世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ビジネス日本語・中上級コースについて

日中友好大連人材育成センター
立花秀正

大連市スピーチコンテストの様子の写真
大連市スピーチコンテストの様子

これまでに様々な機関で中国人に日本語を教えた経験では、「4技能」のうち読・書は優れているが、話・聞が苦手な人が多かった。それは、当地大連でも同様だということが赴任してすぐ分かった。これはこれまでの中国での日本語教育では読・書が重視されており、話・聞の訓練にあまり時間がかけられていなかったことから考えると当たり前の結果だともいえる。

そこで、「ビジネス日本語・中上級コース」ではビジネス関連の知識を教授することは勿論であるが、話・聞の訓練をする時間もできるだけ組み込むようにカリキュラムを作成した。

コース概要

毎週3回(月、水、金)、18:30~20:30(2時間)、全24回、計48時間で、8週間(2ヶ月)で1コースとなっている。2006年4月に赴任して間もなく開いた第1回目のコースは18:00~21:00(3時間)で計72時間であった。しかし、勤務終了後午後6時にセンターに到着するのは時間的に難しい、また、週3回、勤務後3時間も勉強するのは肉体的に負担が大きいという意見が受講生のほうから出たので、2回目以降は上記のスケジュールで実施している。参加者の日本語のレベルは日本語能力試験1~2級であるが、話・聞の能力を伸ばしたいという希望が多い。

カリキュラムについて

ビジネス日本語というと何か特別な日本語が存在するように思われているが、私はそうは思わない。一番重要な点は「日常生活において、親しくない人、初対面の人と礼儀正しい日本語でどれだけ話ができるか」ということだと考えている。会社での会話、すなわちビジネス日本語はその延長線上にあるのだと思う。

そこで、カリキュラムの中心に「敬語」を据えている。講師の説明を聞くだけでは定着がよくないと考えられるので、敬語演習という形で受講者が自分で問題を解くようにしている。その後、講師が解説する形式で授業を実施しているが、このやり方は受講生からの評判もいい。

会話力をアップするためにはビジネスの各場面における会話練習をしている。例えば、許可、依頼、誘い、電話、アポイント、提案・申し出、説明、意見、賛成、反対、説得、クレームなどの場面での会話を敬語の使い方を中心に指導している。

会話ではアクセントとイントネーションが重要なので、授業ではこの点の指導にも力を入れている。

話と聞は車の両輪のようなもので、片方の能力だけ伸ばすより、両方同時に訓練したほうが効果的なので、聞の訓練として、日本語のニュースを聞いて、話のポイントが聞き取れるようになるための練習をしている。

48時間という短い時間ではあるが、2ヶ月前には話すのがたどたどしかった受講生がある程度の速さで滑らかに話せるようになったのを見るたびに、やりがいを感じている。

今後の課題

人材育成センターの中国側スタッフの写真
人材育成センターの中国側スタッフ

日中友好大連人材育成センターの運営開始から1年8ヶ月後に中国人カウンターパート(CP)の人事異動があり、技術移転が一時停滞した時期もあったが、現在は順調に行われている。彼らがビジネス日本語・中上級コースを部分的に担当できるようになる日も近い。最終的には全ての授業を担当できるようにするのが目標である。

しかし、企業からは「日本人講師に習いたい」という要望が絶えない。「中国人講師が優秀であることを企業にどうやって認めてもらうか」というのが、今後の課題といえる。

派遣先機関の情報
イ.遣先機関の位置付け
及び業務内容
大連で必要とされる日本語人材の育成、日系企業の現地化に対応する「複合人材の育成」を目指している。2006年4月にオープンして2年が経過した。2009年4月からは中国側のみで運営できるように、現在,技術移転を行っている。日本語分野の他に経営管理、生産管理、ソフトウェア開発の3分野がある。他の3分野と緊密に連携をとりながら、研修生の日本語の訓練を行い、ビジネス日本語及び日本のビジネス文化に精通した人材を育成する。特に、研修生から要望が多い「聞きとり能力」と「会話能力」のアップを念頭に置いて指導している。
ロ.派遣先機関名称 日中友好大連人材育成センター
 
ハ.所在地 中国・大連市沙河口区中長街26号
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
 
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2006年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2006年
(ロ)コース種別
(ハ)現地教授スタッフ
2名(常勤)、但し、このうち1名は教務主任でもあるので、
全体的な仕事もしている。
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   企業の従業員、学生
(2) 学習の主な動機 仕事上必要、日系企業への就職希望
(3) 卒業後の主な進路 日系企業への就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験1~2級程度
(5) 日本への留学人数  

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