世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 香港の日本語教育の多様化と年少者に対する日本語教育(2004)

在香港日本総領事館
山口敏幸

中等レベルの日本語普及

恵僑英文中学オープンデーの写真
恵僑英文中学オープンデー

在香港日本総領事館付日本語教育アドバイザーは、政策広報文化交流部に籍を置き、総領事館の管轄する香港、マカオ地区の日本語教育について、その事情調査と各種支援活動を行っている。そして、一昨年度からは、中国本土の広州、シンセン地区も新たに活動の対象となり、活動の範囲が大きく広がっている。

アドバイザーの仕事は、直接日本語を教えるのはほんの一部(香港日本文化協会日本語講座上級クラス、週1コマ1時間半)で、そのほとんどは、日本語学習者と教師を側面から支援する仕事である。やることを義務づけられている仕事はむしろ少なく、当地の日本語教育の発展のためなら何でもやるという「何でも屋」的な仕事である。以下、最近特に力を入れている中等レベルの日本語教育支援活動についてご紹介する。

1.中等レベルの日本語の普及

香港では、現在8つの大学で日本語教育が行われているが、昨年来、いくつかの大学で日本語コースの縮小や廃止の動きが進んでいる。これは、政府補助金の大幅削減によって、短期間に目に見える効果を挙げることがむずかしい語学教育が予算削減の標的になったということのようであるが、こうした状況を受けて、総領事館では、総領事名で両大学長宛書簡を送って日本語コースの存続を要請した。しかし、金銭的協力を伴わない要請だけに、残念ながら大学側から存続についての明確な回答を得ることはできなかった。

このような大学日本語コースの厳しい状況とは反対に、中等レベルの日本語の普及が急速に進んでいる。中学校の日本語教育については、ほんの2,3年前までは、ほとんどゼロに近い状態であったのが、現時点では、すでに22の中学校で、約2000名の学習者が日本語を学んでいる(うち、正規科目としているのは3校、約1400名)。さらに、今後積極的に日本語を採り入れたいという中学校が5,6校あることも判明している。また、民間の日本語学校等においても、中学生向けのサマーコースを新設したり、課外活動としての日本語コースの開設を直接中学校に働きかける(自校からの講師派遣を前提に)など、動きが活発になっている。香港の中等レベルの日本語学習者は、現在のところ、まだ学習者全体の1割にも満たない状況であり、今後の更なる普及のためには解決しなければならない課題も多いが、日本語学習のすそ野を広げることによって大学の日本語を支えるという意味においても、中等レベルの日本語普及は非常に大きな意義を持つと考え、支援を強化しているところである。

2.普及促進のための活動

いきいき日本語1の写真
いきいき日本語 1

中等レベルの日本語普及を促進するために行っている活動としては、まず教材作りが挙げられる。昨年度、香港日本語教育研究会と協力して、中学生向け日本語教科書『一起一起學日語 いきいき日本語』の第1冊目を完成させた。そして、現在、第2冊目の作業を急ピッチで進めている。また、年少者に対する日本語教育の特殊性を考慮し、中学校で教える日本語教師のための日本語教師研修会も実施する予定である。

そうした直接的な支援の他に、総領事館と当地日本文化関連団体が協力して日本語普及のための側面支援を行っている。アドバイザーが所属している総領事館政策広報文化交流部では、今春より、当地で日本語教育を行っている中学校を対象に「日本文化紹介キャラバン活動」を行っている。これは、館の広報文化活動の一環として行っているもので、その目的は、香港の中学校の子どもたちに、日本の文化を紹介し、日本の文化に親しく触れてもらうことによって、日本に対する理解と日本語に対する興味を深めてもらうことにある。具体的な内容は、(1)日本伝統文化のデモンストレーションと体験、(2)日本文化の映像や物品による紹介、(3)日本の伝統的遊びの紹介と体験、(4)日本語ワークショップ、などであるが、すでに、二つの中学校において、それぞれ「日本文化祭」「日本文化館と日本文化パフォーマンス」という形で実施され、現在さらに二つの中学校からオファーがきている。

3.普及の鍵を握る統一試験

中学校の日本語教育の今後の普及の鍵を握るのが、中等教育中期(中学5年)から後期(6年)に進む際に義務づけられている統一試験(Hong Kong Certificate Examination)に日本語を入れられるかどうかである。もし日本語を入れることができれば、普及が一気に進むことが予想されるため、総領事館と日本語教育研究会が協力して、統一試験への日本語の導入を目指した「日本語普及促進中学校連絡協議会」の開催に向けて準備を進めている。また、これまで香港政府教育署と試験局に対して働きかけを行う中で浮かび上がってきた、日本語導入に際しての諸問題(試験の種類や経費等)についても、現地の専門家に意見を仰ぎながら検討を加えているところである。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
基金は1973年より在香港総領事館広報文化センター日本語講座に専門家を派遣してきたが、2000年2月、同講座が香港日本文化協会に移管されたことに伴い、2001年7月より同総領事館に専門家1名を派遣している。当該専門家は総領事館付日本語教育アドバイザーとして、香港およびマカオの日本語教育機関を訪問し調査を行うほか、香港日本語教育研究会の活動支援を通じた教師研修やネットワーク形成促進を行っている。また、香港日本文化協会日本語講座にも教務面で協力している。さらに、広州で行われた日本研究・日本語教育講演会に出講するなど、その活動範囲は拡がりつつある。
ロ.派遣先機関名称 在香港日本国総領事館
Consulate-General of Japan at Hong Kong
ハ.所在地 46/F, One Exchange Square, 8 Connaught Place, Central, Hong Kong
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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