世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 開所二周年記念のモンゴル日本センター

モンゴル日本人材開発センター
村上吉文

モンゴル日本センターは、以下のような業務を行っています。

1】人材開発を主眼にしたコース

パワーポイントとプロジェクターを使って授業をするゾルザヤー先生の写真
パワーポイントとプロジェクターを使って授業をするゾルザヤー先生。センターではごく日常的な風景です。

(1)ビジネス日本語コース

このコースには、「中級会話編」「上級会話編」「上級文書編」という3つの授業があり、中級レベルの学習者が一年間かけて全部の授業に出れば、日本の企業や団体で仕事が遂行できるようになることを目指しています。

(2)IT日本語

モンゴル日本センターでは、モンゴルのITエンジニアが日本で仕事ができるようになるための「シニアITエンジニア育成コース」も開いています。コース全体では、日本のIT事情や、日本独自のシステム開発手法なども扱っていて、日本語はその一部となっています。対象者はモンゴルのIT技術者ですが、ほぼ全員が日本語学習の経験がありません。しかし、一流の技術者だけあって非常に知的レベルの高い参加者に恵まれ、昨年度は一年足らずのうちに日本語能力試験2級相当の試験に合格者を出すという好結果が得られました。 モンゴル日本センターはこういった技術者を育成するだけですが、現地のNGOを通して、このコースの修了生たちは日本のIT業界へと羽ばたいていっています。

(3)日本語で学ぶパソコン

こちらは、上記のような専門的IT能力ではなく、一般の職場で普通にパソコンが使えるようになるためのコースです。モンゴルでもIT化の波はすさまじく、最近は単に日本語を大学で専攻したというだけでは日本の企業に雇ってもらうことは難しくなっていますが、その一方で、日本語専攻の学生にとってはパソコンの使い方を修得する機会はなかなかありません。このコースはこういったニーズと需要の格差を埋めるためのものです。

2】相互理解を主眼にしたコース

(1)映画で学ぶ日本語

モンゴル日本センターは、今年成立した「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」第十九条(海外における事業展開の促進)の精神を尊重し、日本語学習にも日本の魅力的なコンテンツを取り入れています。 現在は中級コースと上級コースで合わせて三本の映画を使っていますが、中級、上級とも、春期、夏期、秋期の三回にわたって違う映画で勉強できるように、計6本の映画を元に教材を作成中です。

(2)日本語一日体験授業

モンゴルではすでに初級を教える学校が数多く存在するために、センターでは初級の授業は行っておりません。しかし、日本語をまったく知らない人にとって日本語の学びやすさを知ってもらうために、一日だけの体験授業は繰り返し行っています。一日だけですから、挨拶と自己紹介ぐらいしか勉強できませんが、授業の最後にウランバートルの日本語教育機関のリストを配付し、もっと勉強したい人は各自で学校に連絡を取ってもらうという形になっています。

(3)月例日本語力テスト

このテストでは、日本語能力試験と同レベルの試験を作成し、毎月一度ずつ、学習者が自分の実力を測定できるようになっています。測定結果は「一級への道」というファイルに入れて各自が保存できるようにしてあり、また、900時間といわれている一級取得までの学習時間のどこに今自分が位置しているのかも分かるようになっています。

【3】人材開発と相互理解の双方を視野に入れた業務

地方出張からの帰り道で休憩中のスタッフの写真
地方出張からの帰り道で休憩中のスタッフ。これもまた、センターの業務としては日常的な風景です。

(1)日本語教育実習コース

このコースでは現職の日本語教師や、日本語教師を目指す学生を対象に、実践的な能力を育成しています。「実習」と名前が付いてはいますが、基礎的な理論は座学で身につけ、さらにエクセルでの成績管理やパワーポイントでの導入や練習方法など、ITの恩恵が利用できる近代的な教師を育成するための総合的なコースです。

(2)公開セミナー

上記コースは、座学の部分は特に人数制限を設ける必要がないため、集中公開講座「日本語教授法」として公開しています。これとは別に、単発の日本語教授法セミナーを地方でも展開し、現在、ウランバートルの他に、ダルハン、エルデネットなどでも開催しています。公開セミナーとしては、教授法以外に、日本の大学院への留学を実現したい人のための「研究計画書の書き方セミナー」なども随時開催しています。

【今後】はじまったばかりの地方展開

センターが開所して以来、センター内の日本語コースは専門家がいなくてもほぼ現地スタッフだけで何とか回せるようになってきました。したがって、今後は、地方展開が主要な業務になってくると思われます。【2】で紹介した「一日体験授業」や【3】で紹介した公開セミナーなどはすでに地方でも実施されていますし、今後はアメリカの NGO がモンゴルの12県に導入した遠隔教育システムを使った日本語教育や、ラジオでの日本語教育番組の放送などを計画しています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
専門家はセンターのコース運営の他、任国全体の日本語教育の振興と現場のサポートを行う。
当センターの目的は、モンゴルの市場経済化のための人材開発を行うこと、日本に興味のある人に、日本語・日本文化など日本についての情報を提供することなどを通して、両国の友好関係をますます発展させ、両国民の相互理解を深めることである。日本語の話者や教員を養成する日本語コース、モンゴルの経営者を育成、支援するビジネスコースなどがある。
ロ.派遣先機関名称
The MONGOLIA-JAPAN CENTER
ハ.所在地 P.O.B.26a/190, Ulaanbaatar, MONGOLIA
ニ.国際交流基金派遣者数 1
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
日本語コース
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2004年7月
(2)専門家・青年教師派遣開始年 2002年
(ロ)コース種別
選択(ノンフォーマル教育)
教師研修
(ハ)現地教授スタッフ
常勤2名(邦人) 非常勤4名(うち邦人0)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   各コース定員32名以下
(2) 学習の主な動機 日本への憧れ
仕事上必要
日系企業への就職希望
日本語教師希望
趣味
(3) 卒業後の主な進路 日系企業就職
日本語教育機関に就職
母校に就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
コースによるが敢えて平均を取れば三級以上二級以下程度。
(5) 日本への留学人数 留学経験者は数十名。

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