世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 現場の先生方とともに…

国際交流基金ソウル日本文化センター(嶺南地域担当)
小川 靖子

当地での日本語教育支援としての主な業務は、釜山総領事館内の教室で行われる中等日本語教師職務研修、夏冬2回の中等日本語教育集中研修、嶺南地域(※1)の各教師会への出講などですが、今回は「中等日本語教師職務研修」について、受講している先生方の声とともにお伝えします。

中等日本語教師職務研修

授業前の1コマの写真
授業前の1コマ とても和やかな雰囲気です

この研修は、前期・後期の年2回(各15週・計30時間)、現職の中学・高校の日本語教師を対象にした釜山教育庁認定の職務研修で、クラスは3クラス―大学で日本語を専攻した日本語教師を中心とした上級クラスと、もともとドイツ語やフランス語などを専攻していた日本語教師(※2)を中心とした中級、中上級クラスがあります。各クラス週1回2時間の授業では、日本語能力の維持・向上とともに日本語教授法の向上を目指しています。平日の勤務終了後(午後6時から)からの、15週の長期に渡る研修ですが、地域の中学・高校から60名ほどの先生方が通ってきています。

参加している先生方は、教員歴、日本語教授歴、勤務校、大学での専攻などさまざまですが、そうしたさまざまな背景が生かされ、本研修と現場での授業が連環するよう、研修では、日本人講師からの一方向の授業ではなく、お互いの授業実践や授業へのアイディア、また、研修内で扱った教授法や教室活動での反応などの交換・共有を大切にしています。

また、日本語教師の配属数はあまり多くはないため、本研修が先生方にとってコミュニティ的なゆるやかなつながりの場になればと思っています。

中等日本語教師職務研修に参加している先生方の声

各クラスの先生方に、研修についてお話を聞きました。

研修に参加するようになったきっかけは何ですか?

「以前はドイツ語の教師だったため、日本語をもっと勉強するため」(中級クラス・男性)

「日本語教授法を学びたくて」(中級クラス・女性)

「教授法、他の教師との情報交換のため」(中上級クラス・女性)

「総領事館のホームページで見て」(上級クラス・男性)

「日本語専攻だが、さらに勉強する必要性を感じるし、日本語能力維持のため」(上級クラス・女性)

研修に参加して良かったことは?

「日本人の先生から日本語を学べることと、日本事情や日本語能力など日本語への自信がつき、生徒の前で自信を持って授業ができます。火曜日が楽しみ。」(中級クラス・男性)

「これまで体系的に学ぶ機会の少なかった分野を学べること。クラスの和気あいあいとした雰囲気が好き。」(中級クラス・女性)

「自分ではなかなか得られない、授業や日本語についての資料や情報やその使い方を得られるし、日本語能力の向上になる。」(中上級クラス・男性)

「研修には断続的に参加していますが、受講していない時は教科書だけで教えることが多くなり、気持ちに余裕が持てない。ここに来ると刺激がある。」(中上級クラス・女性)

「日本人の先生や、他の先生方にわからないことを質問できるし、互いに相談して解決できる。」(中上級クラス・女性)

「現在の勤務校の学生は日本語への興味関心も高く、研修での資料や実践などを生かして、実際に楽しく授業ができるのがいいです。」(中上級クラス・女性)

「日本語で話し合える機会ができて嬉しい。」(上級クラス・男性)

「日本語や日本についてのいろいろな情報。先生やクラスメートとの出会い。みんなで何でも話し合えるのがいい。」(上級クラス・女性)

現在、日本語を教えているうえでの悩みなどはありますか?

授業風景の写真
授業風景  熱心に課題に取組む先生方

「中学校で教えているので、どうしたら生徒の日本語への関心を高められ、楽しく教えられるかが悩み。」(中級クラス・男性)

「高校では大学入試が第1で、日本語が入試科目としてあまり重要でないため、おもしろく授業をしたいと思っても、学生が日本語の勉強に積極的ではないこと。」(中上級クラス・男性)

「発音指導や、わかりやすい文法の教え方」(中上級クラス・女性)

「どんな方法で教えたら、学生たちがもっとわかりやすく理解し、日常生活で日本語を使えるようになるか。」(上級クラス・男性)

「今年度は巡回授業を担当し、他の高校でも日本語の授業をしているが、どうしたら巡回先の男子高校生にやる気を起こさせることができるか。」(上級クラス・女性)

今回ご紹介した研修やその他の研修などを通して、地域・現場の先生方とのさらなる連携を図り、実践を重ねつつ時には悩みや喜びをともにしながら、先生方とともによりよい日本語の授業、研修を目指していきたいと思います。

※1 嶺南地域:慶尚北道、慶尚南道、釜山広域市、大邱広域市、蔚山広域市の地域。
※2 韓国の高校では第二外国語として、日本語、中国語、フランス語、ドイツ語などがあるが、ドイツ語・フランス語の学習者数の減少により、2001年・2002年にドイツ語・フランス語の一部の教師を対象に、日本語の複数専攻教師とするための「高等学校日本語教師特別養成課程」が実施された。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Seoul
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
1988年以来、在釜山日本国総領事館に日本語専門家が派遣され、嶺南地域の日本語教育を支援してきたが、2005年8月より、派遣先はソウル日本文化センター、勤務地は釜山という派遣形態となった。日本語専門家の担当業務は、当地域の中学・高等学校などの韓国人日本語教師を対象とした総領事館内の教室で行われる中等日本語教師職務研修クラス、夏冬2回の中等日本語教育集中研修、嶺南地域教育庁及び各中等日本語教師会への出講等である。
所在地 Vertigo Bldg. 2&3F, Changcheon-dong 18-29(Yonseiro 10-1), Seodaemun-gu, Seoul 03779, Korea
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名(嶺南地域担当)
国際交流基金からの派遣開始年 2005年

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