世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 遼寧省の日本語教育

遼寧省基礎教育研究研修センター
齊藤 都

日本語の教科書の写真
日本語の教科書。中国語版と朝鮮語版。

国際交流基金2006年海外日本語教育機関調査によれば、中国の初等、中等教育の日本語学習者数は76,020人です。そのうち東北3省(黒竜江、吉林、遼寧)が約60%を占めています。東北3省の中でも遼寧省は初等、中等教育での日本語学習者が最も多い省です。

遼寧省には、漢族のほかに、朝鮮族、蒙古族などの少数民族が暮しています。そして民族学校もあります。朝鮮族の学校では朝鮮語、蒙古族の学校ではモンゴル語で授業が行われています。それから教科書も中国語版のほかに朝鮮語版も出版されています。このような多様性あふれる遼寧省で小学校、中学校、高校の日本語教育の支援を行っています。

担当業務について

1.研修会の開催、出講

私が瀋陽(遼寧省の省都)に赴任した2007年夏に高校の日本語の教科書が新しくなりました。そのためこの2年間高校の先生を対象にした研修会を開催しました。研修会では、以前の教科書と新しい教科書との違いについて考えたり、教案を書いて模擬授業をしたりしました。それから、大学入試対策の研修会も行いました。中国の大学入試では外国語は英語、日本語、ロシア語から選択します。高校で日本語を学んでいる生徒はもちろん日本語で受験します。そのため高校での日本語教育の一番の目標は大学入試で高得点を取るということになります。大学入試問題はなかなか難しいので、先生でも間違ったり、分からなかったりすることもあります。そのため研修会では過去問やジュニア専門家が作成した模擬問題を先生方がまず解いてみて生徒にきちんと説明できるようにします。

第一外国語としての日本語のほかに、現在大連市の中学校で第二外国語としての日本語教育が盛んになってきています。大連教育学院と国際文化フォーラムが毎年夏に開催している大連市中学校日本語教師研修会にも出講しました。第二外国語の日本語を教えている先生は他教科が専門であることが多く、研修会では先生方自身の日本語力アップを目的とした活動も行いました。

2.巡回指導

巡回先の高校の写真
巡回先の高校で。

年に数回ですが遼寧省内の学校の巡回指導も行っています。巡回指導の目的は実際に授業を見て、具体的にどんなサポートが必要か、研修会では何を行うべきかなどを見つけることです。それからもう1つ、生徒と交流することです。田舎の学校では日本人に会ったことがないという生徒もたくさんいます。そのため巡回指導で学校に行くとよく交流の場が設けられます。教室や講堂に日本語を勉強している生徒が集められ、私は生徒に質問したり、生徒からの質問に答えたり、ときには歌を歌ってくれと言われたりもします。生徒が一生懸命日本語で質問したり、私が話す日本語を必死で聞き取ろうとしたりしているのを見ると、私もがんばらなくてはと思います。

3.小学生用日本語教科書の制作

現在遼寧省などの小学校で使われている教科書は、派遣機関の日本語教研員(日本の教育委員会の指導主事に相当)が編集し出版された「小学日語教材」第1冊~第4冊です。この教科書の編集時は小学校での外国語教育は小学3年生から行われていました。しかしその後小学1年生から行うようになったため、現在の全4冊から全6冊の教科書にするべく日本語教研員と協力し教科書の編集を行っています。今年度には全6冊になる予定です。

遼寧省の初等・中等教育の日本語教育は減少傾向にありますが、第二外国語としての日本語教育を実施する学校、中学は英語を学んでいた生徒に、高校から入試のために日本語を学ばせる学校、中学1、2年生では日本語も英語も勉強し、3年生でどちらかを選択させるという学校など日本語教育が多様化してきています。そのため支援の方法もそれぞれのニーズにあったものでなければならないと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
派遣先は遼寧省の小中高校の各教科について、教師の技能を向上させるための指導や教材開発を行っている省の機関である。各教科に数名ずつ教研員と呼ばれる職員が配置されている。日本語を担当している教研員は高中(高校)研訓部に1人、朝鮮族教研部に1人配置されており、ジュニア専門家はこの2人と協力して業務にあたっている。主な業務は、教師研修会の開催、省内の学校への巡回指導、テキストの作成、中学、高校入試の模擬問題の作成などである。
ロ.派遣先機関名称 遼寧省基礎教育研究研修センター
Liaoning Basic Education Research & Training Centre
ハ.所在地 No.46-2 Chongshan East Road, Huanggu District,
Shenyang 110032, Liaoning Prov., China
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名
ホ.アドバイザー派遣開始年 2002年

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