年の頃から既に新カリキュラム案作成への助言が業務の大きな柱の一つとして掲げられていました。カリキュラムの変更が実施されれば、新しい科目内容や教材の扱いについて先生方のサポートをするというのも今後の新しい業務となります。

チリの日本語弁論大会2005年11月の写真
チリの日本語弁論大会 2005年11月

大学以外での仕事は、チリ日本語教師会の世話係、弁論大会の準備委員と審査員などが挙げられます。

チリ日本語教師会は発足してから3年の若い会で、メーリングリストによる情報交換と年数回の勉強会を行っています。メンバーは大学や高校、民間機関、またプライベートで日本語を教えている先生方や、これから日本語教師になろうとしている方々等です。メーリングリストでは日本語や日本文化に関する情報をお知らせしています。最近の勉強会では、日本で日本語教育の研修会に参加した先

弁論大会は2006年に25回目を迎えます。民間の非営利文化団体の主催ですが、国内にほかにも日本語を教える機関が増えてきたことから、この数年はチリ全体の日本語弁論大会としての性格を強めてきています。日頃の学習成果の発表と、機関の枠を越えての学習者同士の交流がこの催しの二つの大きな目的です。ふだんは勉強会への出席もなかなか難しい、サンチャゴから遠い地域にお住まいの先生方ともお会いすることができ、「チリの」日本語弁論大会として定着してきていると感じられます。

そのほかにも、あちこちの機関でお仕事をなさっていらっしゃる先生方からの個別の問い合わせや相談に応じたり、教材や資料を提供したりというような個別のサポートも大切な仕事です。

いずれの場合も、チリの事情を視野に入れつつ、チリの学習者にとって日本語が少しでも楽しく勉強できるものになるように、チリの先生方が日本語を教えるにあたって少しでも仕事がしやすくなるように、情報を提供したり、お手伝いしたりできればと思っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
チリにおいて日本語教育機関を常設している2機関のうちのひとつであり、唯一の高等教育機関である。中南米スペイン語圏で唯一の日本語専攻課程であることから、チリ国内のみならず中南米における日本研究者、知日家を育成する重要な拠点として在チリ日本大使館をはじめ各方面から注目され、重要視されている。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム、教材作成に対する助言、現地教師の育成等を行うと同時に、その他の教育機関の日本語教師への協力、ネットワーク作りも行う。
ロ.派遣先機関名称 チリ・サンチャゴ大学
University of Santiago of Chile
ハ.所在地 Avenida Libertador Bernardo O'Higgins 3363, Santiago, Chile
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
人文学部言語文学学科翻訳課程
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   選択:1993年から
専攻:1995年から
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2002年から

(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤3名(うち邦人2名) 非常勤3名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年50名 2年55名 3年32名 4年30名 5年30名
(2) 学習の主な動機 日本文化への興味、英語以外の外国語への興味
(3) 卒業後の主な進路 日本大使館、日系企業、英語教師など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験3~2級程度
(5) 日本への留学人数 1名、短期研修2名

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