世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) “活動で感じたこと”と“活動が変えていくもの”

吉林省教育学院
中新井綾子

吉林省内の中高校には第一外国語として日本語を勉強する生徒たちがいます。ほとんどが朝鮮族の生徒です。この生徒たちは、高校入試、大学入試ともに日本語で挑みます。授業は、文法を説明して、文を日本語に訳させたり、逆に生徒の母語に訳させたりするのが普通です。また、1クラスはだいたい60人ぐらいです。

中国の外国語教育でも、近年、コミュニケーション重視が叫ばれるようになってきています。こちらに派遣されてからの2年間、何度も教師研修会を企画したり、出講したりする機会がありました。今の教え方に少しでも新しい風を吹き込めたらと思い、コミュニュケーションを重視したさまざまな教え方を紹介してきました。また、それらの研修会とは別に、日常的な教師研修として市内の中学校に週に1、2度出向いて、先生たちとともに授業をしてきました。

でも、活動を続けるにつれ、現場で、実際にそういった「風」をうまく吹かせるのは大変だともしみじみ感じるようになりました。いろいろ教え方を変えてみたい、工夫をしてみたいと思っている先生もいるのに、です。

理由を考えましたが、その1番大きな理由は"入試(高校入試・大学入試)"だと思うようになりました。中国では、入学試験は人生を決めるほど重要なものです。つまり、入試を目標にした授業が授業が展開されることになるのです。

入試の中身をみると、コミュニュケーション重視と謳いながら、どれくらい知識を正確に身に付けているかという点に重点がおかれていると思います。だから、日本語が全然話せなくても、入試でいい成績を取る生徒もでてきます。

「入試が変わらないと、授業が変わっていかない」と強く思うようになっても、入試はこちらの教育行政の範囲なので、青年教師が直接的に関わることはできません。でも、省単位で行われる高校入試では、入試シラバス作成に派遣先である省教育学院が関係しています。つまり、青年教師がシラバス作成に関して、同僚にさまざまな働きかけをすることはできるというわけです。これはまさに省機関に派遣されなければできない、やり甲斐のある仕事だと思います。赴任当初から聴解問題を改善しようと働きかけ続けてきましたが、今年の高校入試では、聴解問題がついに変わりました。

来学期(2004年秋)から、新指導要領に沿った新日本語教材が全国一斉に使われます。今までの教科書と比べてコミュニュケーションを重視し、日本語教育文法を取り入れた教科書に変わります(これまでは学校文法)。今後、青年教師の活動は、その教科書のさまざまなフォローアップが中心になっていきます。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
吉林省教育学院(教研部門)は、省内の小中学の現職教師再研修、教材研究等の役割を担っている。各科目にそれらを担当する教研員がいる。青年教師は日本語教研員とともに活動をしている。青年教師は、教師研修(研修会・市内巡回指導)・教材作成・高校入試関連業務のほか、日本語資料室運営・ニュースレター発行も行っている。省内に出張したり、地方で研修会をしたりする際は、各地にいる現地の日本語教研員と連携することも多い。
ロ.派遣先機関名称 吉林省教育学院
Jilin Institute of Education
ハ.所在地 中国吉林省長春市人民大街173号
ニ.国際交流基金派遣者数 青年教師:1名

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