世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日韓の結びつきの強まる中で

国際交流基金ソウル日本文化センター
三原龍志、隈井正三、澤邊裕子

ソウル日本文化センターの写真

日本では韓国の映画やテレビドラマが人気を博し韓国ブームとなっています。日本とは温度差はありますが韓国でも日本大衆文化開放政策を受けて大相撲公演や日本映画の上映、日本人歌手のコンサートが行われるようになりました。また2005年は「日韓友情年」に当たりさまざまなイベントが行われる予定ですが、日韓の人や情報の交流は今後ますます拡大していくことでしょう。

その韓国では、多くの人がいろいろなところでさまざまなメディアを通して日本語を学習しています。学校以外の場も含めると、その数は100万人を超えると思われます。それだけ先生や教材も多く、韓国は世界的な日本語教育大国だと言えるでしょう。また、インターネット大国と言われる韓国では、ITリテラシーの高い先生や学習者も多く、日本語や日本語の授業に関する情報交換やリソースの共有がインターネット上のコミュニティを利用して活発に行われています。その中で、効率よく日本語教育全般をサポートするために、ソウル日本文化センターでは、特に日本語の先生の支援を重視しています。それぞれの先生の手助けをすることが学習環境を整えることになり、結果として学習者の支援にもつながるという考えです。とりわけ学習者人口が多いのは中等教育で、78万人ぐらいの生徒が日本語を勉強しています。したがって、私たちの支援活動も高校・中学の先生が主な対象となっています。

教師研修をしています

ソウル日本文化センターの日本語教師研修の写真

当センター主催の研修としては、学期中の研修(週1回2時間×15週)と夏季・冬季休暇中の集中研修(総30時間)があります。学期中は、高校教授法・中学教授法・日本語の3コースを開講しています。集中研修では、高校教授法・日本語の2コースを提供しています。集中研修(高校教授法)は、釜山派遣の専門家と協力してカリキュラムを検討し、お互いに出講し合って、ソウルと釜山で同じ内容の研修を実施しています。

また、地方の教育庁が主催する研修に対しても、カリキュラム作成や出講という形で協力しています。さらに、中等教育の日本語の先生が作っている全国単位の研究会や各地方の研究会が研修やセミナーを開催するときにも出講しています。

その他、月に1度「日本語教師サロン」を開催し、所属機関や国籍を問わずいろいろな先生と一緒に日本語の授業について考える機会を持っています。また、日常的に電話やメールで日本語の使い方や試験問題についての相談を受けています。

*釜山での研修主催は在釜山日本国総領事館

先生たちと協同作業をしています

たとえば、高校の先生がCD-ROM教材を作成する際のコンテンツ開発に協力しています。また、高校で韓国人の先生と一緒に授業をすることもあります。ただし、これは単に授業をするというのではなく、日本語ネイティブスピーカーとの効果的なティームティーチングの方法を開発することを目的としています。ここで得たアイデアをホームページなどのメディアを通して韓国の先生に広く知ってもらうことで支援につなげたいと考えています。

韓国一の日本語講座を運営しています

当センターの日本語講座は上級者を対象に実施しています。定員は、250名(10コース×25名)ですが、継続受講者を除く新規募集枠に対して常に3倍近くの申し込みがあり選抜に際しては試験を実施してきました。受講理由には「自分の希望する内容だから」「他機関には同様のコースがないから」等を挙げる受講者が多く、コースデザインの意図が反映されているようです。

2004年度後期からは、さらに申し込み手続きの改善と授業の更なる充実を図ることとしました。まず、これまでの選抜試験を廃止して、日本語能力試験1級合格者(過去3年)のみがインターネット上で申し込みができるようにしました。また授業は、これまで以上に、上級以上のレベルにおいて言語技能の伸長を重視した科目を開講することにしました。

韓国の日本語能力試験1級合格者にとって必要な技能や知識とは何か、非常勤の先生たちと共に模索し実践する日々が続きます。

ニューズレターを作っています

上級学習者のために、インターネット上で「カチの声」というニューズレターを年3回発信しています。韓国では昔から、家のそばでカチ(日本名:かささぎ)が鳴くと、良い知らせがあるといわれています。このニューズレターがそんな吉鳥であるカチの声のように、読者にとって喜ばれる便りになればと願っています。読者の日本語および日本に対する理解が深められるよう、内容に工夫を重ね、2002年の創刊以来、読者数はすでに1700名を超えました。

ホームページに連載記事を書いています

当センターのホームページには、さまざまな機関で教える日本語の先生のための連載記事があります。現在の連載は2つ。一つは主に高校の先生を対象としたもので、授業案の紹介を教科書に沿って行っています。授業案は高校で実施したことのあるものだけを紹介し、実際にその授業を行った先生のコメントもつけています。もう一つは、高校の先生に限定せず、日本語教授における映像や新聞などの生の素材を利用するヒントを提供しています。

現場の先生が何を求めているか、発展したIT環境を先生たちの支援のためにどう活用するかについて考えることは私たちのこれからの課題です。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
韓国の日本語教育全般を的確に把握するため、資料収集、現状調査を行うとともに、教師を対象とした支援を大きな柱とした各種支援を実施する。
具体的には、各種中等日本語教師研修、地方高校教師研究会セミナーへの出講及び研究プロジェクトへの協力、高校への訪問授業等である。また、学習者向けには、日本語能力試験1級合格程度のレベルの者を対象とする上級講座を前・後期制で開講している。ホームページや電子ニュースレター等の媒体を活用した韓国全土に向けての情報提供にも配慮し、ソウルとその他の地方の情報格差をできるだけ小さくする努力も行う。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation. Seoul
ハ.所在地 Hungkuk Life Insurance Bldg. 3F, 226,
Sinmunno 1-ga, Jongno-gu Seoul 110-061, Korea
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:2名、青年日本語教師:1名

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