世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 香港に日本語教育アドバイザーとして着任して

香港日本語教育研究会
宇田川 洋子

香港に着任してまだ2カ月の時点でこの文を書いていますので、まだまだ香港の日本語教育事情を充分に把握したとは言えないのですが、これまでに経験した範囲でお話ししたいと思います。

研究会月例会でのグループ作業の写真
研究会月例会でのグループ作業

私の勤務先である香港日本語教育研究会(以下、研究会)は、香港の日本語教育の拠点です。会員は、大学・小中高校・民間の日本語学校の先生方、日本語教育に関心のある方などから成っています。そこで、研究会では、会員のさまざまニーズに答え、また、香港の日本語教育全体を支援できるよう、幅広い活動を行なっています。例えば、先生方を対象にしたセミナーやワークショップ、日本語学習者を対象にした中高校生日本語スピーチコンテスト、内外の日本語・日本研究の研究者が参加する国際シンポジウム(香港城市大学との共催)、先生になりたい人のための教員養成研修などを企画実施するほか、香港及びマカオでの日本語能力試験の実施や紀要の発行なども行なっています。このような活動に、日本語教育アドバイザーは、講師、審査員、実行委員など、いろいろな役割で協力しています。最近では、研究会の月例会で、日本語教育に役立ちそうなウェブサイトをテーマに、研究会理事の先生がたお二人といっしょにワークショップのファシリテーターを務めました。

香港大学イベントでの詩の朗読の写真
香港大学イベントでの詩の朗読

香港に来ておもしろいなと思ったことを一つご紹介しましょう。今まで7回国際交流基金の専門家として海外に派遣され、どの土地でも弁論大会に関わったのですが、香港で初めて、「詩の朗読」というカテゴリーの審査員を務めました。しかも、この2カ月の間に、研究会主催の「中高校生のスピーチコンテスト」中学生部門と、香港大学日本研究学科のイベント「日本の月」の中の「詩のボクシング」という、2つのコンテストの審査員を依頼されたのです。どちらのコンテストも優秀な出場者ばかり、しかも、「詩のボクシング」のほうは自作の詩を披露するというもので、感心すると同時に新鮮な経験でした。考えてみれば、高校のころ漢詩を勉強したことが思い出され、中国文化における詩の重要性が外国語教育にも影響しているのだろう、と考えさせられました。「中高校生のスピーチコンテスト」では、来年は、小学生にまで範囲を広げ、詩の朗読をしてもらおうかという意見が出ているようで、どんなパフォーマンスが見られるのか、今から楽しみです。

着任後しばらくは香港の日本語教育事情を把握するのに時間が必要でしたが、のんびりしてはいられません。特に、2011年から日本語が選択科目で受験できるようになった統一試験(日本の「センター試験」に似たようなもの)に関連して、中学高校の先生の支援をどうしたらいいのかが大きな課題です。まずは先生方を対象としたワークショップを企画しているのですが、ここで先生方と相談し、今後の活動計画を練りたいと思っています。また、他の日本語教育機関や団体の事業にも協力しネットワークを拡充することも、派遣専門家のたいせつな業務の一つですから、これからいろいろ活動範囲を広げて行きたいと思っています。

世界のあちこちで日本語アドバイザーとして働いてきましたが、共通しているのは、業務の多様さです。子どもから社会人まで、入門から上級までの日本語教育に関する知識や技能が必要とされ、世界の日本語教育に関する情報を提供し、教員研修やシラバス作りやイベント実施など、さまざまな活動に関わります。また、これらの仕事は一人でできるわけではなく、任地の先生方の協力がなければ、いい結果は生まれません。ですから、柔軟性、協調性、創造性をキーワードに、香港の日本語教育発展に貢献できるようがんばりたいと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Society of Japanese Language Education, Hong Kong
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金は1973年より在香港日本国総領事館広報文化センター日本語講座に日本語専門家(以下、専門家)を派遣してきたが、2000年2月、同講座が香港日本文化協会に移管されたため、2001年7月からの専門家派遣は同総領事館の日本語教育アドバイザーとしての派遣となった。2005年、香港日本文化協会内にあった香港日本語教育研究会(以下、研究会)の事務所設立に伴い、2006年1月より専門家の派遣先を研究会に変更した。日本語教育アドバイザーとして当該専門家は、香港・マカオ・中国華南地域の日本語教育機関に協力して日本語教育の支援を行なうほか、教師研修やネットワーク形成促進に努めている。
所在地 Rm701-2, 7/F., Marina House, 68 Hing Man Street,
Shau Kei Wan, Hong Kong
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2006年

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