世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ビジネス日本語の「技術移転」と「今後の課題」

日中友好大連人材育成センター
立花秀正

技術移転とは

人材育成センターの玄関の写真
人材育成センターの玄関

日中友好大連人材育成センター(以下「センター」)はオープンしてから3年後の2009年には中国側のみで運営できるようになることを目標にして、現在日本人専門家から中国人講師への「技術移転」が行われている。一般的に「技術移転」というと色々な産業で日本の進んだ技術を外国の技術者に伝授することであるが、センターの日本語分野でいうと、主に「ビジネス日本語の知識並びに教授法」について中国人講師に伝授することを指す。

日本語コースについて

ビジネス日本語上級クラスの研修生との写真
ビジネス日本語上級クラスの研修生と

現地の需要、センターの運営面等々を考慮し、実際には「ビジネス日本語講座」のみならず、「初級日本語」「中級日本語」の講座も開設されている。基本的には「ビジネス日本語」関係と「日本語能力試験1級対策」は私が担当し、「基礎的な日本語」関係と「日本語能力試験2級」は中国人講師が担当している。

「ビジネス日本語」としては、これまでに「ビジネス日本語上級」「ビジネス日本語初級」

BJTビジネス日本語能力テスト対策」を開講した。「ビジネス日本語上級」は「会社における敬語の使い方」「ビジネス会話」「ニュースを聴き取る訓練」を中心に教えている。時間数は当初72時間であったが、現在は48時間である。受講した研修生からは「会社での敬語の使い方の理解が深まったので、よかった」との評価を得た。「ビジネス日本語初級」は「初級日本語」(中国の場合、主に「中日交流・標準日本語初級上・下」を指す)を修了した学習者を対象に基本文法の復習をしながら、「初歩的なビジネス会話」の訓練をしている。

近年、大連において「BJTビジネス日本語能力テスト」が実施されるようになり、本テストに対する関心が高まってきているが、本テストは実施されてから、まだあまり時間がたっておらず、「日本語能力試験」のような「過去問題集」が出版されていない。このため、「対策講座」では現在出版されている数少ない教材を使用しているが、いずれは独自の教材を開発しなければならないと考えている。

日本語コースの「技術移転」

私の主な任務である「技術移転」であるが、当初の計画では授業見学をしてもらい「教える内容」並びに「教授法」を吸収してもらう予定であった。しかし、日本語担当の中国人講師が3名しかおらず、私の授業時間が彼らの授業時間と重なったり、また、彼らが授業以外の業務に追われたりして、これが時々しか実現できない。

これでは「3年後の自立」が危ういので、現在は毎週2回、曜日と時間を決めて「研修会」の形式で自分が持っているものを彼らに伝えるようにしている。

今後の課題

「技術移転」の面は上記の方法で解決したとしても、もう一つの問題を抱えている。それは「ビジネス日本語」の受講を希望する企業並びに研修生が「日本人に習いたい」という要望を持っている点である。いくら優秀な中国人講師が育成されたとしても、研修を受ける側の上記の要望を満たすことはできない。これまでも外部の日本人講師に講義をお願いしたことがある。現在、センターの日本語分野の日本人講師は私一人である。「優秀な日本人講師をいかに確保していくか」が、センターの「ビジネス日本語」の今後の課題である。

派遣先機関の情報
イ.遣先機関の位置付け
及び業務内容
大連で必要とされる日本語人材の育成、日系企業の現地化に対応する「複合人材の育成」を目指している。2006年4月にオープンにしたばかりであり、現在スタッフ全員で基礎固めを行っている。日本語コースの他に経営管理、生産管理、IT分野の3コースがある。他の3コースと緊密に連携をとりながら、研修生の日本語の訓練を行い、ビジネス日本語及び日本のビジネス文化に精通した人材を育成する。研修生の弱点とされている「聞きとり能力」と「会話能力」のアップを念頭に置いて指導している。
ロ.派遣先機関名称 日中友好大連人材育成センター
 
ハ.所在地 中国・大連市沙河口区中長街26号
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
 
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2006年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2006年
(ロ)コース種別
(ハ)現地教授スタッフ
3名(常勤)、但しこのうち2名は通訳、翻訳など日本語コース以外も
担当している。
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   企業の従業員、学生
(2) 学習の主な動機 仕事上必要、日系企業への就職希望
(3) 卒業後の主な進路 日系企業への就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験1~3級程度
(5) 日本への留学人数  

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