世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) モンゴル日本センターより(2002)

モンゴル日本人材開発センター
村上吉文

本日は2002年6月3日。モンゴルに遅い春が訪れ、木々もようやく芽吹いたかと思えば、もう空には入道雲がそびえ、町を一歩出れば緑の大草原がどこまでも広がっています。

さて、私の勤務するモンゴル日本センターは、実はまだ稼働していません。後二十日ほどで開所式を迎え、その後は賑やかなセンターになるのでしょうが、今はまだ数人のスタッフたちの気配があるだけです。私はと言えば、夏期講習などの準備と、日本語教育の実情を調査した現場訪問やアンケートの集計に追われています。

モンゴルの日本語事情

モンゲニ複合学校で日本語を学ぶ一年生たちの写真
モンゲニ複合学校で日本語を学ぶ一年生たち

モンゴルでは、日本語とモンゴル語の構造が似ていることや、戦火は交えたものの日本に占領されたような歴史などがないため、日本語の人気は非常に高いです。国際交流基金の調査(98年)を元に日本語学習者数の対人口比を比較してみると、さすがに日本の隣国の韓国や、英語を外国語として学ばなくてもいい豪州には及ばないものの、モンゴルでは人口比で中国の六倍以上もの人が日本語を勉強していることになっています。しかも、今回の調査(モンゴル日本センター)では把握できている数だけでも、機関数、教師数、学習者数のすべてで、98年の調査の倍以上になっています。

実際、私も[現場訪問]として、小さな日本語学校などを頻繁に訪れていますが、先生方や学習者のみなさんの熱意には、本当に頭の下がる思いです。

しかし、残念ながら、日本語教育の環境は恵まれているとは言えません。ソビエト連邦崩壊直後の危機に比べればかなり改善されてはいますが、まだまだ、教師も教材も足りません(なお、教材というのは外国人用の日本語教材のことで、古い絵本などは篤志家のみなさんのおかげで充分に届いています)。今回のアンケートでも、教室数、机、チョークなどのインフラはだいぶ整ってきているようですが、日本語教育機関の8割近くが、教科書が足りないと答えています。

モンゴル日本センターで行われた日本留学フェアの写真
モンゴル日本センターで行われた日本留学フェア

教員に関しては、待遇がなかなか向上せず、46%の教員が何らかのアルバイトを必要としています。このような状況ですから、特に日本人教員の不足が深刻で、現地に住んでいる日本人で日本語教育に興味のある人なら、特に養成講座などに通ったことがなくても、誰でも日本語教師になれるほどです。日本にいる人でも、多くの場合往復航空賃などは自己負担になってしまいますが、養成講座などを出られた方は問題なくビザが出ますので、すぐに日本語教師の口が見つかります。養成講座は出てみたものの経験がなくて困っている人など、どんどんモンゴルの学校で経験を積んでみてください。

日本からの派遣では国際交流基金(日本語教育専門家・青年日本語教師)や国際協力事業団(青年海外協力隊)、日本シルバーボランティアズなどが公的機関としてモンゴルへ日本語教師を派遣していますが、その他に民間からの教師派遣もあります。が、インターンシップなど、教師側がお金を払うタイプの派遣プログラムを受け入れている学校はないようです。

モンゴル日本センターは6月21日に日本より秋篠宮殿下をお迎えして、開所式を行う予定です。開所後は、モンゴル人であれ日本人であれ、日本語教育に関わっていかれるみなさんを支援していく所存ですので、有効にご利用いただけることを祈っております。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 国際協力事業団がモンゴルの市場経済化支援のために設立した「日本人材開発センター」(通称「日本センター」)における日本語教育分野の協力を基金が行うため、専門家1名を派遣している。開所式が2002年6月に行われ、当該専門家は現在、ニーズ調査を実施し、活動計画を策定中であるが、民間学校では実施していない上級日本語講座や教師養成講座、教師研修等を実施する予定である。基金はモンゴルのほか、ベトナム(ハノイ、ホーチミン)、ウズベキスタン、カザフスタンの各日本センターに日本語教育専門家を派遣している。
ロ.派遣先機関名称 モンゴル日本人材開発センター
Mongolia-Japan Center for Human Resources Development Cooperation
ハ.所在地 P. O. Box 46A-190, Ulaanbaatar, Mongolia (www.mongolia-japan-center.mn)
ニ. 国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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