世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 目指せ! コンビニ ~北京事務所のとある1日~

国際交流基金北京事務所
日本語教育アドバイザー
有馬 淳一

国際交流基金の北京事務所は、天安門からまっすぐ東に3キロほどの所に位置しています。周辺には、各国の大使館や、オフィスビルがいくつもあり、国際交流基金北京事務所もそうしたビルの一つの中にあります。

私が出勤して毎朝まず一番にするのは、自分の机のコンピュータの電源を入れて、受信メールのチェックをすることです。

今日も20通余りの新着メールが届いています。その中で、コンピュータウィルスの次ぐらいに多いのが、中国の各地で日本語を教えている人からの現地の様子を知らせるメールや、教材や資料についての問い合わせ、日本語・日本語教育についての相談や要望のメールです。

「教えてください」という内容のメールから先に返信を書いていると、ある大学の先生から電話がかかってきました。「新学期から日本語を担当できる人を探しているので、ぜひ紹介してほしい」という依頼でした。

中等教師セミナー参加者と桜の下で記念撮影(上海にて)の写真
中等教師セミナー参加者と桜の下で記念撮影
(上海にて)

こんなとき役立つのは、普段から教師会をはじめ多くの人たちから意識的に情報を集めておくことです。心当たりがあればさっそく紹介できるのですが、今のところちょっと思い当たる人がいないので、事務所図書室にある「日本語教育掲示板」に貼り出すことにしました

そうそう、北京日本語教師会のメーリングリストを活用して、求人情報を流すという手もありました。それまでは、月に1回程度、事務所の会議室に北京市内の日本語教師が集まって、毎回さまざまなテーマで発表していたのですが、今年インターネットを利用した会員同士のメーリングリストを立ち上げました。そうしたところ、定例の会合には出席できなかった人もネット上で議論に参加し、また北京在住の教師だけでなく遠隔地からも数人の参加があり、これは大きな収穫でした。

再び、メールの返事の続きを書いていると、今度は来客がありました。高校生対象に、新しく選択日本語のコースを開くので、そのコースデザインについて相談したいとのことでした。コース全体の目標や、受講者がどんなことに興味を持っているか、何を必要としているか、いろいろ話を聞いた上で、コースの枠組み・内容についてアドバイスしました。

今日の午後は、現在準備を進めている中学校教師研修会のミーティングの予定が入っていました。私たちが中国で教師セミナーなどの催しをおこなう場合には、必ず中国側の教育機関と共同で実施する必要があるため、常にこうした相手方と連絡を密に取り合って、仕事を進めていくことが欠かせません。

教師研修会の授業風景(吉林省・延辺にて)の写真
師研修会の授業風景(吉林省・延辺にて)

時には、日本的価値観と中国的価値観とがぶつかりあうこともあり、予定どおり話が進まないこともありますが、譲れるところは譲り、主張しなければならないことは主張し、そんな中でお互いに折り合いをつけていく。それは外国で教える場合、どこの教育現場でも起こりうることでしょう。

北京事務所では、定期的にクラスがあるわけではありませんので、年数回の教師研修会や教師セミナーは日本語教師として授業をする数少ない機会です。

以前の研修会で教室活動としてゲームを紹介したことがありました。数か月後、そのときの受講者だった教師の一人の授業を見学しました。すると、授業の最初に見覚えがあるゲームを始めました。

授業後、その教師から「研修会のときに教わりました」と言われました。こんなときが、教師研修をしていて、一番うれしいときです。この先、この地でこの教師の手によっていろいろな学習者がこのゲームを楽しんでくれるといい、そんなふうに思います。

今日の研修会準備ミーティングは、幸い順調に話が進み、授業日程についてはまた来週ということになりました。

机を離れている間に到着していたメールを開いていると、そこに、市内のある学校の先生が訪ねてきました。その先生からは、聴解試験用テープ録音のための協力者探しを依頼されていたのですが、録音本番を目前に試験問題を持参して、内容のチェックを頼もうということのようです。さっそくその問題に目を通しながら、いくつかコメントをしました。

だいたいこういった感じで、北京事務所での一日が過ぎていきます。

学校と教師をつなぐ、教師と教師をつなぐ、教師と教材をつなぐ、その他にも公募プログラムなどいろいろな情報とつなぐなどなど、いろいろな役割があるかもしれません。そのためには、アンテナを巡らして情報を入手したり、セミナーや教師会、広報活動などで情報発信をしたり、メール・電話・手紙・面談などの手段で相談に乗ったり、といった常日頃の業務が下地になることでしょう。

北京事務所付きの日本語教育アドバイザーも5年目に入り、当地でだいぶ存在が認知されてきた面もありますし、まだまだこれからという面もあります。いつの日か、中国における日本語教育のコンビニとなるよう目指していきたいと思っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
1999年度より、専門家を1名派遣している。専門家は、日本語教育アドバイザーとして、各種教育機関・団体と情報交換をおこないながら現地の日本語教育事情の把握に務め、また、中国各地で教師研修会・セミナー・ワークショップ等を実施し、カリキュラム・教材・教授法など各層の日本語教師に対する助言・支援をおこなうのが主たる活動である。さらには、青年日本語教師らとも協力しながら、教師会など各地の教師の自主研修の奨励、教師間のネットワークの形成促進にも力を注いでいる。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation Beijing Office
ハ.所在地 8th Floor, No.2 CITIC Building,
19 Jianguomenwai Ave., Beijing 100004
CHINA

TEL: -86-10-6500-6523, 6500-6524
FAX: -86-10-6500-6526
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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