世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 中等学校の生徒と留学生との交流

国際交流基金ソウル日本文化センター
北村武士、長田佳奈子

留学生が発音のモデルをしている写真
留学生が発音のモデルをしています。

韓国では日本語学習者の87%が初等・中等教育機関の生徒です。その生徒数は2003年度の調査では約78万人にのぼり、世界でもっとも多くの初等・中等学校生徒が日本語を学習しています。韓国は日本とは距離的にも近く、高校生や中学生は日本に大変興味を持っています。しかし、テレビや雑誌で日本人の生活を見ることはあっても、生徒にとってはなかなか日本に行くことは難しいし、ましてや実際に日本人と話すチャンスはあまりないのが実情です。

一方、韓国には日本からたくさんの日本語ネイティブ留学生(以下、留学生)が来韓しています。そこで当センターでは、留学生にボランティアとして学校に出向いてもらって、中等学校の生徒たちに実際に日本語で話すチャンスを持ってもらおうと考えました。

実際に留学生と話したり教室活動をしたりすることによって、生徒たちには、(1)日本や日本語への興味を持たせる、(2)日本への理解を促進する、(3)自分の学習した日本語に自信を持たせる、などの効果が予想されます。また留学生の皆さんには、(1)韓国の若者の考え方や生活に接することができる、(2)韓国の教育現場を体験することができる、などのメリットがあり、韓国への理解をさらに深めることもできます。さらに、授業を担当している教師にとっては、日本人を授業に受け入れる体験を通して、新しい授業スタイルを考えたり体験したりする、貴重なチャンスとなるでしょう。

準備期間を経て、実施に向けて動き出したのは2007年2月です。実施は以下のような手順を踏んで進められています。

1)大学で留学生への広報
ソウル市内の14の大学などの留学生にボランティア募集の広報をしました。
2)中等学校への受け入れ募集
ソウル近郊の中等教育機関で日本語を教えている先生方に、受け入れの希望などを調査しました。
3)留学生へのオリエンテーション
ボランティアに応募してくださった留学生24名に、このプロジェクトの説明や簡単なワークショップを行いました。
4)学校と留学生のマッチング
留学生と受け入れ学校の日時の調整を行い、派遣の日時を決定しました。
5)授業の計画相談
受け入れ校の日本語の先生とセンターで、授業計画を相談しました。
6)留学生の学校訪問
5月31日現在、5つの高校へ留学生を派遣しました。7月末までに15の中学および高校で24名の留学生が授業に参加し、述べ50時間の授業で約1800人の生徒と教室活動を行う予定です。

では、ここで留学生に感想を聞いてみましょう。

Aさん 50分が短く感じられ、心残りです。やはり実際に習った日本語を使ってみる機会があまりないせいか、生徒たちの反応はよかったです。これからもっとこの活動が広まっていろんな学校に訪問する機会ができたらなあと思います。

Bさん 韓国の高校に行ったのも、高校生と話をするのも初めてだったのですが、非常に楽しかったです。高校の日本語の先生方も非常にいい方でした。授業では、ただ発音の練習をするだけではなく、実際に対話をしたり、質問コーナーを設けたりなどの工夫がなされていて、とてもよかったです。自己紹介でも結構もりあがりました!

Cさん 韓国の高校に行くのはもちろん初めてのことでしたが、日本の高校とは全く違う雰囲気で、新鮮でした。生徒たちが受け入れてくれなかったらどうしよう……など不安もあったのですが、先生方も生徒たちも暖かく迎えてくれ、嬉しかったです。休み時間にも生徒たちは一生懸命カタコトの日本語で話しかけてきてくれました。日本に関心を持ってくれる生徒が1人でも増えたらいいなと思います。

生徒の手がどんどん上がる写真
生徒の手がどんどん上がります!

授業をやってみた先生方、いかがでしたか。

D先生 留学生は誠実に授業に臨んでくれましたし、生徒たちの留学生に対する反応もよく、とても満足しています。留学生の派遣をもう少し増やしていただいけるといいと思います。

E先生 留学生が参加してくれたおかげで、活発な授業になり、生徒たちも興味津々といった感じでした。短い時間でしたが、生徒がネイティブと会話をする機会をもつことができたのは有意義でした。韓国人と日本人が協力しながら授業をする姿勢を見せられたのもよかったです。

F先生 初めて行うタイプの授業でしたが、大きな失敗もなく無事に終えられました。まだ初級段階なので、生徒は上手に日本語で話すことはできません。ですが、留学生がゆっくり何回も日本語で答えてくれると、生徒は習っていない表現でも自分たちなりに理解しようとしていました。生徒が日本に関心を持ち、日本語をもっと習いたいと思わせるきっかけにもなったようです。生徒に簡単なアンケートをしてみたところ、「もっとこんな機会があったらいいのに!」とか、「これからも留学生と手紙やメールの交換をしたい」という希望が出ました。

7月下旬までの前期に続いて、後期(9月~)の派遣も準備中です。このプロジェクトについては、別の機会に詳しくご報告する予定ですのでどうぞご期待ください。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金からの日本語教育専門家の派遣は2001年に始まり、韓国の日本語教育全般を把握するため、資料収集、現状調査を行うとともに、教師を対象とした支援を大きな柱として各種支援を実施する。
具体的には、各種中等日本語教師研修、地方日本語教育研究会への出講及び研究プロジェクトへの協力、中学校および高校への訪問授業等である。また、日本語能力試験1級合格レベルの学習者を対象とする上級講座を開講している。さらに韓国全土に向けてホームページや電子ニューズレター等の媒体を活用した情報提供も行っており、ソウルと地方の情報格差をできるだけ小さくする努力も行っている。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation. Seoul
ハ.所在地 Hungkuk Life Insurance Bldg. 3F, 226,
Sinmunno 1-ga, Jongno-gu Seoul 110-061, Korea
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:2名(嶺南地域担当除く)

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