世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)2017年中国全国中等教育二外及び校本課程日本語教師研修会

国際交流基金 北京日本文化センター
王崇梁 髙﨑三千代 藤井舞 浦井智司

北京日本文化センター(以下、JFBJ)と中国人民教育出版社課程教材研究所日語課程教材研究開発中心(以下、人教社)が共催で、2017年11月25日、26日に北京日本文化センターにて、2017年中国全国中等教育二外及び校本課程i日本語教師研修会を開催しました。

参加者は第二外国語(以下、二外)及び校本課程として日本語教育を実施している中等教育機関の日本語教師です。

研修目標は以下の四つです。

(1)中等二外日本語教育の推進
(2)異文化理解に関する日本語の授業の質的向上
(3)『艾琳学日语』(通称中国版エリン)の使用促進
(4)教師間のネットワーク形成

研修会には中国全土11の省、市、自治区(江蘇省、浙江省、山東省、遼寧省、吉林省、広東省、河南省、北京市、天津市、上海市、内蒙古)から25名の教師が参加しました。

研修参加者によるポスター発表の写真
研修参加者によるポスター発表の様子

これまで、JFBJは中国の中等における二外日本語教育に対し(1)教材の充実、(2)シラバスの整備、(3)二外日本語教師への支援の3点を優先策に挙げて事業を実施してきました。例として、2013年に『エリンが挑戦!にほんごできます。』の中国版として『艾琳学日語』の出版、「艾琳学日語(二外日語・校本課程教材)」の作成、中国各地で「『艾琳学日語』普及研修会」及び「東北三省中等二外推進モデル校支援プロジェクト」の実施などが挙げられます。 本研修会では二外の日本語授業で文化の扱い方を中心に、「文化を教える授業のヒント」の講義や『艾琳学日語』の授業体験などを取り入れました。研修参加者は研修会で習った内容や授業活動を自分たちの授業でどのように応用できるかをグループで考え、研修会の最後の日にグループでポスターを作り、発表を行いました。

研修会全体のスケジュールは以下の通りです。

時間 内容
11月25日
(土曜日)
午前 8時30分~ 受付
8時45分~9時 開会式/写真撮影
9時10分~9時40分 講義:「中国の中等教育における二外日本語教育について」
9時40分~10時40分 参加校間の教師交流
10時50分~11時20分 教材紹介:『艾琳学日语』、「艾琳学日語(二外日語・校本課程教材)」
111時30分~12時 授業紹介:二外日本語の授業(長春日章学園)
12時~13時30分 昼食
午後 13時30分~14時50分 講義:「文化を教える授業のヒント」
15時~16時30分 ワークショップ:
「授業体験を通して二外日本語授業とは何か考える」
(1)授業体験 (2)授業ふり返り
16時40分~18時 ワークショップ:「文化理解を深める二外の日本語授業(1)」
18時30分~ 懇親会
11月26日
(日曜日)
午前 8時30分~9時30分 ワークショップ:「文化理解を深める二外の日本語授業(2)」
9時40分~11時 グループ発表、まとめ
11時10分~11時40分 国際交流基金紹介・教師研修紹介
11時40分~12時 アンケート、修了式、修了書授与、まとめ
12時~ 昼食・解散

研修会は実質一日半という短いスケジュールでしたが、研修全体について研修参加者からの評価は以下の通りです。

大変良かった 良かった どちらともいえない あまり良くなかった よくなかった
18 7 0 0 0

また、アンケートの自由記述の部分にも次のようなコメント(抜粋)がありました。

  • 今度の研修会に参加させていただいて、本当によかったと思います。先生の講義も聞くことができ、全国の日本語教師との交流もできました。それに、「文化」についての教え方もいろいろ考えさせられました。
  • 文化理解というテーマで二日間の研修会に参加させていただきありがとうございました。本当にいい勉強になりました。特に、授業デザインが印象深かったです。
  • 大変勉強になりました。全国各地の日本語の先生との交流ができて、とても有意義だと思います。これからも機会があれば、ぜひ参加させていただきます。

以上の評価及びコメントからも研修会に対し全体的に満足度が高く、研修参加者にとって有意義な経験を提供できたものと考えられます。また、研修期間中、参加者は大変勉強熱心で、講義内容(パワーポイント)を写真に撮ったり、講師に質問したりするなど、積極的な姿勢が随所に見られました。

研究会開会式の写真
研修会開会式の様子

人教社とは2000年から中国の初等・中等教育機関の日本語教師を対象とした全国規模の研修会を実施していますが、今回のような二外及び校本課程日本語教師研修会を共催したのは初めてです。これからも継続する予定です。また、研修参加者もこれまでJFBJが開催した研修会に参加したことのない人が多く、『艾琳学日语』のことを知らない参加者も多数いました。これから、『艾琳学日语』を中等の二外日本語教材として普及させるには今回のような研修会を増やし、研修内容ももっと充実させる必要があると思われます。

i 「校本課程」(School-Based Curriculum)とは各学校が決める授業科目のことである。その多くは選択科目と位置付けられている。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Beijing
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
中国の日本語教育事情についての情報収集のほか、中国各地で教師研修会を実施し、カリキュラム・教材・教授法など日本語教師に対する助言・支援などの活動を行っている。また、教師会など各地の教師の自主研修の奨励、教師間のネットワークの形成への促進活動も実施している。教師研修会には、全国大学日本語教師研修会、全国中等日本語教師研修会、日本語教育学実践研修会、全国中等教育二外及び校本課程日本語教師研修会、地域巡回教師研修会などがある。一般成人及び大学生を対象に『まるごと 日本のことばと文化』を使用した日本語講座も開講している。HP以外にSNSを活用して情報発信している。
所在地 #301, 3F, SK Tower Beijing, No.6 Jia Jianguomenwai Avenue, Chaoyang Beijing, CHINA, 100022
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:2名、専門家:2名
国際交流基金からの派遣開始年 1999年
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