世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 在釜山日本国総領事館の日本語教育活動

在釜山総領事館
平賀達哉

はじめに

釜山は世界の都市の中でも日本に一番近い、人口400万人近くを抱える港湾都市です。福岡との距離は約200km、対馬までの距離はたった50kmしか離れておらず、冬の天気がいい日には釜山の南端にある影島(ヨンド)という島から手の届きそうなほど近くに見えるほどです。(ちなみに釜山とソウルの距離は約350キロ。)

ラジオ放送も福岡県や島根県からのAM放送がよく届くので、釜山の人たちは日本語を日常的によく耳にしています。これほど近くにある釜山ですから、昔から日本との関わりも深く、全国でも日本語のレベルが高い都市とよく言われています。

日本語講座

日本語講座の授業風景の写真
日本語講座の授業風景

その釜山の中心に在釜山日本国総領事館があります。当館の日本語講座の歴史は古く、講座が始まったのは、1968年の春。まだ日韓国交が正常化されて間もないころで、一般の人が日本語を学べる学校は当時ほとんどありませんでした。開講当時は初級クラスと中級クラスの2クラスのみ。その後、民間の日本語学校が増えていき、地元の教育機関と競合を避けるために、クラスのレベルは次第に引き上げられていきました。それに伴い、学生のレベルも高くなり、講座の修了生は、日本に留学したり、日本語通訳ガイドの試験に合格したり、日系企業に就職したり、また日本語教師になったり、各方面で活躍しています。

今年の春、総領事館の講座は34年間の歴史に幕を下ろし、(社)釜山韓日文化交流協会に移管されましたが、これまでどおり、質が高く、内容の濃い日本語教育を続けていく方針です。

中学・高校教師支援

高校日本語教師支援セミナーの写真
高校日本語教師支援セミナー

現在、日本語講座で直接日本語を教えること以上に比重が重くなっているのが、総領事館の管轄地域の中学・高校で日本語を教える教師に対する支援活動です。当館の管轄地域にある5つの地域(釜山市、大邱市、蔚山市、慶尚南道、慶尚北道)にある高校教師が作る日本語教師会の定例会で、韓国の高校レベルで役に立つ教え方について、セミナーを実施しています。またここでは教える時に役立つ視聴覚教材をはじめ、さまざまなリソースを寄贈しています。

最近韓国では、新しく、学生が科目を選べるなど、学生の主体性を重視した新しい学習指導要領が施行されています。これまで学生に選択権がなかった第2外国語も学生が選べるようになり、これまでその選択が限られていた日本語についても、多くの学生が選択することとなりました。このように日本語担当教師が不足する状態になる一方で、ドイツ語やフランス語の教師の需要が減ることになりました。その問題を解決するために、ドイツ語やフランス語の教師が日本語も教えられるようにする教師研修プログラムが、ここ数年全国的に行われています。当館も釜山市教育庁からの委託により、こういったプログラムに積極的に協力しています。

また中学校でも日本語が選択科目として教えられていますが、ここで日本語を教える先生にも個別に教え方について指導し、また適当な教材を貸し出しています。

ネイティブ講師のネットワーク構築

また当館が管轄している地域には日本語関連学科を持つ大学が50校近くあります。最近ではこれらの大学に少なくとも1人以上の日本語ネイティブ講師が入っています。また日本語学院は数を把握できないほど、無数に存在し、そこにも日本から来た先生方が日本語を教えています。こういった教師はそれぞれの機関で日本語教育に関する情報も乏しい中、孤軍奮闘しています。こういった教師同士が情報交換できる場として、当館に日本語ネイティブ教師の会があります。教師会は毎月1回、定例会を開き、先生方が順番に日本語教育に関する発表をしています。今では毎回40人近い講師が参加するようになるくらい発展しました。

おわりに

以上のように、当館での職務は、直接上級者に日本語を教えたり、中学・高校生という将来の日韓の関係を担っていく世代を教える中学・高校の先生方に日本語の教え方を教えたり、教材を配布したり、日本語を教える先生方が情報を交換し合えるネットワークを作ったりとうように、多岐にわたっています。こういった活動は、短い期間で成果が現れるものではなく、地道に長い期間をかけて支援を続けることにより、当地の日本語教育の発展につながるものだと考えています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 1968年、在釜山総領事館に日本語講座が開設され、1988年から専門家を派遣している。講座開設当初は初級・中級教育のみを実施していたが、民間の日本語学校の成長に伴い、現在では業務を上級コースと高校日本語教師支援に特化、質の高い授業を受けられる講座として地元の高い評価を受けている。2002年春に(社)釜山韓日文化交流協会に移管された後も、専門家は引き続き教務面で協力している。専門家はまた、中等教育日本語教師支援の一環として、同館管轄地域内にある各教師会が主催する研修会に講師として参加、教授法についてセミナーを行っている。2002年6月には、同館に青年教師1名を増員派遣し、支援体制を強化した。
ロ.派遣先機関名称 在釜山日本国総領事館
Consulate-General of Japan at Busan
ハ.所在地 1147-11, Choryang-dong, Dong-ku, Busan, Republic of Korea
ニ. 国際交流基金派遣者数 専門家:1名、青年教師:1名

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