世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) オープンしたてのソウル日本語センターに赴任して ―動きつつある韓国の日本語教育―

国際交流基金ソウル日本語センター
坪山 由美子/隈井 正三

日韓国民交流年の2002年、韓国の首都ソウルに、国際交流基金ソウル日本文化センターが正式オープンした。ソウルの中心部に位置するセンターには、文化情報室(約5000冊の図書、約1000本のビデオ、80種類の雑誌を所蔵し、貸し出しサービスをしている)、3つの講義室、多目的ホールがあり、正式開所の1年前よりさまざまな活動が行われている。そして、そのセンターの一部門として日本語センターがあり、そこに二人の派遣専門家と一人の青年教師が派遣されている。日本語センターの業務は多岐に渡っている。上級対象日本語講座の運営、教師対象研修の実施、ニューズレターの発行など、2001年度までの国際交流基金日本語教育専門家の派遣先であった在韓国日本大使館公報文化院での活動を踏襲しつつ、ホームページからの情報発信を始めとする日本語センターとしての新たな活動も加わっている。

韓国の教育機関で学ぶ日本語学習者数は、約95万人で、世界一である。約50人に一人が日本語を学習していることになるが、この数はすでに学習を終えている人、独学の人が含まれていないので、日本語を話す人となると実数はそれをかなり上回ると想像される。ケーブルテレビ局まで含めると4局が日本語講座を放送し、2002年現在日本語関連書籍は、およそ1500種類が出版されている現実からもそれが確信できる。実際、ソウルに生活していると、英語より日本語の方がずっと便利な言語のように感じる。日本語教育に携わっている講師陣を見てみると、大学では日本留学経験のある人が多数いる。また、高校教師では、第七次教育課程(国が定める学習指導要領)の検定教科書12種のほとんどに執筆者として加わっていたり、更に教科書を検定する委員になっていたりと、その活躍の場を広げている人が少なくない。近年の目立った動きとしては、2000年度からの大学入学のための修能試験での日本語の採用、2001年度からの中学校での日本語教育の開始、2002年度からの第七次教育課程の施行、日本・日本語関連の学会の統合化、高校教師の全国ネットワーク化などがあげられる。

と、現状を述べてくると日本からわざわざ専門家が行く必要なんかないじゃないかとなりかねないが、日本からの支援の必要性は未だ以下の2点に関して存在すると考える。

その一つは、「日本語をどう教えるか」ということである。特に高校教師であるが、生徒の勉強離れが目立ち、それを何とかしようとして「楽しい授業のやり方が知りたい。」と言う。確かに日本語学習に積極的になるような工夫は必要であるが、教育における「楽しさ」とは、学ぶことによって知識を得、それを得たことに喜びを感じられるようにすることではないかと考える。そのためには教師自身が知識を深めていく必要があり、それを日本語センターが企画する教師研修などにおいて刺激していくことは必要なことであると考える。

もう一つは、日本語を話す人々の日本理解である。1998年に始まった日本文化開放、ブロードバンドの普及、そして、2002年の日韓国民交流年のさまざまな催しが、開かれた日本観を持ってもらうための助けとなっているが、日本語講座や教師研修においても積極的に取り組むべき課題であろう。しかし、この場合、派遣専門家がどのような「日本」を話すかまたは見せるかが、重要になってくる。派遣専門家自身が日本語や日本文化をどう捉え、どう伝えるかが常に問われる。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 2002年1月に業務を開始し、2002年4月に正式にオープンした。韓国の日本語教育事情を的確に把握するため、資料収集、現状調査を行うとともに、特に中等教育機関の教師の質的向上を図るため、夏期・冬期高校日本語教師集中研修、中学校・高校への訪問授業、地方への出張講義等を行う。また、一般日本語講座としては、民間機関では実施していない上級講座を行っている。2001年より専門家2名を派遣してきたが、2002年6月より青年教師1名を増員派遣し、支援体制を強化した。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation Seoul Language Center
ハ.所在地 3F, 226 Sinmunno 1-ga, Jongno-gu, Seoul 110-061, Republic of Korea
ニ. 国際交流基金派遣者数 専門家:2名 青年教師:1名

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