世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)モンゴル日本人材開発センター モンゴルと日本の相互文化交流を目指して

モンゴル日本人材開発センター
齊藤智子

第10回日本語教育シンポジウム開かれる

モンゴルでは日本語学習者の読解力が他の能力よりも劣るのではないか?というのがモンゴル日本語教師会(以下教師会)を初めとした日本語教育者の中での共通の課題であった。実際、JLPTにおいて読解が他の分野よりも低いという調査結果もあり、2016年度最初の教師会において、『読解能力の向上』をテーマに1年間読解力の向上に関して取り組むこととなった。

具体的には、モンゴルの母語教育においての読解教育と日本の国語教育においての読解教育の比較のため、教科書の読解指示文の比較、読解教材の種類の比較など様々な観点から調査が行われた。

そして、1年の研究の発表の場として、2017年3月17, 18日の二日間、「読解とは何か―読む力を育てるために―」というテーマで国際交流基金(以下基金)が主催者となり日本語教育シンポジウムを開催した。2017年はモンゴル日本人材開発センター(以下日本センター)創立15周年及び、日本・モンゴル外交関係樹立45周年の記念すべき年でもあり、それぞれ15周年、45周年の記念行事としてもこのシンポジウムは認定された。

日本から基調講演者を2名招き、また、モンゴル教育省からも基調講演者を招きモンゴルの教育についての講演をしていただいた。その後、教師会のメンバーが一年間かけて研究・調査した成果を9つの分科会で発表し、招聘講師から有益なアドバイスをいただいた。この会には、日本語教師を中心として、首都ウランバートルのみならず、数百キロ離れた地方にある学校の日本語教師らも含め、延べ約200名の参加があり盛会となった。

今回のシンポジウムの成果は、『読解能力の向上』に対する取り組みに関しての道筋が見えてきたという事の他に、自ら課題を意識し、研究・調査していくことが楽しく、有益だという事を招聘講師から学んだ事である。

 

モンゴル日本語教師会の今年度の統括と専門家が考える今後の課題

2017年5月13日に教師会会長バトジャルガル先生による教師会の2016年度(2016/9~2017/6)の総括が行われた。

第75回研究会今年度の統括 教師会のメンバーの画像
第75回研究会今年度の統括 教師会のメンバー

その中でバトジャルガル先生は、「『学校対抗スピーチコンテスト』(在モンゴル大使館、日本センター、基金共催)の来場者が2015年度170名から2016年度240名、JLPTの受験者数が2015年度1285名、2016年度1667名、日本留学試験の応募者は2015年度158名から350名と2倍以上になった。この事から、モンゴルでは日本語教育に興味関心があり、日本語学習のニーズは増えている事がわかる」と述べた。

また、「漢字ナーダム」(ナーダムはモンゴル語で祭典の意)というゲーム感覚で漢字に親しんでもらおうという催しが2回行われた事、さくらネットワーク訪日教育旅行の実施についての報告を行った。

その他、今年度は『できるモン』1~ 3下の学習者用が完成した。下巻はJFの助成を受けた「モンゴル初中等日本語教育スタンダード教科書作成・印刷プロジェクト」により出版された事もこの研究会例会の大きな成果だとする統括をした。

日本語専門家(以下専門家)としての今後の教師会に関する課題としては、この研究会例会の運営も含め、以上に挙げたような事業の運営業務の分担を見直し、教師会が主導し、センター及びセンターの日本語課スタッフ、専門家、調整員の特定の誰かに業務が偏ることの無いような対策を講じる事であろうと考える。そのためには、教師会が自立的運営をする事、また、モンゴル教育局、日本語教育の専攻を持っているモンゴル教育大学が積極的に参画する事が必須であろう。専門家、調整員は現状のように率先して事業を切り盛りする立場に立つのではなく、オブザーバーとして自立を支援したいと考えている。

「日本祭り」大盛況!!!

ブース前の人々の画像
ブース前の人々

モンゴルの長く厳しい冬が終わり、天気の変わりやすい春になった。

今年の「日本祭り」は、モンゴル日本国交樹立45周年記念行事として認定された行事で、日本センターの15周年もお祝いされた。日本センターのスタッフ総動員で様々な催し、文化体験教室が行われた。日本伝統文化は茶道、書道、風呂敷、浴衣着付け・写真撮影、日本の遊び、けん玉で、風呂敷、日本遊び以外は全てモンゴル人スタッフと、モンゴル人ボランティアが担当した。

風呂敷体験教室の画像
風呂敷体験教室

専門家は風呂敷の歴史と包み方5種類を教える教室を担当した。サブカルチャーはアニメ、マンガ、コスプレ、クイズ大会、カラオケコンテストで、アニメ・マンガは「まるごとコース」から生まれたサークルのメンバーが企画運営した。

日本センターの図書情報課と日本語課は日ごろの文化体験講座運営の経験を活かし大活躍した。当日は朝から小雨で10度以下の悪天候の中、予想に反して入場者数は1850名であった。3年前に実施した際は1500名であった事を考えると、やはり、日本の伝統文化やサブカルチャーに興味を持っている人が増えているようである。

今後も日本・モンゴルの相互文化理解を促進していきたい。

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