世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 異なる機関の教師の交流

国際交流基金ソウル日本文化センター
北村武士・長田佳奈子

国際交流基金の2006年日本語教育機関調査によると、韓国は日本語学習者数が約91万人と、世界で最も日本語学習者が多い国です。さまざまな機関で日本語教育が行われていますが、機関別の内訳でいうと初中等レベルで約76万9千人(84.4%)、高等教育レベル約5万9千人(6.4%)、学校教育以外の一般約8万3千人(9.1%)です。初中等が最も割合が高く、そのほとんどを中等教育が占めています。教師数も中等教育機関が最も多く、韓国内の中等学校の日本語教師数(資格者数)は3004人です(2007年度の数値『2008年教育統計年報』)。

ソウル日本文化センター(以下、センター)は日本語教育の分野では中等教育支援を中心においていますが、その他の機関の方々の支援の一環として、「日本語教師サロン」(以下、サロン)というワークショップを年間8回(3月~6月、9月~12月の月1回)行っています。このサロンは、日本語教師なら誰でも参加できるものです。サロンが始まったのは1999年で、2009年6月で第86回を数えます。ずっと水曜日に開催していましたが、平日だと参加できる方が限られてしまうため、2008年からは土曜日に変更しました。それに伴い、2007年度は20名程度だった平均参加者が、土曜日に開催するようになってからは30名を超えるようになりました。今年度は予約が多く、定員オーバーで新規参加を希望される方をお断りせざるを得ないほどの盛況です。

サロンはさまざまな教育機関の先生が集まって情報交換ができるのが特色です。例えば2009年5月のサロンの参加者の内訳は表1のとおりです。

表1 2009年度 日本語教師サロン参加者 所属機関別内訳
中等教育 大学 学院など 合計
日本語ノン・ネイティブ教師(NNS教師) 16
日本語ネイティブ教師(NS教師) 11 16
合計  20 32

韓国には有志の集まりや中等教師の地域研究会など日本語教師が集まる機会はいろいろとありますが、「中等教師の集まり」「大学教師の集まり」と、機関別の集まりになってしまい、機関の枠を超えた集まりの場がなかなかありません。そのせいもあってか、大学や民間学校の教師が「中等学校で日本語を学んできた学生がどんなふうに学んできたかを知らない」、中等学校の教師が「生徒が大学に行ったらどのように日本語を学習するかを知らない」ということも残念ながらよくあります。また、民間学校で、学習者のニーズに合わせてどのような教育が行われているかも他機関の教師には興味のあることです。サロンでは、先生方が情報交換や交流を通して「他機関の事情を具体的に知る」ことも期待されます。

サロンの流れ

情報交換のあとグループで話し合った内容を紹介しますの写真
情報交換のあとグループで話し合った内容を紹介します
みんなで季語を考えて俳句をつくりましたの写真
みんなで季語を考えて俳句をつくりました

  1. 前半:グループで情報交換

    機関の異なる教師が一緒になるように4~5人のグループを作ります。そして、自己紹介をした後、テーマについて自分の現場の事情を紹介し合います。2009年3月は「ひらがなの指導」、4月は「文化の指導」、5月は「教科書の使い方」について情報交換をしました。グループで話すことによって参加者同士が親しくなるという効果もあります。

  2. 後半:ワークショップ

    ワークショップでは単に知識を身につけるだけではなく、実際に「体験」をしてもらうことも重視しています。「ひらがなの指導」がテーマのときは皆でひらがなゲームをやりました。また「文化の指導」のときは俳句を取り上げグループごとに韓国の季語を考えました。春はケナリ(韓国の春の花)、ファンサ(黄砂)、夏は、サンゲタン(夏ばて防止に食べる)、秋はチュソク(旧盆)、スヌン(修能試験)、冬はキムジャン(キムチの漬け込み)、クンコグマ(焼き芋)など韓国ならではの面白い季語がたくさんできました。

  3. 茶話会

    ワークショップが終わるとお菓子と飲み物で自由に話す時間になります。皆さんなごやかな雰囲気の中、しばしの歓談ののち帰途につきます。連絡先を交換してその後も交流している方もいます。

アンケートから

参加した方々のアンケート(09年5月分)を見ると、「日本語を教えている先生たち、特に日本人先生に会えてうれしかったです」(中等学校NNS教師)、「普段使っている教材について考える機会になってとても役に立ちました」(中等学校NNS教師)、「韓国人の先生と一緒に活動すると、韓国人の立場ではこうだ、ここが分かりにくいからこうするなどの意見を聞くことが出来てとてもいいと思った」(中等学校NS教師)、「授業のすすめ方について色々な意見や高校、その他の機関の方法が聞けてよかった」(大学NS教師)、などの意見が見られました。

アンケートからもサロンが情報交換や交流の場として機能していることが観察されます。こうやって少しずつでも、機関の枠を超えた教師同士のつながりが増えていくことを願っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
韓国の日本語教育全般を把握するため、資料収集、現状調査を行うとともに、教師を対象とした支援を大きな柱とした各種支援を実施する。
具体的には、各種中等日本語教師研修、地方日本語教育研究会への出講及び研究プロジェクトへの協力、中学校および高校への訪問授業等である。また、日本語能力試験1級合格レベルの学習者を対象とする上級講座を開講している。さらに韓国全土に向けてホームページや電子ニューズレター等の媒体を活用した情報提供も行っており、ソウルと地方の情報格差をできるだけ小さくする努力も行っている。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Seoul
ハ.所在地 Hungkuk Life Insurance Bldg. 3F, 226,
Shinmunno 1-ga, Jongno-gu, Seoul 110-061, Korea
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:2名(嶺南地域担当除く)
ホ.アドバイザー派遣開始年 2002年

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