世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) お互いの顔が見える日本語教育を目指して

国際交流基金ソウル日本文化センター
三原龍志、天野千春、澤邊裕子

日韓友情年

今年は日韓友情年にあたりますが、領土問題や教科書問題など手放しで祝うというわけには行かないところもあるようです。しかし、「雨降って地固まる」のたとえもあるように、お互いの顔の見える交流が進めば、より理解と尊重が深まるのではないでしょうか。

顔の見える交流といえば、2004年の訪韓日本人数は前年比35%増の244万人で、訪日韓国人観光客数も初めて100万人を超えたそうです。また韓国の中等教育段階(「数の上で世界一である韓国の日本語学習者」の約87%を占めています)をとってもみても、現行の教育課程の特徴として、中学校では「日本語に興味をもち、日本人の日常生活や生活様式への理解を深める」、高校では「より実用的なコミュニケーション能力の習得や日本文化を理解する姿勢を養う」ことなどが挙げられ、どちらも等身大の日本や日本人像が対象となっていると言えるでしょう。当センターでは、中学校・高校の先生方への研修も行っていますが、今回は事業の中から「日本語講座」を中心に、開発教材、中学校高校の「日本語キャンプ」への協力、リニューアルしたニュースレターに絞って報告いたします。

さまざまな試みを行っています

ボケとツッコミを体験している写真
ボケとツッコミを体験する!

当センターの日本語講座には、上級者を対象とした、技能重視のコースが用意されています。コースは昼4コース、夜6コースあり、定員は20名x10コース=200名。

(科目名:「翻訳」「日本文化」「対話技術」「作文技術」「読解・討論」「聴解と日本語理解」)

受講生は日本語能力試験1級合格を条件に入学した人たちで、その職業は会社員、大学生、主婦、教師…とさまざまです。受講の目的も「仕事・就職のため」、「日本語力維持・向上」、「趣味」と多様ですが、だれもがその日本語力にさらに磨きをかけようと、週2回各100分の授業に通ってきています。4コース修了すると卒業となりますが、開講以来、すでに110名(2004年現在)の受講生が卒業証書を手にしています。1級合格者が受けるのにふさわしい、質の高い充実した授業、そして彼らに必要な技術と知識を提供することを目指し、非常勤の先生方とともに模索し、実践する日々が続きます。

それでは、日本語講座の授業をちょっとのぞいてみましょう。

ここは「対話技術」のクラスです。あれ? 日本語ネイティブもゲストとして参加しているようです。受講生の方々とテーマを決めてディスカッションを行っているようですね。 みなさん、とても積極的に自分の意見を述べています。司会者が困るくらい、白熱しているようです。

隣の教室では、浴衣の着付けを行っています。ここは「日本文化」のクラスですね。とても楽しそうですね。浴衣もよく似合っています。え? 先週は茶道を体験したんですか?講義だけでなく、いろいろな文化にも触れることができて、おもしろそうですね。

おや? その隣の教室からは大きな笑い声が聞こえてきますよ。よく聞いてみると関西弁のような…。ああ、ここは「聴解と日本語理解」のクラスですね。それにしても、関西弁の漫才を聞いて笑うことができるというのは、やはりみなさんの実力は相当なものですね。え? 次の授業にはプロの漫才コンビが講師として来てくれるんですか? 本当に? それは楽しみですね!

『ティームティーチング日本語授業事例集』を作りました

2002年から2004年にかけて、当センター青年日本語教師は韓国人日本語教師と共にティーム・ティーチング(以下、TT)について考え、高校で実践を重ねてきました。その実践例をまとめたものが「TT日本語授業事例集」です。現在、韓国の教育課程では、日本語による意思疎通能力や文化理解能力の育成が重視されており、韓国人教師と日本語母語話者とのTTは今後ますます盛んになることが予想されます。事例集では、実際に日本語母語話者と一緒に授業を行う上で知っておかなければならないことや、TTだからこそ効果的にできる教室活動を紹介しています。この事例集の全内容とさまざまなTTのパターンを紹介した動画は、ホームページでも見ることができます。

『日本語キャンプ』をお手伝いしました

ペットボトルけんだまを作っている写真写真
ペットボトルけんだま、できた!

「授業の一環として『日本語キャンプ』を行いたいので協力してほしい」というリクエストが、ソウル市内の高校と中学校からありました。センター講師と日本人ボランティア数名が参加し、日本の歌、日本語クイズ大会、剣玉作り、日本料理教室などのお手伝いをしました。日本人ボランティアにとっては韓国の中高生の生活や価値観などを知る機会に、生徒にとっては学習した日本語を使ったり日本人と活動したりする機会になり、お互いにとって貴重な体験となったようです。とくにこのキャンプで作った「お好み焼き」「おにぎり」「みそしる」は、韓国にも似た料理がありますが、それぞれの違いを実感することができて好評でした。

カチの声』が進化しました

2002年に創刊されたニュースレターです。年3回、主として上級学習者のためにインターネット上で配信しており、読者数は2005年3月現在、2382名にまで増えました。韓国では昔から、「家のそばでカチ(日本名:かささぎ)が鳴くと吉報がある」と言われており、『カチの声』という名前には、「読者に役立つ情報をもたらすニュースレターになるように」という願いが込められています。また、第8号から誌面を大幅にリニューアルし、より多くの読者に親しまれるよう、案内役として「カチ三兄弟」のキャラクターも登場させました。日本・日本語への理解が深まるよう、『カチの声』はこれからも進化し続けます。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
韓国の日本語教育全般を的確に把握するため、資料収集、現状調査を行うとともに、教師を対象とした支援を大きな柱とした各種支援を実施する。
具体的には、各種中等日本語教師研修、地方高校教師研究会セミナーへの出講及び研究プロジェクトへの協力、高校への訪問授業等である。また、学習者向けには、日本語能力試験1級合格程度のレベルの者を対象とする上級講座を前・後期制で開講している。ホームページや電子ニュースレター等の媒体を活用した韓国全土に向けての情報提供にも配慮し、ソウルとその他の地方の情報格差をできるだけ小さくする努力も行う。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation. Seoul
ハ.所在地 Hungkuk Life Insurance Bldg. 3F, 226,
Sinmunno 1-ga, Jongno-gu Seoul 110-061, Korea
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:2名、ジュニア専門家:1名

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