世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語で発信できる人材に育つように

モンゴル国立大学
伊古田絵里

試験前の一年生との写真
試験前の一年生と

昨年4月8日にここウランバートルに到着し、気がつけばもう1年が過ぎました。日本では今、モンゴルは朝青龍などの力士の活躍や、どこまでも続く大草原のイメージなどでちょっとした注目を受けているようですが、モンゴルにおいて日本はとても近しい国です。モンゴルにとって日本はある意味、憧れの国。民主化の混乱期の援助への感謝もさることながら、車や電気製品を始めとする質の高い日本製品やドラマなどから伝わる現代のサブカルチャーなどにも熱い視線が向けられています。日本語教育に対しても積極的です。高等教育も初・中等教育でも民間機関でも日本語コースを設置する学校も日本語学習者も増加傾向です。

配属先モンゴル国立大学は日本の東大に当たる最高学府であり、モンゴルにおける日本語教育の歴史の誕生の場でもあります。日本学科の現地スタッフは皆、当大学の卒業生で、日本語力も教育に対する熱意も高く、素晴らしい先生方に恵まれて、学生たちは本当に幸せだと思います。現地の先生方は、学生たちにとって教師であると同時に、良き目標であり、日本語学習の先輩です。そんな方々の中で私はたった一人のネイティブ教師として、音声学や会話や作文、教授法の授業を担当しています。特に会話・聴解は全学年担当しています。

会話が上手になるためにはどうしたらよいのでしょうか。話す機会をたくさん設けることも必要ですが、話したいと思う何かを持つことが必要だと思われます。そこで、授業ではなるべく、何か問題意識をもてるような素材を使うようにしています。また、日本についての知識を増やすだけではなく意見をもてるように、外国人に対してモンゴルを正しく紹介できるように育ってほしいと思っています。聴解では、日本で話題になっている拉致問題やノーベル賞の受賞、またモンゴルにちなんだニュースや、視聴後に考えるような宿題を出すドラマなどを使いました。作文では、モンゴルの伝統や生活習慣に関わるようなものを扱いました。会話では、特に自分の意見を言ったり、人と話すことを念頭に入れました。教授法の授業でも、クラスメートの行った模擬授業に対して、本人のみではなく、必ず見学者全員が意見を言うようにしました。外国語学習とは異文化を受け入れる素地を作ることだと思いますが、受け入れるだけではなく、発信していくことも大切です。広い世界へ扉が開かれ、外へ外へと目が向けられている今日のモンゴルで、必要なものを見極め、享受し、同時に内発的に何かを発信していけるような人材の逅ャは大切な課題です。

折り返し地点に立ち、今後は日々の授業に創意工夫するのみならず、自分の仕事をどのような形にして残していくか、また新学期から入る新しい同僚にどのようにアドバイスしていくかが最大の課題です。ネイティブ教師がいなくなった後で、それを補っていけるような学科の在り方を模索していこうと思っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
 当大学はモンゴル随一の最高学府であり、優秀な人材を多数輩出している。モンゴルで初めて日本語教育が行われた機関でもあることから、この分野においても中心的役割を担っている。モンゴル日本語教師会の会長は当学科の学科長であり、当学科内に教師会事務局が設置されるなど、モンゴルの日本語教育全体に対して大きな影響力と指導力を持っている。青年教師は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成への協力・助言等を行う。
ロ.派遣先機関名称 モンゴル国立大学
National University of Mongoia
ハ.所在地 P. O. Box 857, Ulaanbaatar 46, Mongolia
ニ.国際交流基金派遣者数 青年:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
国際言語文化学部日本研究室
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1975年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 専1975
青2002
(ロ)コース種別
専攻、公開講座(夜間コース)、第二外国語
(ハ)現地教授スタッフ
常勤5名(うち邦人0名) 非常勤2名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生33名、2年生19名、3年生20名、4年生29名
(2) 学習の主な動機 留学、就職、日本への興味
(3) 卒業後の主な進路 大学院進学、一般企業就職など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級から1級
(5) 日本への留学人数 6名(今年度)

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