世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語と未来を担う子どもたち

遼寧省基礎教育研究研修センター
齊藤 都

1. 遼寧省の初等・中等教育の日本語

中国では第一外国語として日本語を勉強している中学校、高校があります。高校、大学入試の外国語は、英語、日本語、ロシア語から選びます。コンピューターの普及や国際化で英語を第一外国語とする学校が増えていますが、遼寧省では、歴史的背景から日本語ができる人が多いことなどもあり、日本語を第一外国語として勉強している学校があります。また遼寧省は漢族だけでなく、朝鮮族、モンゴル族、満族など少数民族も多く暮しています。朝鮮族やモンゴル族の学校では、母語が民族語(朝鮮語やモンゴル語)、国語が中国語、そしてさらに外国語として英語や日本語を勉強しています。

中国では小学校でも外国語教育を行っています。やはり英語を教える学校が多いですが、日本語を教えている学校もあります。

それから大連の中学校では第二外国語としての日本語教育もはじまりました。

2. ジュニア専門家ってどんなことをしているのか・・・

1)研修会

研修会の写真
研修会

-「どうやって教えれば生徒はよく理解できるだろう」「どうやって教えれば楽しく日本語が勉強できるだろう」「入試でいい作文を書かせるにはどう指導したらいいのだろう」-そんな先生方の日々の悩みを解決するために、研修会を開催しています。先生方のニーズに合った研修会を目指して、講義の内容や活動を考えています。中国の学校はクラスの人数がとにかく多く、40人、50人は当たり前。80人なんてところもあります。また受験に備えて、教えなければならない内容も多いです。それでも一番に考えるのは子どもたちが日本語を勉強してよかったと思えるような授業をしてほしいということです。80人のクラスに思いを馳せて、あの手この手を考えて、いい研修会ができるようにこれからも努力していこうと思っています。

2)巡回指導

巡回先の小学校の写真
巡回先の小学校

普段は遼寧省の省都瀋陽にいますが、ときどき遼寧省内の学校を訪問します。遼寧省の面積は14万5,900平方キロで、北海道+九州+四国くらいの大きさです。とにかく大きいのですべての学校を訪問することはできないのですが、実際に日本語を勉強している子どもたちに会うのはとても大切なことだと感じています。日本人に初めて会ったと言って習いたての日本語で質問してくる子、授業を見学している人がいるからと、張切って手を挙げる子、日本語で歌を歌ってと言う子・・・ こんな子どもたちを見ているとなんだかわくわくしてきます。この学校に来て私が教えたいなあと思ったりもします。巡回指導は現場を見て、先生方に対してどんな支援ができるか、研修会の内容をどうするかなど考えるために行っています。でも巡回の一番の成果は、私が子どもたちから「がんばろう」って気持ちをもらうことのような気がしています。その気持ちを先生方に返していけるように頑張りたいと思っています。

3)テキスト制作

 現在、配属先の日本語の教研員(*日本の教育委員会の指導主事に相当し、教員指導、教材作成などを行う)が小学生のための日本語の教科書を制作しています。すでに1巻から4巻までは出版され、遼寧省を中心に日本語教育を実施している小学校で使われています。中国の小学生と日本の小学生の交流が描かれています。現在は5巻と6巻を制作中で、私はそのお手伝いをしています。場面を決め、どんな文型、語彙を入れるかなどを教研員と相談しています。これも研修会と同じようにこのテキストを使う子どもたちのことを考えながら進めています。

 日本語を勉強した子どもたちが日本に興味をもってくれれば、きっとこれからの中国と日本の関係はもっと良くなると思います。日本語教育を通して、そのきっかけを作れるようにがんばっていきたいと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
派遣先は遼寧省の小中高校の各教科について、教師の技能を向上させるための指導や教材開発を行っている省の機関である。各教科に数名ずつ教研員と呼ばれる職員が配置されている。日本語を担当している教研員は高中(高校)研訓部に1人、朝鮮族教研部に1人配置されており、ジュニア専門家はこの2人と協力して業務にあたっている。主な業務は、教師研修会の開催、省内の学校への巡回指導、テキストの作成、中学、高校入試の模擬問題の作成などである。
ロ.派遣先機関名称 遼寧省基礎教育研究研修センター
Liaoning Basic Education Research & Training Centre
ハ.所在地 No.46-2 Chongshan East Road, Huanggu District,
Shenyang 110032, Liaoning Prov, China
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名
ホ.アドバイザー派遣開始年 2002年

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