世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 香港の日本語教育の多様化と年少者に対する日本語教育(2003)

在香港総領事館
山口敏幸

1.香港の日本語教育機関と日本語学習者数

香港の日本語教育関連機関の写真

日本語学習熱が非常に高い当地香港においては、現在7大学で日本語教育が行われている。そのうち、香港大学、香港中文大学の2大学には日本研究学科があり、香港城市大学、香港理工大学では主専攻として日本語教育が行われている。民間の日本語教育機関は、現在把握できている数としては80校ほどであるが、無許可の教育機関等も含めるとその数は相当数にのぼるものと思われる。学習者数については、2万人はいると言われているが、これもまた実数は現在のところ把握できていない。

2.多様化する香港の日本語教育

香港においては、90年代以降、「専門日本語教育」として、特にビジネス日本語コースの導入が続き、この分野での日本語教育は質量共に一応の充実を見たが、近年、香港の専門日本語教育は、ビジネス分野に留まらず、さらに大きな広がりを見せている。例えば、民間の日本語学校では、通常のコースの他に、観光都市香港の事情を反映した、ホテルやレストランの従業員向けの日本語コースや、販売店員向けの日本語コースなどを開講しているところもある。また、カリタス財団系列の「カリタスコスメチックキャリアセンター」では、日本への美容短期留学を目指した美容日本語コースをスタートさせている。
 そして、特に注目に値するのが年少者に対する日本語教育である。

3.年少者に対する日本語教育の現状

近年、日本のアニメやドラマ、音楽などが、特に若年層に広く受け入れられたことにより、当地における年少者に対する日本語教育については、潜在的には相当なニーズがあると考えられている。しかしながら、その受け皿としての、日本語教育を行っている中等教育機関がわずか数校で、しかもほとんどが課外活動として行われているだけという状況であるため、結果として、日本語を学習したいという年少者は民間日本語教育機関等が開いている一般のコースや夏期コースに参加する以外にないという現状である。しかし、残念ながら、そうしたコースはそもそも年少者を対象として作られたコースではないため、必ずしもニーズに合った教育が行われているとは言えない。

そのような状況の中で、昨年9月から、新開地区の順徳聯誼総会翁祐中学校で正規の授業として日本語教育が新しくスタートした。2001年に新設されたこの中学校では、現在1年生と2年生の全学生673名に対し、週2コマ1時間の日本語の授業が行われている。ただし、学習目標、学習時間、日本語教員及び日本語教材など、様々な面で問題を抱えてのスタートであり、当地の日本語教育ネットワークからの全面的な支援が必要な状況となっている。

4.中等レベルの日本語教育支援

香港における中等レベルの日本語の写真

現在、当地香港日本語教育研究会と在香港日本総領事館が中心になって、香港における中等レベルの日本語普及を目指して活動を進めている。一つは、日本語教育研究会による中等レベルの日本語教科書の制作である。研究会では、教材制作チームを立ち上げ、香港独自の中等レベルの日本語教科書の制作に取りかかっている。この教科書が完成すれば、すでに日本語を導入している中学校のみならず、今後、日本語を導入する可能性のある中学校に対しても、その導入を積極的に後押しする効果があるものと考えている。

また、総領事館が取り組んでいるものの一つは、香港政府への働きかけである。当地では、6年間の初等教育終了後、7年間の中等教育期間(義務教育期3年、中期2年、後期2年)が設けられており、中等教育中期から後期に進む際に、統一試験(Hong Kong Certificate Examination)を受けなければならない。しかし、その統一試験の選択科目の中に日本語が入っていないため、政府に対して日本語を入れるよう働きかけているのである。もしこれが実現すれば、中学校が新規に日本語を導入する際の大きな動機付けになるものと期待している。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
 基金は1973年より在香港総領事館広報文化センター日本語講座に専門家を派遣してきたが、2000年2月、同講座が香港日本文化協会に移管されたことに伴い、2001年7月より同総領事館に専門家1名を派遣している。当該専門家は総領事館付日本語教育アドバイザーとして、香港およびマカオの日本語教育機関を訪問し調査を行うほか、香港日本語教育研究会の活動支援を通じた教師研修やネットワーク形成促進を行っている。また、香港日本文化協会日本語講座にも教務面で協力している。さらに、広州で行われた日本研究・日本語教育講演会に出講するなど、その活動範囲は拡がりつつある。
ロ.派遣先機関名称 在香港日本国総領事館
Consulate-General of Japan at Hong Kong
ハ.所在地 46/F, One Exchange Square, 8 Connaught Place, Central, Hong Kong
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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