世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 成果は何十年後かに

モンゴル国立大学
伊古田絵里

遊びにきた2年生の写真
遊びにきた2年生

2002年の4月8日にウランバートルに着任し、モンゴル国立大学日本学科でに配属、2004年5月20日に帰国いたしました。飛行場に着いた時を昨日のことのように思い出します。

モンゴルにおける日本語教育発生の場は、最高学府に当たる配属先モンゴル国立大学です。1975年、文学部の第二外国語コースとして生まれました。日本語コース開講、そして国際交流基金の教師派遣の歴史が始まり、合計25名の日本語教師が派遣されました。私の帰国をもって、国際交流基金のモンゴル国立大学への日本語教師派遣の歴史は幕を閉じました。

モンゴルにとって、日本という国は、最も近い憧れの国であり、民主化の移行期を支えてくれた恩人として、人々にとって思い入れの深い国です。ですから、モンゴルは大の親日国なのです。ウランバートルの町のそこここで日本語を耳にします。

なぜ、これほどまでに親日なのでしょうか。もちろん、日本からの莫大な援助や力士たちの活躍による効果は言うまでもありません。しかし、やはりそれだけではないと思います。信頼関係は一朝一夕に築けるものではありません。情報が決して豊かではなかった民主化以前、そして経済的に困難であった民主化移行期にも、日本とモンゴルの架け橋として尽力された方々の存在があってこそでしょう。日本語教育もまさにそのように決して華やかでないながら、人材育成に大切な役割を担ってきたのではないでしょうか。20年以上にわたり、日本語教育に尽力していらした配属先の学科長をはじめ、モンゴルの日本語教育を支えた多くの方々の努力の積み重ねがあってこそ今のモンゴルがあるのだろうと思います。

スピーチコンテストの写真
スピーチコンテスト

モンゴル国立大学での2年間、私が携わってきたことは、ネイティブ教師として、音声学や会話や作文、教授法などの授業を担当すること、同僚の先生方の相談に乗ること、モンゴルで行われる日本語関係のイベントのお手伝い、教材の作成などでした。それを通じて気付いたことは、当たり前のことですが、世界には色々な形の日本語教育があるということです。それは、その国、その機関、そこで学ぶ学習者のニーズに沿った形で発展していきます。派遣される教師は、その発展にお手伝いをすると同時に、そこから大切な何かを学んで帰国し、また異なる場所で日本語教育に励みます。そのような触れ合いや出会いやそれぞれの尽力や模索により、世界の日本語教育は螺旋階段を上るように、より良いものを目指して発展していくのでしょう。

教育の成果は何十年もたってみないとわからないものです。私は最後の派遣教師として、代々の先生方の尽力の跡を見る思いでした。しかし、だからといって、配属先が日本語教育機関としてこれ以上向上する余地がないとは言えません。今後の学科を左右していくのは、同僚の若い先生方、また未来の教師たちです。配属先での2年間、常に意識していたことは、外国語学習を通じて異文化を受け入れる素地を作ること、そして受け入れるだけではなく内発的に何かを発信していけるような自分の意見をもつ人材を育てたいということでした。その成果が熟していくのを楽しみに待っています。素晴らしい2年間をありがとうございました。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
当大学はモンゴル随一の最高学府であり、優秀な人材を多数輩出している。モンゴルで初めて日本語教育が行われた機関でもあることから、この分野においても中心的役割を担っている。モンゴル日本語教師会の会長は当学科の学科長であり、当学科内に教師会事務局が設置されるなど、モンゴルの日本語教育全体に対して大きな影響力と指導力を持っている。青年教師は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成への協力・助言等を行う。
ロ.派遣先機関名称 モンゴル国立大学
National University of Mongoia
ハ.所在地 UlaanbaatarSukhbaatar区,IkhSurguuligin 通り
ニ.国際交流基金派遣者数 青年:1名 (2004年5月まで)
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
国際言語文化学部日本研究室
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1975年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 専1975
青2002
(ロ)コース種別
専攻、公開講座(夜間コース)、第二外国語
(ハ)現地教授スタッフ
常勤5名(うち邦人0名) 非常勤2名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生29名、2年生28名、3年生16名、4年生18名
(2) 学習の主な動機 留学、就職、日本への興味
(3) 卒業後の主な進路 大学院進学、一般企業就職など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級から1級
(5) 日本への留学人数 8名(今年度)

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