世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 教師研修の向こうに

国際交流基金ソウル日本文化センター(嶺南地域担当)
小川靖子

当地での日本語教育支援としての主な業務は、釜山総領事館内の教室で行われる中等日本語教師職務研修、夏冬2回の中等日本語教育集中研修、嶺南地域(※1)の各教師会への出講などです。今回は夏冬2回実施している「中等日本語教育集中研修」についてお伝えします。

30時間の長丁場

新しい講義室で ― 昨年末に会場が移転して初めての集中研修。研修参加者による模擬授業の写真
新しい講義室で ― 昨年末に会場が移転して初めての
集中研修。研修参加者による模擬授業の様子。

夏冬2回の中等日本語教育集中研修(以下、集中研修)は、夏休みと冬休みの期間にそれぞれ1週間-月曜から金曜までの5日間、ソウルとプサン2つの会場で行われます。韓国の初等・中等・高等教育では、一般的に2学期制を採っており、新年度は3月に始まり、7~8月が夏休み、1~2月が冬休みになります。ここプサンでは例年7月に夏季集中研修、1月に冬季集中研修を行っています。

釜山総領事館内で行われている中等日本語教師職務研修(※2)は学期中の開催ということもあり、主に釜山市内の中等教育の先生方が受講しますが、釜山韓日文化交流協会で開催されるこの集中研修には、嶺南地域全域(あるいは全国)からの中等日本語教師が参加します。また、最近では今後日本語を教える予定のある小学校や他教科の先生が参加することもあります。

具体的な研修内容・プログラムですが、3回の集中研修を1タームとし、1ターム毎にテーマを設定し、そのテーマのもとにワークショップや日本文化体験、模擬授業、情報交換、ゲーム・タスク活動体験などを行っています。ちなみに現タームのテーマは『文化の教え方について考える』です。

集中研修での日本文化体験。日本からお招きした「かるたクィーン」と一緒に日本のかるたを体験している写真
集中研修での日本文化体験。
日本からお招きした「かるたクィーン」と一緒に
日本のかるたを体験しました

研修は全て日本語で行われ、毎日6時間・計30時間の研修は、その名の通り凝縮した“集中”研修と言えます。学期休みとは言え、校務もある中で参加する先生方にとっては少々ハードな毎日ですが、地域や年齢、日本語教授歴や勤務校など様々な背景を持った先生方が一緒になっての5日間-30時間は、互いにとてもよい刺激になっているようです。

また、研修では、国際交流基金の専門家だけでなく、地域(主に釜山市内)の日本語ネイティブ教師の協力を得て、ネイティブ教師がワークショップを担当したり、日本文化体験に参加しています。研修に参加する中等教育の韓国人日本語教師間、さらにはさまざまな立場の教師間の情報の共有・交流を図れればと思っています。

教室、教師、そして学習者

高校訪問での1コマ。七夕の短冊や飾りを作った写真
高校訪問での1コマ。七夕の短冊や飾りをつくりました

着任から3年、これまでに夏・冬あわせて5回の集中研修を経験してきましたが、この5日間の研修は、始まるまで、そして始まってからも緊張の連続です。でも、最終日に、参加した先生方が「ありがとう」「おつかれさま」と握手を交わし、充実した表情で各々の地域、学校に戻っていく姿を見ると、緊張感も心地よく、先生方、研修スタッフとともに5日間を過ごすことができて本当に良かったと感じます。そして、各先生方の地域や教室、さらには日本語の授業を受ける中学生や高校生と少しだけつながることができたように思います。

 また、こうした研修や出講などで、現場の先生方と会うだけでなく、できるだけ地域の中学校や高校にも足を運ぶようにしています。実際に中学校や高校に行き、日本語を学ぶ韓国の中学生・高校生に接することで、現場に即した、より充実した研修や出講を設計できると考えるからです。中学・高校の先生方、そしてその向こうにある教室や学生・生徒の姿をより強く思い浮かべながら、残り少ない任期を送って行きたいと思います。

※1 嶺南地域:慶尚北道、慶尚南道、釜山広域市、大邱広域市、蔚山広域市の地域。
※2 中等日本語教師職務研修:釜山教育庁認定の職務研修。前期・後期の年2回(各15週・計30時間)、現職の中学・高校の日本語教師を対象とした研修。現在は3クラスあり、各クラス週1回、平日午後6時から2時間の授業を実施。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Seoul
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
1988年以来、在釜山日本国総領事館に日本語専門家が派遣され、嶺南地域の日本語教育を支援してきたが、2005年8月より、派遣先はソウル日本文化センター、勤務地は釜山(釜山韓日文化交流協会内)という派遣形態となった。日本語専門家の担当業務は、当地域の中学・高等学校などの韓国人日本語教師を対象とした総領事館内の教室で行われる中等日本語教師職務研修クラス、釜山韓日文化交流協会内で行われる夏冬2回の中等日本語教育集中研修、嶺南地域教育庁及び各中等日本語教師会への出講等である。
所在地 YMCA Bldg.15F 1143-13 Choryang-3dong,Dong-gu,Busan 601-836,Korea
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名(嶺南地域担当)
国際交流基金からの派遣開始年 2005年

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