世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) メキシコの外国語教育と日本語

国際交流基金メキシコ日本文化センター所属
日本語教育アドバイザー
原昭義

1、「外国語センター」が中心の教育

メキシコで日本語を教えている機関は、大別すると公私立の大学と民間経営の日本語学校に分けることができる。後者には成人対象、子ども対象、子どもから成人まで対象などの機関がある。子どもを対象としている機関には日系社会との関連が深い機関が多い。メキシコの初等・中等教育機関では日本メキシコ学院のメキシココースとなかよし学園で日本語を教えておりこの2校は必修である。グァダラハラの補習校でも子どもに教えている。

バハカリフォルニア州立大メヒカリ校の写真
バハカリフォルニア州立大
メヒカリ校

機関を経営主体ならびに学習者の数からみると、圧倒的に公私立の大学の比重が高い。概数で60ぐらいと数えられている日本語講座開設機関のうち、大学以外の機関は2割程度である。日本対象の専攻課程を設けているところは学部にはなく、大学院に相当するコレヒオ・デ・メヒコの日本研究コースのみが日本語を必修としており、ほかには選択必修または自由選択だが単位認定としているところが5機関ある。

大学での外国語講座はほとんどが外国語センターというところで開かれ、日本語の授業もここで行われている。地域社会に開かれた公開語学講座にしている外国語センターも多い。

メキシコの外国語教育の特色はこの外国語センターにある。連邦政府の外国語政策に関しては報告者の力不足もあってわからない点も多いが教育の専門家に聞いたところでは基本政策は次のようである。

(1)  政府は外国語の学習機会は提供するが、政策として特定の外国語学習を義務化したり上位の公教育機関への入学試験科目にはしていない。ただし私立の教育機関は自由である。例として中等教育の前・後期では英語またはフランス語が必修だが選ぶのは教育機関であり、上位の機関への入学の条件とはしておらず履修証明の位置付けにある。大学入学に際しては、外国語能力の必要度に関しては学部が決める。
(2)  大学での外国語教育に関しては大学の決定が尊重され、それが「外国語センター」という形になっている。外国語習得を要求する度合いは学部によって異なり、日本語は単位につながらない自由選択科目である場合が多い。
(3) 外国語センターは独立の学部ではなく学内の横断的組織である。外国語センターの運営は、政府からの財政的補助もあるが独立採算が原則であり受講料やクラス規模、受講資格の範囲についてはセンターの運営コストを勘案し大学が決めている。

つまり、連邦政府は外国語学習の必要性を認識し学習機会は用意するが、学習言語の決定と運営は大学に任せ、大学は学習希望者の需要動向をみて言語を選び講座を開いているというイメージになろうか。この方針は、教育現場からみるとメキシコの学習者と教師にとってプラス・マイナスの両面をもたらす。

2、「外国語センター」方式の長所と短所

開講前の外国語センターの掲示板の前に立つと、外国語の人気投票の場にいる感じがする。1位はもちろん英語。ダントツである。ずーっと遅れて2位はフランス語。これもかなり後者を離している。3位にはドイツ語、少し遅れて日本語かイタリア語か。ドイツ語、日本語、イタリア語はその時々の人気によって順位が変わることがあるそうである。この国の日本語教育の現場にいる教師にとっては、日本という国、日本語という言語に対するメキシコの人々の評価を知る機会であると同時に、自分の仕事に対する反省と発奮の契機にもなる受講登録者の動向である。

長所は、学習者にとっては専攻に関わりなく自分が習いたい言語を学べることであり、教師にとっては、必修科目と違って強制力が効かない分、授業の魅力の有無が学習者の増減という結果に表れることであろうか。短所は、専攻科目の勉強が優先するため「日本語オタク」以外の学習者の学習意欲を高め持続させることがむずかしいこと、日本語のような非ラテン語系の言語習得には時間が足りないため学習者に不満が残ること、外国語センター所属の教師の身分保障が学部に比べて低いため、情熱はあっても日本語教師を自分の仕事として続けられる人材が少ないことである。

外国語センター方式は、連邦政府または特定の大学が国民の外国語習得の重要性に対する理解を深め、外国語学習者にメリットを与え、同時にいい教師を確保し身分保障を高めるための予算を増やすようになれば、その長所はさらに生かされ、社会各層の学習希望者に門戸を開き、満足感が得られるような講座内容を提供できる可能性を秘めている。そうなるかならないかは、どの国でも今の若者にとって将来、生活の上でも仕事の上でも外国語の必要性が高まると考えるか否かにかかっている。

3、メキシコ日本語教師会の設立

数年の話し合いを経て、1992年2月に「メキシコ日本語教師会」(法人上の名称はスペイン語)が設立された。目的は、教師としての実力の向上とメキシコ国内での日本語教師の地位の向上にある。国土の広さ、費用などを考慮し通信・広報の手段としてはPCの活用が重視されている。

イ.派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
いわゆる中米・カリブ地域では、唯一の国際交流基金の事務所であって、この地域と日本との文化交流および日本語教育の普及を業務としている。日本語教育アドバイザーの業務としては、(1)個々のあるいは地域の日本語教育機関および日本語教師への勉強会・教材などを通じた協力、(2)日本語教師会の活動への協力、(3)毎年の日本語教育機関調査を通じた教育事情の実態の把握、(4)学習者、教師からの相談受けつけ、(5)JICA派遣の日系シニア・青年ボランティア、海外シニアボランティアとの協力などである。
ロ.派遣先機関名称
ハ.所在地 Av.Ejercito Nacional #418-2piso
Col.Chapultepec Morales
C.P.11570 Mexico.D.F.
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育アドバイザー:1名

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