世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 中国遼寧省から(2005)

遼寧省基礎教育教研培訓中心
鳴海佳恵

 中国東北三省(黒龍江省、吉林省、遼寧省)では、歴史的な背景もあって日本語を話せる人材がたくさんいます。中国の中でも特に中等教育段階での日本語教育が盛んな地域で、遼寧省だけで高校36校、中学校94校、小学校12校で、約30,000人が日本語を第一外国語として勉強しています。

最近は、英語教育の重要性が叫ばれ、日本語と英語を選択科目として設置する学校も増え、中等教育での日本語学習者は減少傾向にありますが、それでも全省で600人以上の日本語教師が活躍しています。私の主な仕事は、これらの中国人日本語教師の皆さんとともに、日本語や日本語の教え方について考えることです。具体的には(1)研修会の開催と(2)巡回指導が主な内容です。

(1)研修会の開催

中国で研修会が開催される場合、研修生の交通費、食費、宿泊費もすべて一般的には研修会主催者が負担することが多いようです。英語教師の確保が難しいなどの理由で、農村部では都市部に比較して日本語教育が盛んですが、そのような地域では先生方の給与は決して多いとは言えません。それに、中国では公立の学校も一部の経費を除いた部分は独立採算制のため、貧しい農村部では十分な予算はありません。そのため、交通費や宿泊費などが自己負担の場合、参加できない先生が出てしまいます。日本では、研修会というと研修生が交通費や宿泊費はもちろん、参加費用も払って参加するのが当たり前ですが、中国には中国の事情があるのです。

遼寧省基礎教育教研培訓中心ではジュニア専門家の予算の他に、専門家の予算、国際文化フォーラムや国際協力機構、瀋陽領事館、課程教材研究所などの中国側機関、その他日本の民間企業などの援助も受けて、できるだけ多くの先生に研修会に参加してもらえるように努力しています。2004年7月に赴任してから、下記のような研修会を開催しました。

2004年  7月「中国第一回 小学校日本語教師研修会」
  8月「全国初級中学校新教材研修会」
  9月「阜新市小学校・中学校日本語教師研修会」
  12月「省内初級中学校日本語教師研修会」
2005年 2月「大連市日本語教師研修会」
  4月「高校入試、大学入試対策検討会」

小学校の先生方には、日本語を専門に学んできた人が少ないため、研修会の内容は日本語の知識と日本語の教授法、子供のための楽しい活動を中心にしています。中学校の先生方には、経験が豊富で日本語能力も高い人が多いのですが、文法訳読法で長く教えてこられた方が多いようです。中学校のテキストは、一昨年前から話す能力、聞く能力を重視した活動的なテキストに一新されました。それを受けて、先生方にもテキストに適した教え方をしてもらおうと、教授法を中心に研修会を開いています。高校生の授業は、大学入試を視野に入れているため、どうしても文法中心、暗記中心で、学生は自由に発話する機会が少ないのが実情です。来年度には高校のテキストも改定される予定で、先生方とともに、今までとは違う授業のやり方について考えていかなければなりません。今年度は高校の先生方対象の研修会も開催したいと思っています。

(2)巡回指導

巡回指導で学生と交流(大連)の写真
巡回指導で学生と交流(大連)

日本語教育の活発な地域に一週間程度滞在し、日本語教育実施校を見学します。昨年は、市内、外の朝鮮族の学校を見学する機会に恵まれましたが、漢族の学校は市内の一校にとどまりました。今年4月にようやく大連市、金州区、旅順区の学校を巡回できました。広大な地域に点在している学校をくまなく回ることはできないので、それが残念です。学校では先生方の生の授業を見学したり、学生と交流したりします。先生方が研修会の内容を普段の授業に活かしておられたり、学生が日本語で積極的に話しかけてきたりといった場面を目にすると、やりがいを感じます。

そのほかに、小学生の日本語コンテストや、中学校での模擬授業、入試模擬テストの作成、聴解問題集のテープ作成、各種コンテストの審査員、日本人教師会での活動などに携わっています。

中等教育における日本語教育は、減少傾向にあります。中等教育では、言語選択の基準は高校受験、大学受験に有利か否かに置かれてしまいます。3年生担当の先生方は休日も返上して補講をしておられますが、英語との難易度のバランスは年によって違うため、その結果が翌年の日本語選択者の数にも反映してしまうようです。また、最近では大学入試の際、英語を勉強していないと受験できない学部も出てきています。せっかく日本語を選択してくれた学生が、不利な状況に置かれてしまうのはとても残念です。また、学生の減少にともなって、辞職したり、学校内の事務職に移ることを余儀なくされる日本語の先生もいらっしゃるそうです。こういったことは、大きな流れであり、ジュニア専門家としてはどうすることもできません。しかし、農村部では「日本語の先生はレベルが高く、熱心なので、日本語選択の学生は英語選択学生より大学進学率がいい」といった話も聞きます。もちろん大学進学がすべてではありませんが、先生方の教え方が変わることで、「日本語の授業はおもしろい」「日本語を勉強してよかった」と思ってもらえるように、私自身が勉強して、先生たちとともに日々の授業から工夫していく必要があると感じています。

派遣先機関の情報
イ.遣先機関の位置付け
及び業務内容
省内の中学校、高校の各教科について、教師の技能を向上させるために指導を行う省の機関。各市、各県に進修学校と呼ばれる同様の機関があり、教研員と呼ばれる職員が各科目数人配置される。派遣先には外国語教研部に一人と民族教研部に一人日本語の教研員がいて、青年日本語教師は主にこの二人と協力して業務にあたっている。主な業務は、各種研修会の開催、省内の巡回指導、テキストや模擬テストの作成など。
ロ.派遣先機関名称 遼寧省基礎教育教研培訓中心
Liaoning Basic Education Research&Training Centre
ハ.所在地 中国遼寧省瀋陽市皇姑区46-2 遼寧教育学院招待所5F
ニ.国際交流基金派遣者数 1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
 
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年    
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2002年
(ロ)コース種別
(ハ)現地教授スタッフ
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳    
(2) 学習の主な動機  
(3) 卒業後の主な進路  
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
 
(5) 日本への留学人数  

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