世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)香港と日本をつなぐ!

香港日本語教育研究会
山下直子

香港における日本語専門家は、日本語アドバイザーとして、受け入れ機関である香港日本語教育研究会(以下、研究会)での事業支援をはじめ、日本語教育機関を訪問し、現地日本語教師や学習者を支援する業務も行っています。業務を通じて日本語、日本に興味を持っている香港の人々に出会いますが、最近は特に若い学生や子どもたちに出会うことが多くなりました。そして、彼らは日本語や日本文化を体験できるような交流の機会を望んでいます。

日本学園文化祭

日本学園文化祭:剣道の画像
日本学園文化祭:剣道

研究会では、2017年5月新たな事業のひとつとして「日本学園文化祭」を実施しました。子どもたちのニーズに応え、日本風の学園文化祭で、気軽に日本語や日本文化に触れて体験し、その理解を深めてもらう機会を提供することが目的です。毎年研究会が主催している「香港小中高生日本語スピーチコンテスト」と同時開催となりました。メイン会場のステージ上では剣道やけん玉、尺八演奏などのパフォーマンス、17の教室やブースでは、浴衣の着付けをはじめ、折り紙、風呂敷、日本語授業などの体験教室を開きました。香港の子どもたちにとって、日本のアニメやゲーム、両親との旅行を通じて触れる日本語や日本文化はいまや珍しいものではありません。しかし、アニメやテレビで見たような学園祭の体験機会はまだまだ多くないでしょう。会場には香港の子どもたちとその保護者だけでなく、日本人親子も参加し、入場者は800名を超えました。会場はとてもにぎやかで、まぶしい笑顔が溢れていました。

香港の高校生と日本の大学生との交流会

交流会:日本文化紹介クイズの画像
交流会:日本文化紹介クイズ

国際交流基金には、日本国内の大学等で日本語教育を専攻する学生をインターン(日本語教育実習生)として海外の日本語教育機関に派遣するプログラムがあります。毎年日本各地の大学生が採用され、海外の受け入れ連携学校で実習しています。このプログラムによるインターン生は香港にも毎年派遣されていますが、自らが日本語の授業をするだけでなく、現地の学生と交流することも望んでいます。そこで、やはり同じように日本人との交流の機会を望んでいる地元高校生との交流会の実施を支援しました。

この交流会では、まずインターンが作成した日本文化紹介クイズが行なわれました。テーマは日本で流行っているファッションや食べ物など、4つのジャンルからの出題でした。現地の高校生たちはクイズの回答に迷いながらも次々と正解を出し、いまどきの日本の流行をよく知っている様子にはとても驚かされました。その後は小さなグループに分かれての意見交換会を行いました。はじめはお互い恥ずかしそうでしたが、さすが同世代の若者です。すぐになじみ、楽しい時間はあっという間に終わりの時間を迎えていました。

熱い想いのために

2016年、香港の公共図書館で借りられた本ベスト10(成人小説以外の中国語書籍部門)中9冊は旅行本でしたが、そのうちなんと7冊は日本旅行の関連本でした。実際180万人以上、4人に1人が日本を旅行し、2015年の過去最高記録も更新、ますます日本への関心は高まっています。子どもたちだけでなく、香港の人々の日本、日本語への熱い想いを日々肌で感じている私は、香港と日本をつなぐ仕事、役割にやりがいを感じています。今回ご紹介した日本文化に触れる機会や交流会の実施に携わることは、日本語教育の支援にもつながると思っています。香港の人々の熱い想いにどう応えるか、香港と日本のさらに強いつながりのために日本語アドバイザーとしてすべきことはまだまだたくさんあります。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Society of Japanese Language Education HongKong
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金は1973年より在香港日本国総領事館広報文化センター日本語講座に日本語専門家(以下、専門家)を派遣してきたが、2000年2月、同講座が香港日本文化協会に移管されたため、2001年7月からの専門家派遣は同総領事館の日本語教育アドバイザーとしての派遣となった。2005年、香港日本文化協会内にあった香港日本語教育研究会(以下、研究会)の事務所設立に伴い、2006年1月より専門家の派遣先を研究会に変更した。日本語教育アドバイザーとして当該専門家は、香港・マカオ・広州の日本語教育機関に協力して日本語教育の支援を行なうほか、教師研修やネットワーク形成促進である。
所在地 Rm701-2, 7/F, Marina House, 68 Hing Man Street, Shau Kei Wan, Hong Kong
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2006年
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