世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 中国における日本語教育の促進

国際交流基金北京日本文化センター
王崇梁 佐藤修

1.中国大学日本語教師研修会

第四回中国大学日本語教師会開会式の写真
第四回中国大学日本語教師会開会式

「このような研修会に参加したのは久々です。参加者同士が互いに学習し、助け合ってともに前向きになったような気がしました。研修の内容を自分の授業に生かしたいと考えています」「たいへん充実した有意義な研修会でした。今後もぜひ続けていただきたいです。もし、分科会がもっと多く設置されれば、さらに効果的だと思います」。

以上は北京日本文化センターと中国教育部高等教育出版社が共催する「中国大学日本語教師研修会」の事後アンケートに書かれた研修参加者の感想の一例である。

2006年の日本語教育機関調査(国際交流基金)によると、中国の日本語学習人口は68万人余りに上る。その内、約6割の41万人は大学で日本語を学習している学生である。近年、さらに職業大学や専門大学(3年制短期大学)において日本語学科の設置が増加している。「中国教育部高等学校高職高専其他語言類専業教学指導委員会」によると、現在、日本語専攻のある短期大学だけでも200校以上に達している。よって、中国の大学で日本語を学習している人数は2006年の調査より更に増加していることが予想される。

質疑応答の写真
質疑応答

日本語学習の目的やスタイルもより多様化している。中には、一部ではあるが、大学に来ても落ち着いて勉強できない学生も増えているそうだ。大学教師から「今の大学生の素質はかなり落ちている」「以前の学生はほっといてもよく勉強していたが、今は……」という嘆きも最近よく聞こえてくるようになった。教師は学生に学習目的を持たせることまで仕事になり、授業にしても楽しく日本語を勉強させる工夫をしなければついて来てくれない。これまでは学校から指定された教科書を使って構造シラバスによる文型積み上げ式授業をするだけでも十分だったが、今はかなり限界を感じているそうだ。

中国大学日本語教師研修会は、2006年から昨年(2009年)まで計4回開催され、840名の大学教師が参加した。

研修会では、教師たちのニーズに応えるため、日本語教育における最新の言語学、日本語教育学に関する研究紹介などのほか、授業実践を中心とする「精読模擬授業」や「学生が主体的な授業参加を目的とする」教授活動などを取り入れたりしたことで、日々行っている授業に役立つと、教師たちから高い評価を受けた。

今年(2010年)の「第5回全国大学日本語教師研修会」では、研修参加者の要望に一層応えようと考え、一週間の研修期間の約半分を教授法授業や模擬授業にあて、より実践的で、実際の授業に役立てるように努めたいと考えている。

2.中国中等日本語教師研修会

前掲の日本語教育機関調査によれば、中国の中等教育機関は約300機関、学習者数はおよそ7万人である。従来、日本語を第一外国語として教える場合が多かったが、社会全体の英語志向の高まりにより減少傾向にある。今後は、英語に続く第二外国語としての日本語教育が広がっていくのではないかと予想される。

高校教師向けに、北京日本文化センターは年に2回、人民教育出版社と共催で「全国高校日本語教師研修会」を開催している。毎回全国の高校から70~80名程度の日本語教師が集まる。

全体発表の様子の写真
全体発表の様子(2010年3月)

研修会の目的は、新しい高校日本語教材の内容を理解し、その教え方を検討したり、授業の教授能力を高めたりすること。具体的には、講義を聞く以外に、事前課題として用意してきた教案をグループで発表し、分析・検討する。参加者は皆とても熱心で、意見交換は非常に活発に行われ、規定時間が過ぎても話し合いの熱が収まらない様子であった。

「自分の教え方をもう一度見直すきっかけとなった」等、アンケート結果は好評であった。しかし、もちろん課題も残る。一番の課題は、研修会の目指すところを明確に伝えていくことである。参加者の中には、受身で参加しさえすれば大学入試対策用問題集など役に立つものを与えてもらえると思っている方もいたが、この研修会は、「参加者が自ら成長できる場、自ら日本語能力や教授力を高められる場」を目指している。

文化体験講座での盆踊りの写真
文化体験講座での盆踊り(2009年8月)

こうした研修会を行っていて嬉しいのは、研修会で紹介したことが、参加した先生方の教育現場で活用されているのを目にするときである。例えば、ある学校の日本文化体験イベントでは、2009年夏の研修会でJICA青年海外協力隊員が担当した文化体験講座を基にした浴衣の着付けと盆踊りが行われていた。しかも、単に同じことをしていたのではなく、生徒がグループで調べてスライドを使って発表する、調べ学習に発展させたものになっていた。また、そこで使われた浴衣や下駄などは北京日本文化センターの文化用品貸出プログラムを利用しており、さらに日本語専門家も盆踊りや阿波踊りを指導したので、北京日本文化センターの事業やリソースがフル活用された例であった。

これからも、一層充実した研修会を先生方といっしょに作っていけたらと思っている。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Beijing
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
中国の日本語教育事情についての情報収集のほか、中国各地で教師研修会・セミナー・ワークショップ等を実施し、カリキュラム・教材・教授法など各層の日本語教師に対する助言・支援などの活動を行っている。さらには、教師会など各地の教師の自主研修の奨励、教師間のネットワークの形成促進にも力を注いでいる。
所在地 #301, 3F, SK Tower Beijing, No.6 Jia Jianguomenwai Avenue, Chaoyang Beijing ,CHINA,100022
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1999年

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