世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 嶺南地域における日本語教育支援

ソウル日本文化センター(嶺南地域担当)
山口敏幸

天気のいい日には対馬が見えるという、ここ釜山においては、長年、在釜山日本国総領事館内に日本語教育室が置かれ、歴代派遣日本語教育専門家が嶺南地域(注1)の日本語教育を支えてきましたが、昨年8月、総領事館からソウル日本文化センターに所属を変え、新たなスタートを切りました。仕事の内容も、引き続き総領事館内の教室で行われている中等日本語教師職務研修クラスを主たる業務としながらも、よりいっそう外に向けてアドバイザー業務を拡大しつつあります。

中等日本語教師職務研修

このクラスは、現職の中学・高校の日本語教師を対象にした釜山教育庁認定の職務研修クラスです。大学で日本語を専攻した日本語教師を中心とした上級クラスに加えて、もともとドイツ語やフランス語などを専攻していた日本語教師を中心とした中級、中上級クラスの、計3つのクラスを運営しています。期間は、1年間2学期で、各15回30時間です。3つのクラス共に、主として日本語運用能力の向上を目指した内容で、中級クラスでは市販中級聴解教材を使った授業、中上級、上級クラスではNHKのニュースなどを編集したオリジナル視聴覚教材を使った授業を行っています。

もちろん、教師クラスなので、日本語能力を向上させるだけのクラスではなく、同時に少しでも日本語教授能力も向上させることを目指しています。

中等日本語教師集中研修

集中研修(発表)の写真
集中研修(発表)

毎年夏と冬の2回、嶺南地域の中学・高校の日本語教師を対象に集中研修を行っています。釜山とソウルの2会場でそれぞれ1週間ずつ行っていますが、毎回定員を上回る応募が寄せられます。今年の冬のテーマは「文字・語彙・会話の導入と練習を考える」で、普段先生方が行っている授業を振り返り、第7次教育課程で唱えられている「コミュニケーション能力の向上」について、どのような授業が効果的かということを参加者全員で考えました。また、この研修では、先生方同士の情報交換を行うこととネットワークを作ることも、大きな目的となっています。

その他、各地方教育庁が行っている夏季集中研修に講師として出かけていくこともあります。

地方教師会支援

集中研修(料理実習)の写真
集中研修(料理実習)

嶺南地域には、全部で5つの中等日本語教師会がありますが、それらの教師会の活動を支援しています。具体的には、年に何回か各地に出かけていって、日本語や日本文化、日本語教授法について講義やワークショップを行っています。釜山地域の先生方に比べて、地方の先生方は研修の機会が少ないので、依頼があった時には、日程を調整してできるだけ出かけていくことにしています。

中等教育用副教材作成

今年から新たに高校日本語教育向け副教材の作成に取りかかりました。韓国人高校日本語教師と日本人日本語教師でチームを組んで、来年度の完成に向けて作業を進めています。内容は、日本文化理解とコミュニケーション能力向上に役立つ高校日本語教育向けタスク集で、現場教師の日々の負担を少しでも軽くするため、すぐに使えるタスクや素材をたくさん収めたものにしたいと考えています。

中等教育機関訪問

主な業務となっている中等日本語教師研修の内容を充実させるため、時間の許す限り中等教育機関を訪問して、現場の状況を把握するよう努めています。授業のサポート、モデル授業、日本語サロン、学校主催の日本語関連文化行事への参加など、さまざまな形態を考えています。これまで、4つの高校を訪問しましたが、普通高校と実業高校では、同じ教科書、同じ時間数でありながら、雰囲気も学習到達度も大きく異なることがわかるなど、大変貴重な経験となりました。

日本語教育ネットワーク作り

日本語教育室では、中等日本語教育支援が業務の中心となっていますが、中等教育以外の教育機関との連携も視野に入れて活動を行っています。現在、連携を強めているのは、大学、高校、民間教育機関の日本人教師の集まりである釜山日本語教師会です。上に述べた副教材作りも、教師会所属の日本人教師との連携で進めていますし、教師会の月例会に教室を提供するなど、ますます協力関係を深めています。また、日本語弁論大会、日本語演劇祭の審査員や大学での講義など、各大学からの協力依頼に対しても、できるかぎり協力することで、嶺南地域の日本語教育ネットワーク強化につなげたいと考えています。

(注1)嶺南地域:慶尚北道、慶尚南道、釜山広域市、大邱広域市、蔚山広域市の地域。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
1968年以来、在釜山日本国総領事館に日本語教育専門家が派遣され、嶺南地域の日本語教育を支援してきたが、2005年8月より、派遣先はソウル日本文化センター、勤務地は釜山という新たな派遣形態となった。
ロ.派遣先機関名称 国際交流基金ソウル日本文化センター
The Japan Foundation.Seoul
ハ.所在地 Hungkuk Life Insurance Bldg.3F, 226, Sinmunno 1-ga, Jongno-gu Seoul 110-061, Korea
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名(嶺南地域担当)

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