世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)さらなる発展のための「場」を!

香港日本語教育研究会
山下直子

香港の日本語学習者は2万人以上です。しかし、日本・日本語に興味関心を持っている人はその数倍ではないかと感じています。2015年、香港の訪日旅行者数は150万人を超え、過去最高を記録しました。リピート率も高く、なんと5人に1人が日本を旅行したということだそうです。街中には日本食、日本製品があふれ、地元の小さなお店でも「ありがとう」と笑顔で言ってもらうと、私も笑顔になります。

そのような香港で、香港日本語教育研究会(以下、研究会)は日本語教育の普及促進、発展のために様々な事業を行っています。私は日本語アドバイザーとして、研究会での様々な事業に携わっていますが、今回その一部をご紹介したいと思います。

日本語を学ぶ小中高生

香港小中高生日本語スピーチコンテスト 朗読劇の画像
香港小中高生日本語スピーチコンテスト 朗読劇

近年、学習者の低年齢化、幼稚園や小学校低学年から日本語学習をはじめている学習者が増えています。また、香港の大学入試のための試験Hong Kong Diploma of Secondary Educationの選択科目として、日本語を選択する受験者数も2011年試験開始以降、増加し続けています。

小中高生への日本語教育はさらに注目され、支援の充実・強化が求められるでしょう。

日本語を学習している小中高生のために、研究会は「香港小中高生日本語スピーチコンテスト」を主催しています。年少者への日本語普及を目的にこれまで12回開催しています。

コンテストは、小学生による詩の暗誦、中学生による詩の暗誦および朗読劇、高校生によるスピーチと4部門に分かれています。日本語アドバイザーは、課題となる詩や朗読劇の選択、予選から本選における審査員などを担当しています。

多数の応募者の中から予選を勝ち抜いた出場者達は堂々としていました。抑揚ある感情豊かな詩の暗誦、役になりきりチームワーク抜群な朗読劇、流暢にしっかりした意見を述べるスピーチは、小中高生の外国語による発表とは思えないほど、大変すばらしいものでした。2016年のコンテストでは、香港で日本語を学ぶ学生と、香港で暮らしている日本人学生との座談会がステージ上で設けられました。同世代ならではの話題で、日本語で冗談を交えながらのやりとりが繰り広げられ、すばらしい交流の場となっていました。

日本語を教える先生

日本語教師セミナーの画像
日本語教師セミナー

研究会の日本語教師への支援のひとつは、日本語教師研修会・セミナーの開催です。これまでは、未経験または経験の浅い教師を対象にした直説法による実習が主な内容でしたが、2016年より教師研修を終えた教師、現役教師を対象にしたワークショップ形式へと改変しました。セミナーは、日本語教師としてより一層スキルアップするとともに情報交換、交流の場となることを目指しています。日本語アドバイザーは日本語教師セミナーの企画、講義などを担当しています。

セミナーでは、テーマについて参加者同士で考え、意見交換、情報共有することを中心に進めています。参加者は、話し合いから一人では気づかなかった新たな視点を得たり、共通の課題から解決策を見出したりしています。ひとり日々の授業に対する悩みを抱えている教師は少なくありません。研究会でのセミナーが、教師同士の交流の場、教材や教授法の改善など授業のためのアイデア拡充の場となれば嬉しい限りです。

今後に向けて

香港にはすでにレベルの高い学習者、教育熱心な先生がたくさんいらっしゃいます。学習者への奨学金、先生へのセミナーなどこれまで続けてきた日本語教育への支援充実・強化はもちろんですが、さらなる発展も求められています。そのためには、学習者や先生の交流、意見・情報交換、ネットワーク形成などいろいろな形での「場」を提供することが大切ではないかと思います。香港の事情を熟知した先生また研究会と協力し、香港独自の日本語教育発展に貢献できればと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Society of japanese Language Education HongKong
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金は1973年より在香港日本国総領事館広報文化センター日本語講座に日本語専門家(以下、専門家)を派遣してきたが、2000年2月、同講座が香港日本文化協会に移管されたため、2001年7月からの専門家派遣は同総領事館の日本語教育アドバイザーとしての派遣となった。2005年、香港日本文化協会内にあった香港日本語教育研究会(以下、研究会)の事務所設立に伴い、2006年1月より専門家の派遣先を研究会に変更した。日本語教育アドバイザーとして当該専門家は、香港・マカオ・広州の日本語教育機関に協力して日本語教育の支援を行なうほか、教師研修やネットワーク形成促進である。
所在地 Rm701-2, 7/F, Marina House, 68 Hing Man Street, Shau Kei Wan, Hong Kong
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2006年
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